「至急やっておいて」「至急連絡して」と言われたら、誰もが「急ぎ」で対応することでしょう。ただし、上司など目上に対しては「至急」が失礼になることもあります。「至急」の意味とその使い方を例文で詳しく解説します。また、「至急」はいつまでに対応すべきか?「早急」「緊急」との使い分けは?についても解説します。
「至急」の意味とは
「至急」とは「非常に急ぐこと」という意味
「至急(しきゅう)」とは「非常に急ぐこと」を意味します。たとえば「至急連絡ください」は「大急ぎで連絡ください」という意味です。また、「至急」には「事態が非常に差し迫っている様」という意味もあります。
「どのくらい早く」「いつまでに」の定義はない
「至急」と言われた用件は、優先的に対応するのがビジネスにおけるマナーです。他の業務よりも優先し、真っ先に取り掛かることも多いでしょう。
ただし、「至急=何時間以内、何日以内」といった明確な定義があるわけではありません。そのため、自分は「本日中に対応してほしい」と思っていても、相手に「3日以内」と解釈されることもあります。相手との認識のズレを防ぐためには、「本日中に」「今週中に」というように具体的な期限を明示するのがベターです。
「至急」と「緊急」「早急」の違いとは
「緊急」とは「重大で即座に対応すべきこと」
「緊急」とは「重大で、即座に対応しなければならないこと」を意味します。「緊急」もまた「非常に急ぐ」という意味を持ちますが、加えて「事態が重大である」というニュアンスの強い単語です。そのため、「緊急事態」と状況が差し迫っている様に対してもよく用いられます。
「早急」と「至急」はほぼ同じ意味
ビジネスでは「早急」という語もしばしば用いられます。「早急」とは「非常に急ぐこと」という意味で、「至急」とほぼ同じ意味として使うことができます。意味合いとしては似ているものの、「早急」よりも「至急」の方がやや強いニュアンスで用いられるのが通例です。
なお、「早急」は正式には「さっきゅう」と読みます。ただし、近年では「そうきゅう」という読みも許容されつつあるため、「さっきゅう」「そうきゅう」のいずれでも問題とはされていません。
優先順位は上から「緊急」「至急」「早急」
「至急」と「緊急」「早急」を優先度が高い順に並べると、「緊急」「至急」「早急」の順です。
一般にビジネスで最もよく用いられるのは「至急」で、できるだけ早く済ませたい事柄に対して用いられます。「早急」は語句としての意味は「至急」とほぼ同義ですが、ビジネスシーンでは「なるべく早く」とやや控えめな印象を与える表現です。
なお、優先度の高い業務であってもビジネスシーンで「緊急」を使うことはあまりありません。「緊急」は従業員の命に係わるようなケースなど限られたシーンでのみ用いられます。
「至急」の使い方1:依頼する
「至急」は急ぎの用件を依頼する際に使う
「至急」は急ぎの用を依頼する際に使用されます。たとえば、「至急、これやっておいて」と言われたら、大急ぎでやってほしいという意味です。また、「至急連絡ください」とは「急ぎで連絡してほしい」という意味になります。
「至急」の依頼を受けたら、自分の業務の中でも優先して対応するようにします。
上司や目上には「早急」に言い換える
「至急」は急ぎの用を依頼する際に使用しますが、目下から目上に対し「至急お願いします」や「至急~してください」と使うのは避けます。目上に「急いで」と催促することは失礼にあたります。この場合は、先述した「早急」や「お早めに」などの表現で急ぎのニュアンスを伝えることが多いでしょう。
- 早急にご対応いただきますよう、お願い申し上げます
- お忙しい中恐縮ですが、お早めにご連絡いただけますと幸いです
メールの件名に「至急」を使うときの例
「至急」の依頼をメールで送る場合は、件名にも「至急」と書きます。相手がメールを開かなくても「急ぎの用」であることを察知できるためです。
なお、メールの件名における「至急」は、目上・目下を問わずに使用されます。ただし、本文では失礼のないよう適宜言い換えるとよいでしょう。
- 【至急】実績表ご確認のお願い
- 至急:次回ミーティング日時変更のご連絡
「至急」の使い方2:自分の行動に使う
「至急対応いたします」と誠意を見せる
「至急」は「至急対応します」「至急とりかかります」と自分の行動に使うこともよくあります。この場合、「急いで対応します」「他のものよりも優先して対応します」という意味です。
