「触らぬ神に祟りなし」の由来と意味とは?職場での使い方や類語も

「触らぬ神に祟りなし」とは、簡単に言うと「関わらなければ余計な災いを受けない」という意味を持つことわざです。日常生活はもちろん職場でも使われることわざですが、正しい使い方や由来についてご存じでしょうか?

ここでは「触らぬ神に祟りなし」の意味や由来のほか、似たことわざ、反対語、英語や中国語などの外国語表現を紹介します。

「触らぬ神に祟りなし」の意味と由来とは?

意味は「関わらなければ災いは無い」

「触らぬ神に祟りなし」は「関わらなければ余計な災いを受けることはない」という意味があります。余計なことをしたり、関係のないことに口を挟んだりするより、一切関わりを持たない方が良いということをたとえたことわざです。

「触らぬ神に祟りなし」ということわざでの「触らぬ」は「自分から関わらない」という意味で使われています。また「神に祟りなし」の部分は「どれほどの力を持つ神であっても、縁もゆかりもなく、関係のない人には災いを与えない」という意味です。

つまり「縁のない人には、神ですら害を及ぼさないものだ」というニュアンスで使われるのが「触らぬ神に祟りなし」です。

由来は「尾張いろはかるた」

「触らぬ神に祟りなし」は、愛知県西部で使われる「尾張いろはかるた」に由来することわざです。もともと京都周辺の地域を起源とする「京都いろはかるた」、大阪を中心とする「上方いろはかるた」、名古屋地方の「尾張いろはかるた」そして、東京の「江戸かるた」があります。

「触らぬ神に祟りなし」は、「尾張いろはかるた」にのみ採用されていることわざです。もともと強い不満を抱いて亡くなった人や、不本意に命を失った人の霊を「祟り神(たたりがみ)」と呼び、現生において災いを招き起こすと言われていました。

そして、この「祟り神」を恐れ、災いを鎮めるための「御霊信仰(ごりょうしんこう)」または「怨霊信仰(おんりょうしんこう)」を盛んに行っていたことから「触らぬ神に祟りなし」ということわざが生まれたとされています。

「触らぬ神に祟りなし」の使い方と例文

「余計なことには関わるな」の意味で助言や自戒に使う

「触らぬ神に祟りなし」は「余計な災いを招かないためには、関係のない話題やトラブルに首を突っ込まないほうが身のためである」ということを表しています。

たとえば、自分の知らないことや他人の事情などに自ら関与してしまうこともあるでしょう。しかし、あれこれと口を挟んだり余計なことを言ってしまうと、後でとんでもないトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。つまり、ここで他人の事情に関係さえ持たなければ、トラブルは回避できるわけです。

「触らぬ神に祟りなし」は、日常生活では「余計なことに首を突っ込むな」という、相手へのアドバイスとして、また、厄介ごとを抱えようとしている自分に対して「ストップ」をかける意図で使われます。

「職場のトラブルには適切な助言を仰ぐ」の意味合いも

「触らぬ神に祟りなし」、日常生活のさまざまなシーンで使われますが、職場も例外ではありません。たとえば、職場の同僚が仕事でトラブルに巻き込まれている時、必要以上に自分も関わり面倒なことになってしまうこともあるでしょう。相手のことを心配して助言や口出しをしたくなるものですが、下手に手出しをしてしまい後で非難を受けたり、責任を追及されてしまっては元も子もありません。

ビジネスシーンでのトラブルでは、上司に相談したり経験や知識のある先輩に的確なアドバイスをもらうことが重要です。このような場合「立場的に手助けをするべきポジションの人に意見を仰いで、問題を解決すべきだ」という意味合いで「触らぬ神に祟りなし」を使うことがあります。

「触らぬ神に祟りなし」には状況を鎮める意図も

たとえば、機嫌の悪い人が周囲にいる時は「あまり関わりたくない」と思ってしまうこともあるでしょう。職場で上司が感情的に部下を怒鳴りつけていたり、プライベートでは友達や恋人の機嫌が悪かったりと、相手がネガティブな状態になっていることがあります。

