「人の振り見て我が振り直せ」は自分の行動に対する気づきを与えてくれることわざです。日頃の心得やモットーとして掲げることもありますが、由来や本当の意味をご存じでしょうか?
ここでは「人の振り見て我が振り直せ」の意味のほか、使い方の例文や類語、また英語フレーズなどを交えて紹介します。
「人の振り見て我が振り直せ」の意味と由来
「他人の行動から見習い改めよ」という意味のことわざ
「人の振り見て我が振り直せ」とは基本的に「他人の行動を見て良い部分は見習い、悪い部分は改めよ」という意味があります。
相手の行動を観察し良いと思ったところは真似して、良くないと思ったところが自分にも当てはまる場合は改善するべきである、といった意味のことわざです。
「他人から学ぶべきことは多くある」ということを認識し、その行動を自分と照らし合わせて良いこと悪いことを見極めて見習え、という教えが「人の振り見て我が振り直せ」の意味となります。
「振り」とは「振る舞いや様子」という意味
「人の振り見て我が振り直せ」の「振り」とは「人の振る舞い」や「物事の様子」などを表します。つまり、人の動作や挙動、周囲から見てわかる物事の様子を意味するのが「振り」です。
「振り」を観察し、自ら見習ったり改めたりするのが「人の振り見て我が振り直せ」となります。
「人の振り見て我が振り直せ」の由来と語源
「人の振り見て我が振り直せ」は、他人の行動の良し悪しを足掛かりに、自分の欠点やミスなどを改善するように努めることが大切、ということをたとえたことわざです。
自分を客観的に見て、良い悪いを判断するのは難しいことです。「人の振り見て我が振り直せ」は他人の行動を参考に、自分の行動を改善したり見直したりすることが大切であるという教えが由来になっています。
「人の振り見て我が振り直せ」の本当の意味
「人の振り見て我が振り直せ」とは、言葉が説明するように「他人の行動を見て良し悪しを見極め、良いことは真似、そして悪いことは改める」という意味です。しかし、本当の意味は「常に謙虚な姿勢で、自分の知徳となることを身に積んでいけ」という教えが隠れています。
「人のふり見て我がふり直せ」は「他人の欠点やミスを指摘するのではなく、気づきによる改心や向上心の継続」に目を向けていることわざです。他人の経験や失敗から学ぶということだけではなく、自分の欠点を認識し目を背けず改めることが大切だというのが、「人の振り見て我が振り直せ」の本当の意味と言えます。
「人の振り見て我が振り直せ」の使い方と例文
自分を客観的に見る心得として使う
「人の振り見て我が振り直せ」は、自分に対して「客観的に自分のことを見て、悪いところは直していこう」という心得の一つとして使われます。
自分の欠点や悪いところというものは、なかなか認めたくないものです。しかし、自分への戒めや心掛けとして「他人の良い部分は見習いながら、悪いところがあれば自身のその部分を改める」と思い実行することが大切なのです。
他人の行動を「反面教師」として学ぶ
「人の振り見て我が振り直せ」は、相手の行動に対して「あんな風にはなりたくない」と、反面教師として使うこともできます。たとえば、部下を怒鳴りつけている上司を見て「自分は部下に対して誠意を持って仕事を教えていきたい」と思うことは、決して悪くない心意気です。
良くも悪くも他人の行動から学ぶことは多くあります。「他人は自分を映す鏡」だと思い見習ったり改めることで自分自身が成長する、一つの人生勉強だといえるでしょう。
「欠点やミスを批判する」意図では使わない
前述で触れましたが、「人の振り見て我が振り直せ」を他人の行動パターンや行為への「批判」や「非難」を意図して使うのは、ことわざの示す意味からも本当の意味ではありません。
たとえば職場の同僚が勤務中、自分の用事を済ませていたとしても陰で非難するのは社会人としてもナンセンスです。「人の振り見て我が振り直せ」には「仕事とプライベートの混同は良くない、だからしない」と自分自身で気づき、それを実行することに意義があります。
「人の振り見て我が振り直せ」は日常的によく使われることわざですが、相手の悪い行動に対して文句を言ったり批判するのではなく、もし自分に該当する部分があれば改めるべき、という意味で使うようにしましょう。
「人の振り見て我が振り直せ」を使った例文
- 父親が厳しかったせいか、人の振り見て我が振り直せで穏やかな性格になった
- 後輩に意地悪をするような人にはなりたくない、人の振り見て我が振り直せというし
「人の振り見て我が振り直せ」の類語とは?
ことわざの類語は「殷鑑遠からず」
「殷鑑(いんかん)遠からず」とは、自分への戒めとなる手本や習いは、古い時代や遠くにあるものではなく身近にあることをたとえたことわざです。その他に、身近にいる他人の失敗やミスから学び自分を戒めよ、という意味もあります。
「殷鑑遠からず」には「他人の良いところを見習う」という意味が欠けていますが、「他人の悪いところを見て改める」という意味では類語として使えます。
ちなみに「殷鑑遠からず」の「殷」は中国古代の王朝を指し、「鑑」は手本という意味です。
四字熟語の類語は「反面教師」
四字熟語で言い換えに使える言葉は「反面教師」です。「反面教師」とは「こうなってはならない、なりたくないということを悟らせてくれる人」を意味します。つまり、良い見本ではなく悪い見本として学び取るべき人のことをさします。
「反面教師」は、悪い手本として戒めや反省の種になる物事に対して使われるため、「人の振り見て我が振り直せ」と「悪いところを見て自分の悪い部分を矯正する」という点で似ています。
「人の振り見て我が振り直せ」の英語フレーズは?
英語1「learn from other people’s mistakes」
「人の振り見て我が振り直せ」と同じようなニュアンスで使われる定型フレーズが「learn from other people’s mistakes」です。直訳すると「他人の過ちを見て学ぶ」で「他人のミスから学んで賢くなれ」といったニュアンスで使われます。ローマ発端のことわざとして広く使われ、人生の教訓や心得としても浸透しています。
英語2「see an example of who not to be」
「see an example of who not to be」は、直訳すると「なりたくない人物像の例を見よ」となりますが、言いたいことは「悪い見本を見て、自分はそうならないようにする」ということです。類語である「反面教師」に似たニュアンスがありますが、ごく一般的な会話で「あんな風にはなりたくない」「悪い模範例」といったネガティブな感情を伴って使われます。
See the example of who not to be. He is so drunk and start striping his clothes off.
人の振り見て我が振り直せだな。彼、酔っぱらって服を脱ぎ始めてるよ。
まとめ
「人の振り見て我が振り直せ」ということわざは、「他人の行動の良いところは真似て、悪いところは改めるように努めよ」という意味で使われます。「自分を客観的に見ることは難しい。だから他人の行動から良し悪しを学び見習ったり改めたりすることが大切」という教訓が由来です。また、本当の意味としては「謙虚に自己改善を続けて、知徳をそなえる」となります。
The best option for you to grow up is to learn from other people’s mistakes.
成長するために一番役に立つのは、他人の過ちから学ぶことだ。