「お茶を所望します」「ご所望でしょうか」とビジネスシーンで欲しいものや求めるものを言い表す際に「所望」という語を使うことがあります。この「所望」の詳しい意味と敬語での使い方を例文で解説します。また、「所望」と似た語句「要望」との違いや類語、英語訳とあわせてみていきましょう。
「所望」の意味とは
「所望」とは「こうしてほしいと望む」という意味
「所望」とは「あるものが欲しいと望むこと、こうしてほしいと望むこと」を意味します。「Aが欲しい」という気持ちを表す際、また「~してほしい」という要望を伝える際に「~を所望する」などの形で使用します。
「所望」に敬語の意味はない
「所望」は「ほしい」という気持ちを丁寧に言い表す表現ですが、敬語としての意味はありません。そのため、目上の人に対して使用する場合は尊敬語や謙譲語を用いて表現するなど、注意が必要です。
「所望」の読み方は「しょもう」
「所望」は「しょもう」と読みます。「望」という漢字には「ぼう」という読みもありますが、「所望」の場合は「もう」と読むのがポイントです。「しょぼう」と読まないように気をつけましょう。
「所望」の使い方と例文・短文
「○○を所望する」で具体的に欲しいものを述べる
「所望」は「所望する」の表現で「欲しいものを述べる」ときに使用することができます。「~を所望する」で「~がほしい」という意味です。たとえば、「人手不足で明日からでも働いてくれる人を所望している」とは「人手を欲している」というニュアンスになります。
「所望する」の他に「所望の品」の形で使う例もあります。「所望の品」とは「欲しい品、欲しいもの」という意味です。
目上の人には「ご所望」と尊敬語にする
「所望」を目上の人に対して使う場合は、尊敬の意味を持つ接頭辞「ご」をつけて「ご所望」にしましょう。たとえば、「どのような商品をご所望でしょうか?」とすると「どんな商品を探してますか?ご希望ですか?」といったニュアンスに、「ご所望でしたら~」は「欲しかったら~」というような意味合いです。
このほか「ご所望」は、「ご所望の品(欲しい品)」「ご所望の方(欲しい人)」といったフレーズでも使用されます。
- ご所望の品を手配いたしました。
- ご所望の方がいましたらお声がけください。
「所望される」も尊敬語として使用可能
「所望する」の尊敬語では「所望される」や「所望なさる」といった表現も可能です。
「ご所望される」は二重敬語に該当するため厳密には誤りですが、ビジネスシーンでは「ご所望されています」「ご所望されているとのことです」などの言い回しで用いられることも多く、許容範囲とも言われています。
- 先方が所望された日程で調整中です。
- お客様が最新のカタログを所望されていますが、いつ頃届きますか?
謙譲語では「所望いたす(いたします)」
「所望する」を謙譲語として使う場合は「する」の謙譲語「いたす」を使い、「所望いたします」と表現します。「所望します」のかたちでも自分の気持ちを丁寧に言い表すことができますが、謙譲のニュアンスを出したい場合は「所望いたします」がベターです。
なお、同じ敬語表現でも「ご所望」は尊敬の意を込めた表現です。「私は○○をご所望します」と使うのは誤りなので気をつけましょう。また、「○○を所望したいのですが…」という言い回しもあまり使いません。敬語として使うのであれば「所望いたしますが…」あるいは「所望しておりますが…」などの文例の方がよいでしょう。
支社出張の際は社用車を所望いたします。
「所望」と「要望」の違いとは
「要望」とは「ある状態を強く望むこと」
「要望」とは「ある状態、状況を強く望むこと」という意味です。「実現を強く望むこと、実現を期待すること」という意味があり、具体的な事柄ではなく抽象的な事柄に使うことが多いのが特徴的です。また、「強く望む」というニュアンスを含む点も「要望」のポイントですが、気持ちの強さに関わらずビジネスシーンでは広く使用されます。
「要望」を尊敬語として使う場合は「ご要望」の形に変え、「ご要望がございましたらお聞かせください」などと使用します。
「所望」との違いは具体的な対象があるか
「所望」と「要望」の使い分けのポイントは、対象が具体的かどうかです。たとえば「水が欲しい」と対象がはっきりしている場合には「水を所望する」と「所望」を使用するのが通例です。「水を要望する」とは言いません。
一方「要望」は範囲が幅広い願いや漠然とした願いに対して用いることが多く、「従業員の要望」「市民の要望」「要望を提出する」などといった表現が可能です。「改善を要望する」とはいっても、具体的なものを挙げて「要望する」とは言わないのがポイントです。
「所望」の類語・類義語とは
「ご所望の品」は「お望みの品」に言い換え可能
「所望」の言い換えには「望み」を使うことが可能です。たとえば、「ご所望の品」は「お望みの品」に、「ご所望の方」は「お望みの方」に言い換えることができます。
また、「望み」は「窓際のお客様が飲み物をお望みです」のように「物」を指しても使うことができる点も「所望」の類語といえる理由の一つです。「ご所望」よりも「お望み」の方が柔らかい印象があるため、相手や状況に合わせて言い換えてみましょう。
「所望」の類義語として使える「希望」
「希望」とは「こうあってほしいと望むこと」という意味です。「希望」は「要望」に近いニュアンスの表現で、「ある状況、状態を望む」という意味で用いられますが、「~をご希望ですか?」のように「所望」と同じような使い方をすることもあります。
「所望」と似た意味の「用命」
「用命」とは「用を命じること」を意味し、「ご用命ください」の表現でよく用いられます。「ご用命ください」で「用事を言いつけてください、用があれば命じてください」というニュアンスです。やや硬い表現ですが、丁寧な言い回しとしてビジネスシーンではよく用いられます。
たとえば、「ご所望の品があればお申し付けください」は「ご用命ください」とシンプルに言い換えることも可能です。
「所望」の英語訳とは
英語では「ask for」を使う
「所望する」を英語で表現する場合は「ask for」の表現を使用します。「ask for」は「求める」という意味です。
また、カタカナでもよく用いられる「request(リクエスト、要望)」を使った英語訳も可能です。「on request」で「依頼に応じて、要望に応じて、申し込めば」などのニュアンスとなります。
「所望」の英語を使った例文
- Here’s the brochure you’ve asked for.
こちらがご所望のパンフレットです - Brochures are available on request.
パンフレットはお申し込み頂ければお送りします
(ご所望でしたらパンフレットをお送りします)
まとめ
「所望」とは「これがほしい、こうしてほしいと望む事」を意味します。「所望します」と自分が望むことを丁寧に言い表す際に使用しますが、敬語としての意味はないため、尊敬語として使う際は「ご所望」や「所望される」と形を変えて使いましょう。
なお、「所望」は「要望」と似た意味を持ちますが、「要望」は抽象的な望みに使うのが特徴です。具体的な対象を挙げて使用する場合は「要望」ではなく「所望」を使います。