「少なからず」の意味や類語とは?「少なくとも」と対義語も紹介

「少なからず」とは、「少なからずある」のような表現でビジネスシーンでも用いられます。しかし、意味を読み誤ることも少なくありません。「少なからず」の意味と使い方を例文で解説するとともに、気をつけたい誤用例も紹介します。また、「少なくとも」との違いや類語・対義語、英語訳についても触れています。

「少なからず」の意味とは?

少なからずとは「かなり」「たくさん」の意味

「少なからず」とは「少ない」に打消しの「ず」を伴った表現で、「少しではなくかなり、たくさん」という意味です。数量が少なくない様、程度が軽くない様を「少なからず」と表現します。

少なからずは「適度~多い」まで表現できる

「少なからず」が意味する範囲は幅広く、「少なくはない=適度(適量)」の意味で用いられることもあれば、「少しではなくかなり、多い」という意味でも用いられることもあります。「少なくはない」という控えめなニュアンスは曖昧で、「少なからず」が指す範囲にも差が生じるのです。

とはいえ、一般には「適量」の意味で「少なからず」というよりも、「多い」ことを控えめに伝えたい場合に用いられることが多いでしょう。

「少なからず」の使い方と例文・短文

「少なからずある」とは数量が多い様を表す

「少なからず」は「少なからずある」「少なからずいる」の言い回しで、数量が多い様を指す際に使用します。「非常に多い」と主張するのではなく、「多い」ことを控えめに伝えたい場合に用いられるのが特徴です。

例文
  • ノベルティの在庫は、資料室に少なからずあったと記憶している
  • デマに踊らされる人は、少なからずいる

「多い」と明言を避けたい場合に使う

「少しではない」とやや控えめな印象の「少なからず」は、ストレートに「多い」と伝えるのを避けたい場合に用いられることが多いです。そのため、目上の人に対して言いにくい事柄や思わしくないこと、望ましくないことを伝える際にもよく用いられます。

例文
  • 仕様Bを追加しますと、納期にも少なからず影響が出ると思われます
  • 少なからずクレームも届いています

「少なからず」を使った表現は『羅生門』にも

「少なからず」は数量以外でも、「影響」「感情」などの程度を表す際にも用いられます。たとえば、芥川龍之介の『羅生門』でも「少なからず(中略)影響した」と使用されています。この「少なからず影響した」とは「少しではなくかなり影響した、大いに影響した」という意味です。

他にも「少なからず驚くだろう」「少なからず需要はあるはずだ」などの使用も可能です。

「少なからず耳にする」とは「何度も聞く」

「少なからず耳にする」とは「何度も繰り返し耳にする(聞く)」という意味です。たとえば、「うちの会社が危ないという話は少なからず耳にしてきたが、いよいよその時が来たようだ」と使うと「会社が危ないという話は何度も聞いた」というニュアンスで、一度ではなかった倒産話がいよいよ現実味を帯びてきた様を表す文章になります。

「少ないながらも」の意味で使うのは誤用

「少なからず」を「わずか、少ないながらも」という意味で使うのは誤用です。先述のように、「少なからず」は「少しではなくかなり、たくさん」という意味で、数量や程度が低い様を表す言葉ではありません。

たとえば「この件に異議を唱える人はわずかだけどいた」という意味で「少なからずいた」と言うのは誤りです。「わずかだけどいた」というニュアンスでは「少ないながらもいた」という表現を使用します。

「少なからず」と「少なくとも」の違いとは?

「少なくとも」とは「控えめに見ても、最低でも」

「少なくとも」とは「少なく予想しても、控えめに見ても」という意味です。また「せめて、ともかく」という意味もあります。

たとえば、「少なくとも半年はかかる」は「少なく見積もっても半年はかかる」、「少なくともこれだけは守ってほしい」は「せめてこれだけは、最低限これだけは守ってほしい」という意味です。

「少なからず」と「少なくとも」の使い分け方

「少なからず」が数量が多いことや程度が大きい様を表すのに対し、「少なくとも」は「控えめに見ても、最低でも、せめて」という意味です。両者は語感こそ似ていますが、意味は全く異なります。

たとえば、「該当者は少なくとも3人はいるだろう」とは「少なく見積もっても3人はいる」という意味ですが、「該当者は少なからずいる」は「該当者の数が多い」ことを示します。

「少なからず」の類語や言い換え方とは?

「少なからず」を「相当」に言い換える

「少なからず」と似た意味の表現は「相当」が挙げられます。「相当(そうとう)」とは「かなりの程度であること」を意味します。「はなはだしい」というニュアンスもあり、「思っていた以上だ」と驚きを示す際にも使用できる表現です。

一方で、「相当」には「程度がふさわしい様(例:収入に相当する家賃)」や「価値や働きが等しい事、対応する様(例:収入に相当する仕事)」といった意味もあります。そのため、「相当」を「少なからず」に言い換える際は文脈に適してるかどうかの判断が必要です。

例文

相当な影響がある(少なからず影響がある)

「だいぶ」「大いに」も類語として使える

「少なからず」の類語には「だいぶ(大分)」や「大いに」「非常に」なども挙げられます。いずれも「たくさん、たいそう」という意味で用いられる語で、程度がそれなりにある様や程度の甚だしさを表す際に用いられる表現です。

「少なからず」の対義語や反対語とは?

「少なからず」と逆の意味を表す「わずか」

「少なからず」と反対の意味を持つ語では「わずか」が挙げられます。「わずか」とは「ほんの少しであること」を意味し、「少なくはない」という意味の「少なからず」とは対義的な言葉といえます。

「少なからず」の対義語「多少なりとも」

「多少なりとも」とは「少しだけでも、小さくても」と程度が小さいことを意味します。「多少」には「多いか少ないか」という意味の他に「少し」という意味があり、「多少なりとも」はこの後者の意味を使った表現です。

たとえば、「多少なりとも影響を受けた」とは「少しだが影響は受けた」という意味に、「多少なりとも援助したい」は「少しでも援助したい」という意味になります。このように程度が小さいことを意味するため、「少なからず」とは反対の意味ということができるのです。

「少なからず」の英語訳とは?

英語では「not a little」「not a few」

「少なからず」を英訳する際には、「not a little」や「not a few」といった表現を使用します。いずれも「少なからず、かなりの」といった意味を持つ表現です。

また「少なからず影響を与える」は「重要な、かなりの、著しい」などの意味を持つ「significant」を使った英訳も可能です。

「少なからず」の英語を使った例文

  • This book has had significant influence in foreign countries.
    この本は海外にも少なからず影響を与えている
  • Not a few foreigners like Japanese Food.
    和食好きの外国人は少なからずいる
  • He has not a little experience.
    彼は少なからず実績がある

まとめ

「少なからず」とは「数量が多い、程度が大きい」という意味の語句です。「少なからず」という語感から「少ない」「少しだけでも」という意味で使うのは誤用になります。「少なからず」は文脈によって程度の差こそありますが、適量よりも多いさまを指しています。「少なからずいた」「少なからず影響がある」などはどれも相当数を指していて、決して少ないという意味ではない点に注意しましょう。