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「泣いて馬謖を斬る」のことわざの意味とは?使い方の例文も紹介

「泣いて馬謖を斬る」という言い回しを聞いたことがありますか?職場や組織、また家庭における「規則の遵守」に関することわざですが、「泣く」という言葉に込められた思いとは何なのでしょうか?

ここでは「泣いて馬謖を斬る」の由来や本当の意味を含め、使い方の例文と類語や英語フレーズを紹介します。

「泣いて馬謖を斬る」の意味とは?

意味は「規律を守るために愛する人を処分すること」

「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」とは、「規律を守るために私的な感情を捨て、大切な人や愛する人を処分する」ことを意味します。

世の中にはさまざまな「規律」が存在しますが、愛する人が規律を乱した時どうしてもかばいたくなるものです。多くは私的な感情が絡み罪や好ましくない素行を見逃したくなるでしょう。「泣いて馬謖を斬る」は、大切な人や愛弟子が規律を破った時に涙を呑んで正当に処罰を与えることを意味します。つまり、利己的な感情はご法度で規律が先に来るということわざです。

「馬謖」とは「蜀王(しょくおう)の臣・馬良(ばりょう)の弟」のこと、また「斬る」とは「処刑」を意味します。「泣く」「馬謖」「斬る」これらの言葉で構成されるのが「泣いて馬謖を斬る」です。「馬謖」については由来の項目で説明します。

「規律を尊ぶことの痛みと辛さ」を表している

「泣いて馬謖を斬る」という言葉は「規律を尊ぶことの辛さ」を表す言葉です。全体の規律を乱したことはいえ、涙をこらえて愛する人を処分する気持ちとは、計り知れないものであるに違いありません。

「泣いて馬謖を斬る」とは、大切な人が規律に背いたからと言って、何の感情もなしに処分するのではなく、「涙ながらに、心を鬼にして、仕方なく処分する」というニュアンスがあります。つまり、私情が規律を超えることなく、背に腹は変えられずといった心情で処罰することを表しています。

「泣いて馬謖を斬る」は、心と行動とが一致していないのが特徴です。「本当はしたくない、しかし規律を守るために実行する」という複雑な気持ちを表すことわざでもあるのです。

「泣いて馬謖を斬る」の由来と本当の意味とは?

「泣いて馬謖を斬る」の由来は「三国志」

「泣いて馬謖を斬る」は中国の後漢から三国時代までを描いた興亡史「三国志」が由来となっています。この中に語源となる一説「街亭の戦い」があります。

三国時代、「魏」と「蜀」は互いに譲らぬ群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)の状況にありました。しかし228年に及ぶ戦いの結果、張郃(ちょうこう)率いる魏軍が、馬謖(ばしょく)率いる蜀軍を打ち破りました。

この時、馬謖が親のように尊敬していたのが「諸葛亮(しょかつりょう)」で、「諸葛亮」が愛弟子のように大切にしていたのが「馬謖」です。しかし馬謖は事実上、頭である諸葛亮からの指示にまったく耳を傾けなかったと言います。

そして、命令に背いてい馬謖は敵軍にまんまと占領されてしまい、敗退への一途をたどってしまいます。この時、諸葛亮が馬謖を規律違反として斬罪にしたものの、大切な馬謖を思い嘆き号泣したということから「泣いて馬謖を斬る」という言葉が生まれたとされています。

「泣いて馬謖を斬る」の本当の意味

「泣いて馬謖を斬る」の解釈は三国志の「正史」と、小説化した「三国志演義(さんごくしえんぎ)」とで異なります。時代小説として編集された「三国志演義」では、諸葛亮が「人を見る目がなかった」ことを嘆き、「自分の愚かさに対して泣いた」と書かれています。この背景にあるのが、蜀の初代皇帝「劉備玄徳(りゅうびげんとく)」が「諸葛亮」に放った言葉です。

軍事的な能力が高かった「馬謖」は、自分に対して過剰な自信とおごりがありました。好き勝手をしていた若いころの馬謖を知る劉備玄徳は、日ごろから諸葛亮に「馬謖を尊ぶな」と言っていたそうです。そのような助言があったにも関わらず、群を率いらせてしまった自分を悔やみ恥じる意図で「泣いた」というのが、「三国志演義」での解釈です。

しかし、実際はどちらが本当の意味での解釈かはわかっていません。

「泣いて馬謖を斬る」の使い方と例文

職場や身内など日常的な環境でも使われる

「泣いて馬謖を斬る」は、職場環境や家族、友人関係において使われることがあります。

たとえば、仕事先でリーダーや上司という役割を担う場合、自分の部下やスタッフたちをかわいいと思うでしょう。自分が手塩にかけて育てた新人や、苦労をしてトレーニングを続けてきたスタッフなどは、家族同然の存在として映ることが多いです。

そんな大切な人たちが社会のルールや掟を守らなかった時、全体の規律を守るために涙を呑んで処罰を与える、というような状況で使うことができます。

また同様に、家族や友人、恋人などを含めた自分の大切な人に対しても同様です。「二人の間柄が近く愛情が絡むため、本心は罰を与えたくない」という状況で使うのが適切です。

「泣いて馬謖を斬る」を使った例文

  • 部下が好ましくない手口を使って大口の取引を決行した。泣いて馬謖を斬るではないが、規律を乱したことには違いないため、彼は解雇通告となった。
  • ラグビーの試合で選手が対戦相手を殴ってしまった。監督としてチーム全体の規律を守るために、選手に半年の出場停止を命じた。まさに泣いて馬謖を斬るとはこのことである。

「泣いて馬謖を斬る」の英語訳とは?

英語1「make a huge sacrifice in course of justice」 

英語圏では「泣いて馬謖を斬る」の意味を表す言い回しがないため、簡単な英語で訳す必要があります。

「泣いて馬謖を斬る」とは、全体の規律を守るために、犠牲を払ってでも自身の正当性を証明することでもあります。そいういったニュアンスを伝えるなら「make a huge sacrifice in course of justice」という文章が良いでしょう。

「huge sacrifice」は「多大な犠牲」、「course of justice」は「正当性の観点」となります。

英語2「at the cost of sacrifice to go by rules」

その他、「泣いて馬謖を斬る」は「at the cost of sacrifice to go by rule」という言い回しを使うこともできます。こちらも「規律や規則に従うために犠牲を払う」という意味となります。

また、文章の前後に「たとえ愛する人でも」「大切な人であっても」、また「涙をこらえて」「涙を流して」などのフレーズを丁寧に補えば、より原語に近い意味になります。

「泣いて馬謖を斬る」で使えるその他の英語フレーズ

  • 愛する人、大切な人:loved one, my significant other
  • 愛弟子:beloved pupil, one’s favorite student
  • 大泣きする:cry one’s eyes out, cry hard
  • 涙を呑んで:hold one’s tear in

まとめ

「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」とは「規律を遵守するためには、大切な人であっても涙をこらえて処罰する」という意味があります。「全体としての規律」が利己的な感情や私情を超えない、という点がポイントです。由来は「三国志」や「三国志演義」となります。