「国家総動員」の意味とは?国家総動員法や国家総力戦との違いも

「国家総動員」とは「すべての資源を統制運用すること」という意味ですが、戦時下では国家総動員法が施行されて、国民の自由が奪われ国家が一丸となり戦争へと突き進んでいきました。

この記事では「国家総動員」の意味のほかに、「国家総動員法」や「国家総力戦」との意味の違いも簡単にわかりやすく解説しています。

「国家総動員」の意味とは?

「国家総動員」とは「すべての資源を統制運用すること」

「国家総動員」とは「戦時下、または戦争のための準備として、すべての人的物的な資源を有効利用するために統制運用すること」という意味です。想定された敵国に勝つために、または自国を守るために利用できるあらゆるものを、国の方針に従わせて制限して、運用することを指します。

「総動員する」とは「ある目的のために全ての人を動員すること」

「総動員する」とは「ある目的のために全ての人を動員すること」という意味です。ただ人が集まるのではなく、ある目的を成し遂げるために人が集まり活動をすることです。

「総動員する」の例文
嵐が来るというので、従業員総動員で事務所を養生することになった

「国家総動員」の対義語は「国家総復員」

「国家総復員」とは、「国家総動員された状態から、それ以前の平常だった状態に戻ること」という意味で、「国家総復員」の対義語です。第一次世界大戦が終戦を迎えるとき、当時の日刊新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』では、「(ベルサイユ)講和(条約)成立と共に平時の状態に復するために国家総復員をやらなければならぬが」(1月2日付)という一文が記載されました。

「国家総動員法」とは?

「国家総動員法」とは「国家がすべてを統制運用できるようにした法律」

「国家総動員法」とは、「すべての人的物的資源を国家により統制し運用できる法律」です。議会の審議をする必要なく、勅令で資源などの運用をできることも認めています。

資源や資本、労働力、さらには通信や貿易に到るまで国家によって統制されました。例えば、国民を強制的に動員して、国防および軍備のために従事させました。また、言論の自由なども奪い、国民の生活を拘束しました。

「国家総動員法」は日中戦争下の第一次近衛内閣で、1938年4月公布、同年5月から第2次世界大戦の終戦まで施行されました。

国家総動員法に基づいて国民徴用令が発令

国家総動員法に基づいて発せられた勅令のひとつに「国民徴用令」があります。これにより、国民は強制的に軍事産業に就業させられることになりました。

また「価格等統制令」により、商品の価格は公定価格に据え置かれました。

「生活必需物資統制令」では、食べ物や燃料などは配給で割り当てられる切符制度が導入されて、国民の自由は奪われていきました。

中国の国家総動員法と呼ばれる「国防動員法」

「国防動員法」とは、2010年に中国で施行された法律で、日本の国家総動員法と似た法律だと言われています。

「国防動員法」の内容とは、中国国内で有事の時に、18歳から60歳までの男性と、18歳から55歳までの女性が動員されて、物的資産も必要に応じて徴用されるというものです。通信や交通なども軍または政府によって統制されて、外資系企業も対象となります。

「国家総動員」と「国家総力戦」の違い

「国家総動員」と「国家総力戦」の違いは「統制」か「戦闘」

「国家総動員」と「国家総力戦」の違いは「統制すること」か、または「戦うこと」という意味が含まれるかどうかの違いがあります。

「国家総動員」と「国家総力戦」のどちらも戦争を前提に使われる概念ですが、「国家総動員」では「国家下にあるすべてのものが統制されて国家によって運営されること」という意味です。一方、「国家総力戦」では「国家下にあるすべてのものが総力を挙げて戦うこと」です。

「国家総動員」には戦うための準備として行われることがあるのに対して、「国家総力戦」ではすでに戦闘状態にあります。

「国家総力戦」とは「国全体が団結して戦うこと」

「国家総力戦」とは、「軍部だけが戦うのではなく、その国の経済や思想、文化など国家全体が総力を挙げて戦うこと」です。第一次世界大戦以来、生まれた戦い方の概念です。それ以前は、戦争とは軍事であり、敵対する軍部が対立するという戦い方でした。

「国家総動員法」の語呂合わせは?

「いくさ(193)は(8)総力戦」

「国家総動員法」が施行されてから、国家が総力を挙げて戦うことになったことから、「戦(いくさ)は総力戦」という文章を作り、文頭の「いくさは」に「1938」を当てる語呂合わせです。

国家総動員法の意味を掴むこともできる語呂合わせになっています。

「いくさ(193)!や(8)る!」

「国家総動員法」の意味を大づかみして、「いくさ!やる!」という文章を作り、その文から「いくさ(193)!や(8)る!」と語呂合わせしています。「国家総動員法」の導入を検討していた政府を代弁するかのような語呂合わせです。

まとめ

「国家総動員」とは「国のすべての資源を統制して運用すること」という意味で、戦争を前提にして使われる言葉です。また「国家総動員法」は1936年に施行され、物的人的資源など全てのものが利用されて戦うことを認めた法律です。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。