「船頭多くして船山に登る」の意味とは?語源や類語も(例文つき)

「船頭多くして船山に登る」ということわざがあります。船頭さんが多くいると船が山に登る?と不思議な気持ちになることわざですが、日常生活ではこのような状況に陥ることが少なからず起こります。今回は「船頭多くして船山に登る」の詳しい意味や由来、例文や類語、対義語も併せてみていきましょう。

「船頭多くして船山に登る」とは?

意味は「指図する人が多く、目的とは違う方向に進んでしまう」

「船頭多くして船山に登る」の意味は、「指図する人が多くて物事がまとまらず、目的とは違う方向に進んでしまう」です。

読み方は「せんどうおおくしてふねやまにのぼる」

「船頭多くして船山に登る」又は「船頭多くして船山に上る」の読み方は、「せんどうおおくして ふね やまにのぼる」と読みます。「のぼる」の部分の「登る」又は「上る」は表記上の違いだけで、どちらを使っても差し支えのない表現となります。

「船頭多くして船山に登る」の語源

「船頭」とは、船の操縦から順路、メンテナンス等、船を安全に操縦する上での全ての責任と船を取り仕切る権限を持つ人の事を指します。言わば船が進むも沈むも船頭さん次第という訳なのですが、その船頭さんが一艘の船に一人ではなく三人居たとします。 Aという船頭さんはaの順路で進む計画を持っています。Bという船頭さんはbの順路、Cという船頭さんはcの順路で船を操縦するのですが、船は一艘しかありません。

船頭さんの仕切りは絶対です。そうなると船の漕ぎ手さん達はA・B・Cのどの船頭さんの言う通りに動けば良いのかわからなくなります。順路やスピード、漕ぎ方から使う道具まで全て意見が違う3人の船頭さんの指図に困惑して、船の進み方も右往左往。終いには船はあらぬ方向に進んでしまう有様。そしてついには本来の目的地どころか、船には有り得ない「山に登る」と言う状況になってしまうことから、このことわざが生まれました。

「船頭多くして船山に登る」の例文とシーン別使い方

「船頭多くして船山に登る」を使った例文

「船頭多くして船山に登る」を使う例として、下記の例文があります。

  • あのチームはみんな優秀だけど、「船頭多くして船山に登る」にならないと良いなあ。
  • みんなの主張が強過ぎて、全く「船頭多くして船山に登る」だよ。
  • 主治医が二人もいると「船頭多くして船山に登る」で全く治療の方針が決まらない。

「船頭多くして船山に登る」を使うシーンは何か物事を決める時

「船頭多くして船山に登る」を使うシーンといえば、何か物事を決める時に見られます。

例えば仲間内で旅行に行くとします。A君は美しい景色を観光するためにトレッキングコースを歩いて巡りたいと言います。B君は景色は良いからとにかく美味しいものが食べたいので、街場のグルメストリートを中心に巡りたいと言います。C君はせっかく行くのだからレンタカーで全部の観光スポットを巡ろうと言いいます。

自由時間は1日しかなく全員の希望を叶えるのはとても無理です。そのため三人とも自分の計画を是非実行したいと譲らず揉めてしまい、終いには「もうみんなで旅行に行くのはやめてしまおう」ということになってしまいました。それを見ていたD君は「これじゃ船頭多くして船山に登るだな。」とポツリと呟きました。

「船頭多くして船山に登る」を会社で使うシーン

会社では「船頭多くして船山に登る」を使うシーンが、頻繁に現れることがあるかもしれません。

ある重要なプロジェクトを任されたAさんとBさん。大きなプロジェクトなので二人が率いるチームとして10人が協力することになりました。二人が協力してチームを引っ張り、このプロジェクトを成功させて欲しいとの会社の意向です。ところがAさんもBさんも前々から温めてきたプロジェクトを成功させるために、すごく張り切っていてそれぞれの企画を別々で進めようとしています。協力しているメンバー達は二人の計画の進め方の違いに翻弄されてなかなか作業がはかどりません。

プレゼンの準備も全く間に合わず、なかなか進まない作業にメンバー達の不満も積もり苦情が出る始末。終いにはボスから「A、B。お前達、これでは船頭多くして船山に登るだ。今日からこのプロジェクトのリーダーはCだ。」とリーダーから外されてしまいました。

「船頭多くして船山に登る」の類語

「船頭多くして船山に登る」の類語は「役人多くして事絶えず」

「船頭多くして船山に登る」の類語として、下記のことわざがあります。

  • 「船頭多くして船動かず」=船頭が多いと進む方向が決まらず、船が動かない。
  • 「役人多くして事絶えず」=役人が多過ぎると、仕事が複雑になってかえって仕事が捗らない事。
  • 「家を道端に作れば三年成らず」=家を人目に付く道端に建てると、色々な人が口出しをしてきて色々な意見に左右されるので三年経っても家が建たない。

「船頭多くして船山に登る」の対義語

対義語は「三人にして迷うことなし」

「船頭多くして船山に登る」と反対の意味として、次のようなことわざがあります。

  • 「三人寄れば文殊の知恵」=凡人も三人集まれば、文殊(菩薩)にも劣らない知恵を出すことができる。
  • 「三人にして迷うことなし」=一人で進むよりも三人いれば知恵を出し合い、よりスムーズに進むことができる。
  • 「桶は桶屋」=桶の事に素人が口出しするよりも、桶は桶の専門家に任せると良い。

「船頭多くして船山に登る」の英語表現

英語表現は「Too many cooks spoil the broth.」

「船頭多くして船山に登る」と同じ意味の英語のことわざ、言い回しを見て見ましょう。

  • Too many cooks spoil the broth.=コックが多すぎるとスープがうまくできない。
  • Many dressers put the bride’s dress out of order.=着付けの担当者が多いと、花嫁の服装が乱れる。

まとめ

「船頭多くして船山に登る」の意味や例文、類語や対義語をみてきました。普段の日常生活や人との付き合い、社会人としての業務上で、たまに目にしたり、経験する事のある状況ではないでしょうか。

「船頭多くして船山に登る」の意味を考えた時、みんなで何かを成し遂げようとするなら一体何が必要なのでしょうか。優秀な人材をたくさん集めても、「船頭多くして船山に登る」になってしまってはうまくいくものもうまくいきません。優秀な人材を多く集めて「船頭多くして船山に登る」な状態になるくらいなら、みんなで少しずつの知識を出し合い協力しあったほうが、大きな事を成し遂げる力を生み出す事もあります。

社会人として、もし自分がライバル達と一緒に舵を取る側に立った時、「船頭多くして船山に登る」ような状況にならないように、自分自身や物事を客観的に見る目を養っておくことも重要な事かもしれません。