「阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)」は、互いの息がピッタリ合った時に使われることわざです。普段は無意識のうちに使っていますが、「阿吽」とはどのような意味があるのでしょうか?
ここでは「阿吽の呼吸」の意味と由来、使い方の例文のほか言い換えの類語や英語フレーズについて紹介します。
「阿吽の呼吸」の意味と由来とは?
「阿吽の呼吸」の意味は「2人が互いの気持ちを読み取る」
「阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)」とは、「2人、またはそれ以上の人物が互いの気持ちや感情を読み取る」ことを意味します。2人以上が物事を一緒に進める際、互いの微妙な間合いや調子などを上手につかむことを表します。
「阿吽の呼吸」は互いのデリケートな感覚を巧に読み取り、自然に呼吸をするように行動することを指します。
「阿吽の呼吸」の由来は梵語「始まりと終わり」
「阿吽の呼吸」は梵語(ぼんご)またはサンスクリット語で「物事の始まりと終わり」を表す「a-hum=阿吽」が由来だと言われています。
「阿吽」の「阿」とは、口を開けて最初に発する音「阿」、そして「吽」は口を閉じる時に最後に放つ音であることから「始まりと終わり」を意味するようになりました。
「阿吽」の対を意味する「金剛力士像」「狛犬」
「阿吽の呼吸」の「阿吽」には「対」「相対」などの意味もあります。たとえば、寺院の守護神である「金剛力士像」には口を開けた「阿形象」と口を閉めた「吽形象」があります。この2つの象は対象的で、口を開けた方は怒りをあらわにし、口を閉じた方は怒りを内に秘めています。
また、魔除けとして屋根に設置されるシーサー、神社の入口に置かれる狛犬も同様で、異なる表情のものを「対」として配置しています。つまり、これらの像は「阿吽」を表していることになります。
「阿吽の呼吸」の使い方と例文
「阿吽の呼吸」は微妙な感情を読み取り合う
「阿吽の呼吸」ということわざは、「微妙な感情や調子を読み取っている状況」で使われます。つまり、言葉を交わさなくても相手の気持ちや感情を巧みにつかみ、相手が求める行動を実行できるのが「阿吽の呼吸」です。
「阿吽の呼吸」を使う時は、基本的に言葉や会話における密なコミュニケーションは存在しません。むしろ、すでにその域は超えていると言えます。「阿吽の呼吸」は、まるで呼吸をするように、相手のペースに合わせて振る舞うことができる、そのような状況を表す時に使いましょう。
「阿吽の呼吸」は夫婦やビジネスの関係にも使う
「阿吽の呼吸」とは、夫婦や恋人同士またスポーツにおけるペアだけではなく、会社や組織での「上司と部下」に対して使うこともできます。
部下にとって、上司との人間関係は良好に保ちたいものです。逆を言えば、上司と息が合わず対立ばかりしていると、仕事も思うように上手くいかないでしょう。そのため「上司とは阿吽の呼吸だね」と言われたら、それは仕事も順調であるという「最大の誉め言葉」でもあるわけです。
「阿吽の呼吸」を使った例文
- 結婚20年目を迎える両親は、すでに阿吽の呼吸で生活をしているようだ
- テニスのダブルスでは、阿吽の呼吸が勝敗を左右することがある
- 職場での人間関係を保ためにも、上司とは阿吽の呼吸で仕事をしていきたいと思う
「阿吽の呼吸」の類語とは?
「以心伝心」は「言葉を介さず相手に内容を伝える」
「以心伝心(いしんでんしん)」とは、言葉や行動を介さず相手に自分の意志を伝達することという意味です。互いの心と心だけで思いや考えなどが通じ合い、分かり合えることを「以心伝心」と言います。
「以心伝心」は、もともと禅宗の語の一つです。文字や言葉で示すことができない仏法の極意を、師匠から弟子へと伝授することを意味していた、と言われています。
「つうかあ/ツーカー」とは「互いが通じ合うこと」
「つうかあ」や「ツーカー」とは「2人以上の人物が互いに通じ合うこと」を意味します。相手の言おうとしていること、相手が考えていることがちょっとした仕草や言葉尻などでわかることを表しています。
たとえば「つうかあの仲」とは、少し何かを口走っただけで、相手が言わんとしている内容が理解できることを意味します。また「つうかあ」は口語表現として好まれ、「息がぴったり」「相性抜群」といったニュアンスで使われます。
「シンクロ/シンクロナイズ」とは「同一化すること」
「シンクロ」「シンクロナイズ」とは英語の「synchronize」を語源とするカタカナ語で「同一化すること」を意味します。つまり、相手と同じ行動をしたり、同じ考えを持つことなどを表す言葉です。
水泳のシンクロナイズドスイミングは、2人がペアとなって息の合うパフォーマンスを見せるのが特徴で、同様または対比する動きをするスポーツです。
「阿吽の呼吸」の英語表現とは?
「阿吽の呼吸」の英語1「get along very well」
「阿吽の呼吸」を表す英語に「get along very well」があります。英語圏でも一般的によく使われるフレーズで、「互いに仲が良い」「ウマが合う」という意味で使われます。
「get along」は、どちらかというと「性格的に合う」「互いの性分が良い」といったニュアンスで使われることが多いです。加えて強調の「very well」を付ければ、意味的にも強まります。
「阿吽の呼吸」の英語2「good chemistry」
「阿吽の呼吸」を意味するフレーズに「good chemistry(グッド・ケミストリー)」があります。「good chemistry」は「相性が良いこと」を意味し、日本語で言うなら「お互いの雰囲気が非常にいい感じ」といったニュアンスで使われます。
「chemistry」には「化学」「化学反応」という意味がありますが、人と人との相性に対しても使われます。また、逆に相性が悪く、阿吽の呼吸とは程遠いことを「bad chemistry」といいます。
相方とは阿吽の呼吸だとよく言われる
I have been often said that me and my partner have good a chemistry each other.
「阿吽の呼吸」の英語3「compatible」
もう一つ「阿吽の呼吸」を表す単語に「compatible(コンパティブル)」があります。「compatible」は、「矛盾なしの」「両立できる」という意味がありますが、人と人との関係では「互いに共存する」という意味となります。つまり「互いに気が合う」「上手くやっていける」というニュアンスで用いられます。
卓球の試合になると、私たちは阿吽の呼吸になる。
We are so compatible when it comes to table tennis game.
まとめ
「阿吽の呼吸(あうんのこきゅう」とは「2人以上の人物が互いの気持ちを読み取り、呼吸を合わせるかの如く行動すること」を意味することわざです。「阿吽」の由来は、梵語の「あうん」が漢字の「阿吽」になったと言われています。「阿吽の呼吸」は夫婦やスポーツでのペア、職場の上司と部下など、あらゆる環境下で使われます。
彼らは阿吽の呼吸で仕事をしている。
They are getting along very well at work.