「の方」には「のほう」「のかた」と2種類の読み方があります。前者は様々なものを漠然と示す際に使い、後者は人を丁寧に表す際に使う敬語です。「のほう」と読む場合は、間違いだと思われる言葉遣いが多いため注意が必要です。意味や使い方、言い換え方を紹介します。
「の方」の意味と読み方
「の方」の読み方は「のほう」「のかた」
「の方」の読み方は「のほう」「のかた」の2種類です。どちらの読み方でも単独では使わず、「〇〇の方」の形で使います。
「の方(ほう)」の意味は「漠然と示す」
「の方(ほう)」の主な意味は、さまざまなものを「漠然と示す」です。よく使うのは「大体〇○の方向」という意味です。例えば「自宅は横浜の方です」は「自宅は横浜の方向にある」という意味になります。
他にも、分野や部門を漠然と示したり、対象を曖昧にして印象を和らげる際にも使用します。
「の方(ほう)」には「複数を比較する」意味も
「の方(ほう)」は、複数のものを比較してとりあげる意味でもよく用いられます。提示された選択肢の中から選んで「〇の方にします」という形で使用します。
他に使用する用法は「Aは異動になりますので、今後はBの方が連絡します」などです。この場合はただ比較するのではなく「AではなくB」であることを強調しています。
「の方(かた)」は人への敬意を表す
「の方(かた)」は、人への敬意を示す意味があります。複数の人を呼ぶ場合は「方々(かたがた)」という表現を使います。尊敬語か丁寧語かは明確になっていません。
例えば「韓国語が分かる方はいらっしゃいますか?」は「韓国語が分かる人」を丁寧に呼んでいることになります。
「の方」が人を表すようになったのは、目上の人を直接名前で呼ぶのは失礼だという昔の価値観が由来しているようです。相手がいる方角などを使って、間接的に「〇の方」のように呼んでいました。
「の方(ほう)」の使い方
「の方」は曖昧な表現をするときに使う
「の方」を「漠然と示す」意味で使う場合は、具体的に言えないものや言いたくない場面で使用します。そのため、具体的な内容に続けて使ってしまうと、相手に違和感を与えてしまうかもしれません。
「の方よろしくお願いします」は婉曲表現
ビジネスシーンでよく使う「〇の方よろしくお願いします」の「の方」は、婉曲表現として使われています。婉曲(えんきょく)表現とは、露骨にならないよう遠回しに伝える技術です。断定するより印象が柔らかくなるため、日本ではマナーとして一般的に使用されています。
「の方」を使った敬語表現は間違いとされやすい
「の方」を敬語や丁寧な表現として使う場面もあるでしょう。しかし、曖昧にする意味や婉曲表現を使う必要がないのに、「の方」を多用すると「間違った日本語を使っている」印象を与えてしまうことがあります。
例えば、コンビニで「お箸の方、おつけしますか?」は間違いとされやすいフレーズです。具体的に「箸」と伝えており、「の方」は不要だと考えられます。「ほう弁」「バイト敬語」として、言葉遣いが乱れていると批判する人もいるため、不要な場面で使わないよう注意しましょう。
「の方」を使った例文
- Aさんならさっき、あっちの方に走って行ったよ
- 「明日着るワンピース、白と青どっちがいいと思う?」「白いワンピースの方がいいな」
- 明日までにご確認の方、よろしくお願いします
「の方(ほう)」の言い換え表現
「の方」は「から」「より」に言い換える
「の方」は、「から」「より」などに言い換えられます。婉曲表現の場合、言い換えに向いている表現は「の程」です。
「の方」は言い換えではなく省く場合も
「の方」は別の言葉に言い換えるより、省くと意図が分かりやすい場合もあります。曖昧さが必要ない場合や明確な返答をしたい場合は、「の方」を省いて使うとよいでしょう。
- あっちの方に走って行ったよ
→あっちに走って行ったよ - 白いワンピースの方がいいな
→白いワンピースがいいな
「の方(かた)」の使い方と言い換え
「〇〇者の方」は正しい敬語
「関係者」「参加者」など「者」が付く言葉にも、「の方(方々)」は使えます。
「者」と「の方」はどちらも人を表すため、意味が重なって間違いになるのでは?と気になる人もいるかもしれません。「者」には相手を敬う意味がないため、「関係者の方」のように「の方」を続けて敬語として使用できます。
- 関係者の方
- 参加者の方
- 高校生の方
- 外国人の方々
「の方」の言い換えは「の人」
「の方」の言い換えは「の人」です。「の方」では丁寧すぎて大げさに感じる場面では「の人」に言い換えるとよいでしょう。「関係者の方」のように、もとから人を表す言葉の場合は「の方」を省くことも可能です。
まとめ
「の方(ほう)」は、丁寧な表現として多用すると間違いだと思われることが多い言葉です。曖昧・婉曲にする必要があるかどうかを考えて使用しましょう。「の方(のかた)」と読む場合は、人に対して敬意を示します。「関係者の方」「外国人の方々」としても使える表現です。
→今後はBから連絡します
→ご確認の程、よろしくお願いします