さまざまな取引の多いビジネスシーンでは「苦渋の決断」を迫られることも多いと思いますが、「苦渋の決断」の正しい意味を踏まえて言葉を使うことは、案外少ないかもしれません。
ここでは「苦渋の決断」にフォーカスし、意味と使い方、「断腸の思い」との違い、類語と英語表現を併せて解説しています。微妙な言葉のニュアンスに注目して会話に取り入れてみて下さい。
「苦渋の決断」の意味と使い方は?
「苦渋の決断」の意味は「辛く大変な決断を出す」
「苦渋の決断」の意味は、「辛く大変な決断を出す」です。「苦渋」は「苦=にがい」「渋=しぶい」つまり「苦くて渋い決断」となります。一般的な人なら人生の中でも、苦渋を感じて決断を下すことはさほど多くはないのではないでしょうか?
辛い決断に「にがさ」「苦しさ」「辛さ」「苦悩」などの要素を含んだ言い回しであり、眉間にしわが寄るような、本当に大変な決断を下する時に言葉の威力を発揮します。
「苦渋の決断」は使いすぎには注意
「苦渋の判断」はちょっとだけ考えた上での判断や、夜通し考えて簡単に答えが出たとうような判断の場合には用いるべきではないでしょう。むしろ、「苦渋」という言葉が示すように「苦しみもがいて、大変な思いをしてやっと絞りだした決断」を表現するときにだけ使ようにするのがベストです。
このような背景から「苦渋の決断」を多用してしまうと言葉の持つパワーが減退してしまう可能性があります。使い過ぎには注意をして、決断をするのに身を削るような辛さを経験した時にだけ使うようにしましょう。
- ヘッドハンティングで2倍の給料を提示され、現行の会社に留まるか苦渋の決断を強いられた。
- 苦渋の決断だが、しばらく家を出ることにした。
「苦渋の決断」と似た意味合いの言葉とその違い
「苦渋の決断」と「断腸の思い」との違いは言葉の重さ
「苦渋の決断」に近い意味を持つことわざに「断腸の思い」があります。「断腸の思い」は「腹を断ち切るほど辛く苦しい思い」を指す言葉で、強弱をつけるなら「苦渋の決断」より重い言葉となります。
「腹や腸を切り裂く」とはどれほどの痛みなのでしょうか。計り知れない辛さと苦しみが伴うに違いありません。辛い判断や苦しい思いを表は、過酷な状況の程度に応じて「苦しい決断」や「断腸の思い」などの言葉を上手に使い分けてみて下さい。
「苦渋の決断」と「苦渋の判断」は近い意味
「苦渋の決断」と同じような言葉に「苦渋の判断」や「苦渋の選択」などもあります。これらも「苦渋の~」として日常や職場でよく使われる慣用句で、「大変な思いをして決断する、選択する」という意味で「辛く苦しい決断や選択」を経験した時に使われる表現です。
「苦渋の決断」の類語と反対語は?
「苦渋の決断」の類語は「難しい決断」「辛い決断」
「苦渋の決断」の類語は「難しい決断」「辛い決断」などになります。文脈や話し手、または状況に応じて「苦渋」という言葉に代わる適切な言い換え表現を選ぶようにしましょう。
- 付き合いの長いA社にするか、勢いのある新星B社にするか、難しい決断である。
- 家族には辛い判断となるが、出世のために転勤の申し出を了承した。
「苦渋の決断」の反対語は「軽い決断」「他愛ない決断」
「苦渋の判断」の反対語にあたるのは「軽い決断」「他愛ない決断」「たやすい決断」「楽な決断」などになるでしょう。辛く悩むこともなく、苦い思いを経験しないで下すことができる決断です。
- 軽い決断というが、ランチでオムライスにするか、スパゲティにするでかなり悩む。
- 週末を犠牲にしてボランティア活動をするのは、私にとっては他愛無い決断でもあります。
- 部下を助けるために自ら残業をするのは、たやすい決断さ。
「苦渋の決断」の英語表現
「苦渋の決断」は英語で「agonizing」
「苦渋の決断」を表現するときに、シンプルに「difficult decision(難しい決断)」としても良いですが、さらに状況を詳しく相手に伝えるなら「辛く痛い」「苦しくて大変」という形容詞が適切です。
適切な単語は「agonizing=辛くて苦しい」で「agonizing decision(苦渋の決断)」となりますが、この表現を使えば相手は「そこまでして自分を苦しめて絞り出した決断」と、深刻に事を受け止め、真剣に話を聞いてくれるはずです。
ビジネス英語で「苦渋の決断」を使った例文
- Choosing one out of 3 companies to close the deal with is such agonizing decision.
3社から1社を選ぶのは、苦渋の決断だ。 - It would be surely agonizing decision whether we keep or fire him.
彼を解雇するかは、やはり苦渋の決断であろう。
まとめ
「苦渋の決断」とは「苦しく辛い思いをして決断をする」ことです。少しばかり悩んで下す決断ではなく、「大変な思いを経験して、悩んだ末にやっと出す決断」というニュアンスで使われます。
「苦渋の決断」は言葉の威力を維持するためにも、むやみやたらに多用しない方が無難です。そうすれば「苦渋の決断を下しました」と言葉を放った時に、相手は「それほど思い悩んで下した決断なら‥」と真摯に決断を受け止めてくれるからです。