「清濁併せ呑む」の意味や由来とは?誤用しやすい使い方と類語も

政治家や仕事のリーダーに対して使われることわざに「精読併せ呑む」があります。主に「器の大きい人」という意味で使われますが、座右の銘として心に刻んでいる人もいることでしょう。ぜひとも、社会人として意味や使い方をマスターしておきたいものです。

ここでは「清濁併せ呑む」の意味の他、使い方とその例文、類語と英語フレーズについて、詳しく解説します。

「清濁併せ呑む」の意味とは?

「清濁併せ呑む」の意味は「差別なく受け入れること」

「清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ)」とは、「善人や悪人の別を問わないで、来るものはすべて受け入れること」を意味することわざです。その人が善い人でも悪い人でも、どのような人でも差別なく、承諾するさまを表します。

つまり、来るものは拒まず、全てを容認し、受け入れるという姿勢や心持ちを「清濁併せ呑む」といいます。こういった意味からも、「清濁併せ呑む」は「心が広いこと」「度量の大きいこと」を表す意図でも使われます。

由来は「清流と濁流どちらも受け入れる海」

「清濁併せ呑む」の由来は、相反する「清流」と「濁流」どちらも受け入れる海からきています。「清濁」の「清」とは、もともと「清いことと濁ること」を意味しますが、「善と悪」「良しと悪し」「賢人と愚か者」など、対語的なニュアンスを比喩的に表す意図があります。

「清濁併せ呑む」は「清濁併呑」とも表記する

「清濁併せ呑む」は、四字熟語で「清濁併呑」と表記します。読み方は「せいだくへいどく」となりますが、ほとんどの場合「清濁併せ呑む」ということわざとして使うことが多いようです。

「清濁併せ呑む」の使い方と例文

「清濁併せ呑む人」は座右の銘や仕事のリーダー像に

政治家や仕事のリーダー像を挙げる時に「清濁併せ呑むような人」と言ったりしますが、一般的にも、人として、または社会人として「清濁併せ呑むような人になる」という自己の将来像を掲げたり、座右の銘にしたりする人もいます。

また、就職試験を受ける時や、職場での挨拶では、「清濁併せ呑むような人を目指したい」とアピールすることができます。こういったことわざを、就職試験や職場で使うことで、表現の豊かさや語彙力など、教養の深さも売り込むことができます。ぜひ、シチュエーションに合わせて、上手に使ってみて下さい。

「善悪の両方を持ち併せる」という使い方は誤用

「清濁併せ呑む」は誤用の多いことわざの一つです。たとえば、最も多い誤用に「人や自分に対して、善悪の両方を持ち併せる」という意味で使うことが挙げられます。以下で誤用の例を挙げてみます。

「清濁併せ呑む」の誤用例
  • 私は人に対して優しいときもあれば冷たいときもある、清濁併せ呑む性格だ
  • 清濁併せ呑む人柄のため、二重人格だと後ろ指を指されることがある

あくまで「清濁併せ呑む」は、「善悪を分け隔てなく、ありのままに受け入れる」ことを表します。度量が大きい人、心が広い人という意味で使うようにしましょう。

「清濁併せ呑む」を「清濁併せ飲む」と表記しない

「清濁併せ呑む」の「呑む」の部分を「飲む」と誤表記しないように気を付けましょう。もともと「飲む」は「ジュースを飲む」「薬を飲む」また「酒を飲む」などのように、液体を飲む場合に使われます。一般的な飲み物を口にする時に使われるのが「飲む」となります。

一方「呑む」とは固体を丸のみしたり、酒などをガブガブと飲む時に使われる他、「要求を呑む」というように「承諾する、受け入れる」、また「敵を呑む」というように「圧倒する」という意味も持ち併せます。「清濁併せ呑む」は、「善悪を承諾する」という意味となるため、「飲む」と表記するのは基本的に誤りとなることを留意しておきましょう。

「清濁併せ呑む」を使った例文

  • 将来は、分け隔てなく人を受け入れることができる、清濁併せ呑む人になりたい
  • 父は清濁併せ呑む人であるからこそ、一代で会社を築くことができたのかもしれない
  • 職場では、清濁併せ呑むことを忘れず、平等に部下を評価していきたいと思う

「清濁併せ呑む」の類語とは?

「来る者は拒まず」とは誰でも受け入れること

「来るものは拒まず」とは、簡単にいうと「誰でも受け入れる」という意味です。ドアを叩くものは快く受け入れ、拒否しないことを表す言い回しです。相手を見かけや態度、学歴や経歴などによって区別することをせず、条件や限度などを設けないで、受け入れるという意味を持ちます。

例文
  • どの企業も人手不足で、来る者を拒まずといった状況である
  • 来る者は拒まずだが、ある程度のマナーや常識は持っていて欲しい

「度量が大きい」とは心が広いこと

「度量が大きい」とは、「心が広いこと」を意味します。人の心持ちや考えが広く、おおらかで気概あるさまを表します。「清濁併せのむ人」とは、つまり「度量が大きい人」のことです。

「度量が大きい」という言い回しも、会社のリーダーや政治家など、人の上に立つ立場の人に対して使われることが多く、加えて褒め言葉や相手の性格を高く評価する時に好んで用いられます。

例文
  • 私の部長はエンジニアとしての経験が豊富なだけではなく、度量が大きい人でもある
  • 度量が大きければ、部下のちょっとしたミスや過ちにも腹が立たないだろう

「清濁併せ呑む」の英語フレーズは?

「清濁併せ呑む」の英語訳は「accepat as they are」

「清濁併せ呑む」とは、日本語が持つ独特な表現を多く含む言い回しです。そのため、英語にする時は、わかりやすく意訳をする必要があります。

「清濁併せ呑む」は、つまり「誰でも、ありのままの姿や内容で受け入れる」という意味です。英語にするなら、「受け入れる、受容する」という意味の「accept」、そして「ありのまま」「そのまま」というニュアンスを表す「as they are」「as it is」「as he is」などのフレーズを使い「accept as they are」とするのが一般的です。

また、「〇〇に関係なく」「〇〇に関わらず」という意味で「regardless of 」を使うこともできます。性別に関係なくなら「regardless of gender」、年齢に関係なくなら「regardeless of age」となります。副詞で使う時は「regardlessly」を用いて下さい。

「清濁併せ呑む」を使った英語例文

  • 我が上司は清濁併せ呑む人物で、性別に関係なく平等に部下を見てくれる。
    My boss accept as they are and he just look at his staffs equally regardless of gender.
  • 政治家や会社のリーダーは、清濁併せ呑むような人が多い。
    Many politician and leader of the company have capability of accepting people regardlessly.

まとめ

「清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ)」とは、「分け隔てなく誰でも受け入れること」つまり「差別することなく、誰でも受け入れる」という意味を持ちます。そのため、善人や悪人を問わず、賢者であろうと愚か者であろうと、快く受け入れる「心の広さや器の大きさ」を表す時に使われます。

こういった意味から、政治家や会社のリーダーの性質や意気込みなどを表す時に「清濁併せ呑む」ということわざを使うことが多くあります。社会人の方も、ぜひ、心意気を高める意図でも座右の銘として、掲げてみてはいかがでしょうか?