このような状況において、余計なことをせず相手や状況が落ち着くのを待つという意味合いで「触らぬ神に祟りなし」を使うことがあります。

「触らぬ神に祟りなし」を使った例文

  • 触らぬ神に祟りなしで、他部署の問題にあれこれ口出しをしない方がいい
  • 彼女には余計なことは言わないことにしている。触らぬ神に祟りなしというだろう
  • 触らぬ神に祟りなしではないが、状況が良くなるまで、しばらく様子をみたらどうだろうか

「触らぬ神に祟りなし」の類語や似たことわざ

似たことわざは「当たらぬ蜂には刺されぬ」

「当たらぬ蜂には刺されぬ」は、直訳すると「蜂に刺されるのは蜂に近づくからであって、もともと近づこうとしなければ蜂に刺されることもない」となります。つまり「自ら余計なことをしなければ、災難を避けることができる」という意味で使われます。

「当たらぬ蜂には刺されぬ」は「触らぬ神に祟りなし」とほぼ同じ意味があるため、類語として使えることわざの一つです。

ことわざ「触り三百」も類語として使える

「触り三百(さわりさんびゃく)」とは、余計なことに関与したり下手に手助けをすると、三百文もの大損をしてしまう、という意味のあることわざです。

たとえ、良かれと思って問題に関与しても無駄に金がかかるなら、やらないほうが賢明であるという意味で使われます。このことわざも「触らぬ神に祟りなし」が持つ「下手なことに関与するな」という意味で使われるため、類語となります。

ちなみに、江戸時代に使用していた「文」は現代の価値で「12円程度」で、三百文だと「約3600円」になります。余計なことをしてかかるコストとしては、そこそこの金額と言えるでしょう。

「触らぬ神に祟りなし」の反対語・対義語

反対の意味のことわざ「寝た子を起こす」

「寝た子を起こす」とは、忘れていたことを故意に騒ぎ立てたり、静かな状況をわざとかき乱して問題を起こすことを表すことわざです。「状況が落ち着いているならそのままにしておいた方が身のため」といったニュアンスで使われ、理由もないのに波風を立てることの愚かさをたとえています。

対義語には「藪をつついて蛇を出す」も

「藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)」とは、不必要なことをして災いを呼ぶことを意味します。藪に蛇が隠れていてもそっとしておけば人を攻撃したりしません。つまり、故意に静かな状況をかき回そうとすると災難をこうむることになる、といった意味で使われます。

「触らぬ神に祟りなし」の英語訳と中国語訳

英語では「Let sleeping dogs lie」

「Let sleeping dogs lie(寝ている犬はそのまま寝かせておけ)」は「触らぬ神に祟りなし」と似たようなニュアンスで使われます。

犬は起きている時、走り回ったり吠えたりするものですが、寝ている時はまるで嘘のように静かになります。つまり、せっかく大人しく寝ている犬をわざと起こして面倒なことになるより、そっとしておいた方が良い、というのが直訳の意味です。

また、同じニュアンスを持つ定型フレーズに「Don’t wake sleeping baby up(寝ている赤ん坊を起こすな)」があります。

中国語では「多一事不如少一事」

「触らぬ神に祟りなし」の意味に最も近い中国語表現は「多一事不如少一事(duō yī shì bù rú shǎo yī shì)」です。日本語のニュアンスとはやや異なり、もともと「色々なことを行うと皆が疲れてしまうから、物事はできるだけ少ないほうがいい」という意味で使われる表現です。

日本語でいうところの「事なかれ主義」に近いニュアンスがありますが、主に「余計なことを増やさず、最小限に必要なことだけをすべき」という、やや消極的な考え方の一つとして使われます。

まとめ

「触らぬ神に祟りなし」は「関わり合いさえなければ、災いが降りかかることもない」という意味のあることわざで、由来は「尾張いろはがるた」です。余計なことをしたり下手に手助けをして災いを招くより、関与しない方が身のためだということを表しています。

職場では「面倒なことに巻き込まれる前に、適切な人物にアドバイスを得たほうが良い」という意図で用いられることもあります。