こちらに不備があって対応が必要であるという場合、相手に誠意を見せる言い回しとして使うことができます。
「至急~させてください」は目上にも使える表現
目上の人に対して「至急~してください」と使うのは失礼になると先述しましたが、「至急~させてください」という言い回しで使えば失礼には当たりません。「~させてください」とは端的に言うと「~してもよいですか?」と相手に許可を得たうえで何かをする際の言い回しです。
たとえば、「A社の件で至急ご相談させてください」や「A社の件で至急確認させていただきたいことがあります」とすると、急ぎの用件であることを伝えることができます。
「至急」のビジネスでよく使う表現
「大至急」は「大急ぎ」のニュアンス
「至急」を強調したい場合や、より切迫している状況である場合には「大至急(だいしきゅう)」を使用します。先述のように一般的なビジネスシーンで「緊急」を使うことは稀であるため、「至急」よりもスピーディーな対応が必要な場合には「大至急」を使いましょう。
- クライアントに、大至急連絡して
- 大至急、対応いたします
「至急案件」は最優先業務を指す
「至急案件」とは文字通り「至急の案件」のことで、「最優先で対応すべき業務」であることを意味します。
ビジネスではタスクに優先順位をつけて仕事をすることが求められます。当然、「至急案件」はその優先順位のトップに位置するわけですが、あれもこれも「至急」にしていては本来の優先順位を見失いがちです。本当に「大急ぎの案件」にのみ「至急」と使うようにしましょう。
「至急」の類語(類義語)や言い換えとは
「至急」は「早速」に言い換えられる
「至急」と似た意味の表現では「早速(さっそく)」が挙げられます。「早速」とは「すみやかなこと、すぐ行うこと」という意味です。
ビジネスシーンでは、相手の素早い対応に対して「早速のご対応ありがとうございます」「早速のご返信、感謝申し上げます」と相手に感謝を述べる際によく使用します。
「迅速」も「すみやかなこと」を意味する
「迅速(じんそく)」も「すみやかなこと」を意味する熟語で、物事の進行が速い様に対して使用します。「早速」と似た意味を持ちますが、一般には「迅速」の方がよりスピーディーな様に対して用いられます。
「早速」と同様に「迅速なご対応ありがとうございます」のほか、「迅速に対応します」と使うことも可能です。
「至急」の英語訳とは
英語では「urgent」や「immediately」を使う
「至急」の英語訳では「urgent」や「immediately」を使用します。
たとえば「急ぎのお願いです」という場合には「This is an urgent request.」と英訳することができます。また、「至急お願いします(至急対応してください)」は「Please deal with it immediately.」と英訳することが可能です。
「as soon as possible(ASAP)」もよく使う表現
ビジネスシーンでは急ぎの依頼をする際には「as soon as possible」というイディオムもしばしば用いられます。「as soon as possible」は「可能な限りはやく、なるべく早く」という意味で、「ASAP」の略語でもよく知られる表現です。
たとえば、「Could you handle this ASAP?」は「至急(なるべく早く)やっていただけますか?」という意味です。
目上には「top priority」を使った英語訳も
目上に依頼する際「至急」と使わないように、英語でも「top priority」を使って柔らかい言い回しをすることがあります。
たとえば、「Please make this your top priority.」を直訳すると「これをあなたの最優先にしてください」で、「早急にご対応お願いします」というニュアンスです。「Could you make this your top priority?」も丁寧な表現として使えます。
まとめ
「至急」は「非常に急ぐこと」を意味する熟語で、ビジネスでは「至急お願いします」「至急ご連絡ください」などの表現でよく用いられます。ただし、上司や目上の人に対して使うと急かすことになり失礼です。依頼文での使用は同僚や目下への使用にとどめ、目上には「早急に~」などに言い換える、あるいは自分の行動に対して使用するのみにとどめるのが無難です。