「あばたもえくぼ」の心理学的な意味とは?使い方や類語と対義語も

「あばたもえくぼ(痘痕も靨)」は、好きな相手であれば欠点も長所に見える、という意味合いのことわざです。ラブソングの歌詞にも使われるなど、恋をしている人の気持ちを表しています。

ここでは「あばたもえくぼ」の意味や使い方と例文について解説します。類語(類義語)や逆の意味のことわざ、英語表現についても紹介しましょう。

「あばたもえくぼ」の意味とは?

「あばたもえくぼ」の意味は「短所も長所に見えること」

「あばたもえくぼ」とは、好きになった相手のあばたがえくぼに見えてしまう、ということを表しています。転じて、好きになった相手なら短所も長所に見えるということのたとえです。

心理学的に、好きになった相手のことはひいき目にみてしまう特徴があります。傷跡もえくぼに見えるように、悪い部分もよいものに見えてしまうという、恋愛に関する心理状態を表した表現です。

「あばたもえくぼ」は漢字で「痘痕も靨」

「あばたもえくぼ」を漢字で書く場合には「痘痕も靨」と表記します。しかし、一般的には漢字を使わずひらがなで「あばたもえくぼ」と書くことが多いでしょう。

「痘痕」は「あばた」の他に「とうそう」とも読みます。

「あばたもえくぼ」の語源は「天然痘」

「あばたもえくぼ」の語源は「天然痘(てんねんとう)」にあります。「痘痕(あばた)」とは、天然痘でできた発疹の傷跡を指します。「天然痘」は世界規模で猛威を振るい、1980年に人類史上初にして唯一根絶に至った感染症です。

天然痘による発疹は肌にくぼみのような傷跡を残し、その傷跡を「あばた」と呼びます。肌がくぼんだような状態はあまりよい見た目のものではありませんが、同じようにくぼんだ状態になる「えくぼ」はかわいらしく魅力的な印象です。

傷跡である「あばた」が「えくぼ」に見えるほど、恋愛による心理状態は相手をひいき目に見るチカラがあることを表したのが「あばたもえくぼ」になります。

「あばたもえくぼ」の使い方と例文

心理学における「恋愛の心理状態」を表す

「あばたもえくぼ」は、心理学における恋愛の特徴のひとつです。人は誰しも恋をするとその相手をひいき目にみてしまい、他の人からは欠点や短所とされる部分が自分には長所に見える、ということがあります。

たとえば、周囲の人から「話下手であまり喋らない人」と思われている彼に恋している場合です。「彼の無口でクールなところがすてきなの」と言われても「あばたもえくぼだね」と周囲の人は思ってしまいます。迷惑がかからないことであれば、恋をしている人のことを微笑ましいとも思えるでしょう。

「あばたもえくぼ」で客観的なアドバイスも

「あばたもえくぼ」は、恋愛において周囲が見えなくなっている人に客観的なアドバイスをする際も使えます。

たとえば、恋をしている友人が相手のどんな言動も「良い」と受け入れてしまっている場合です。「あばたもえくぼにならないように、よく考えてみて」とは、短所を長所だと思いすぎないよう気をつけて、というニュアンスになります。

「あばたもえくぼ」を使った例文

  • みんなは彼があまり喋らなくてよくわからない人というけど、無口でクールなところが素敵なの
  • 最初は社交的なところが素敵に思えたけどただの遊び人だった。あばたもえくぼになってたわ
  • あばたもえくぼにならないように、落ち着いて考えないとひどい目にあうよ

「あばたもえくぼ」の類語・類義語は?

「あばたもえくぼ」の類語は「屋烏の愛」

「屋烏の愛(おくうのあい)」とは、人を深く愛していると、相手が住んでいる家の屋根にとまる烏(からす)まで愛おしく思えるという意味です。愛する人に関わるものは全て愛してしまうほど、深い愛情を表します。

「あばたもえくぼ」は、恋をすると相手の悪い部分もよいものに見えてしまう、という恋愛に対する心理を表した表現です。「屋烏の愛」は、相手の周囲のものすべてが愛おしいというニュアンスで、よく似た意味ではありますが「屋烏の愛」のほうがさらに深い愛を表現しています。

「恋は盲目」も「あばたもえくぼ」の類語

「恋は盲目(こいはもうもく)」とは、恋をすると当たり前の判断や冷静な判断ができなくなるということ。理性や常識を失い周囲のものが何も見えなくなってしまうほど恋に夢中であるという意味の言葉です。

「あばたもえくぼ」と意味はよく似ていますが、「恋は盲目」はより周囲の注意なども受け入れられないほど恋にのめりこんでいるようすを表現しています。

「あばたもえくぼ」の対義語とは?

「あばたもえくぼ」の対義語は「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い(ぼうずにくけりゃ けさまでにくい)」とは、相手を憎むあまりその人に関わる全てのものまで憎くなることです。「坊主」は僧侶のことで、「袈裟(けさ)」とは僧侶が身につけている衣装のことをさします。相手が着ている衣装まで憎くなるほど、強い憎しみを表したことわざです。

「あばたもえくぼ」は恋をすると相手の短所も長所に見えてしまうという意味ですが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」は憎む相手に関係するものも憎いことを表しています。まるで反対の意味と言えるでしょう。

「親が憎けりゃ子も憎い」も逆の意味があることわざ

「親が憎けりゃ子も憎い」とは、親が憎いあまりその子どもまで憎いという意味の言葉です。転じて、相手を憎むあまり関わる他の人も憎くなることを表し、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」とほぼ同じ意味となります。他にも「法師憎けりゃ袈裟まで憎し」の言い回しもあります。

どれも相手に関わる衣装や子どもまで憎くなるほど、強い憎しみを表したことわざで「あばたもえくぼ」の逆の意味の言葉です。

「あばたもえくぼ」の英語表現は?

英語訳は「Love sees no faults」など

「あばたもえくぼ」を英語で表現するには「Love sees no faults」を使うのが一般的です。「faults」は欠点や短所のことで、直訳すると「愛は欠点を見ない」となります。また「愛は盲目」というニュアンスの「Love is blind」も「あばたもえくぼ」の英語表現として使えるフレーズです。

似た意味のフレーズは他にもいくつかあります。恋をすると悪いところも良く見えるという恋愛心理は世界共通ということなのでしょう。

「あばたもえくぼ」を表す英語フレーズ

  • Love sees no faults.(愛は欠点を見ない)
  • Love is blind.(愛は盲目である)
  • Love covers many infirmities.(愛は多くの欠点をかくす)
  • One cannot love and be wise.(恋したら理性的ではいられない)

まとめ

「あばたもえくぼ(痘痕も靨)」とは、好きになった相手のことは短所も長所に見えてしまうという、恋愛に関する心理状態を表した表現です。「屋烏の愛」「恋は盲目」など、似たような意味合いのことわざは多くあります。同じような意味合いの英語フレーズがあるため、恋愛心理は世界共通と言えそうです。