「鬼が笑う」の意味と語源とは?類語と英語表現も解説【例文付き】

日本には面白いことわざがたくさんありますが、中でも「鬼が笑う」は多くの人々が「なぜ鬼が笑うのだろう?」と不思議に思う言葉の一つでしょう。普段はしかめ面をしている鬼が笑うのは、一体どんな時なのでしょうか?

ここでは「鬼が笑う」の意味と語源、正しい使い方とその例文、類語と英語表現を紹介しています。ぜひ、参考にしてみて下さい。

「鬼が笑う」の意味と使い方は?

「鬼が笑う」の意味と使い方を例文と併せてを見てみましょう。

「鬼が笑う」の意味は「あれこれ言っても仕方がない」

「鬼が笑う」の意味は、「実現性の低いことを言ってもはじまらない」です。人が現実味のない話をしたり、予測もできないようなことを言っている時にからかって使う言葉です。

「鬼が笑う」はからかい半分に使う言葉

「鬼が笑う」は通常「来年の話をすると鬼が笑う」「来年のことを言うと鬼が笑う」などのように使うことが多いです。意味は「先の見えない来年について話しても意味がない」「予測ができない将来を案じても知り得るものではない」などになり、「そんな未来の話をすれば、強面の鬼さえも笑う」と、からかい半分に用いる言葉となります。

この時のは「笑う」はケラケラ笑うではなく「嘲笑う」になり、相手をやや子馬鹿にしたようなニュアンスを以て放たれることが多いでしょう。広く意味で解釈すれば「心配するのはやめよう」という意味合いも含まれていると考えられます。

「鬼が笑う」を使った例文

「鬼が笑う」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 来年が豊作になるかどうかを今から心配するなんて、鬼が笑うよ。
  • 鬼が笑うというように、来年の売り上げを心配しても仕方がないさ。
  • 私が来年結婚するかどうかなんて全くわからないし、鬼が笑うネタだと思わない?

「鬼が笑う」を使う時は、予想ができない先のことを話していることに対して使うのが適切です。ビジネスシーンではプラン通り着々と進んでいる計画や物事に対し、あれこれと施策や抱負を語ることもあるでしょう。このように、ある程度予測通りに事が進むと考えられるものごとに対しては、安易に「鬼が笑う」と濫用することは避けたほうが無難です。

「鬼が笑う」の語源と5つの由来

「鬼が笑う」の語源と由来について見てみましょう。「鬼が笑う」には5つの由来があると言われています。鬼はそもそも災害や飢饉などの「邪気」を形として表現したものですが、一体、どのようなものがあるのでしょうか?

「鬼が笑う」の語源は「京都いろはかるた」

多くのことわざは江戸や京都の「いろはかるた」が語源となるものが多いですが、「来年の事を言えば鬼が笑う」も「京都いろはかるた」が語源となります。

「鬼が笑う」の由来1:人間の愚かさを嘲笑う

しかめ面をした恐ろしい対象として知られるのが鬼ですが、その鬼が「笑う」とは本当に稀なことであるに違いありません。鬼は人間が「明日のことですら予想もつかないのに、遠い来年の話をしているとは、滑稽である」と馬鹿にして嘲笑ったという説があります。

「鬼が笑う」の由来2:人間の寿命を把握している

鬼は人間がどれくらい生きるか「寿命」を知っていると言い伝えられています。そして鬼は人間が来年まで生き延びないのに来年の話をしていることに「愚かだ」と嘲笑したという説です。

「鬼が笑う」の由来3:春分と秋分の日も計算できない

昔は春分と秋分を通り越すことを、暦を作るうえでの一つのポイントして解釈していました。しかし、これらを把握するのは難解な天文学を理解して複雑な計算をしなければならないため、年間の日付、つまり暦を作ることはとても難しかったと言われています。

そして鬼が「そのような賢くない人間が遠い来年の話をするなど、何事であろうか」と馬鹿にして笑ったという説です。

「鬼が笑う」の由来4:芽の出た豆が見つからない?

村に悪さをしていた鬼に対し、殿様が条件付きで鬼に村を襲わないように直談判したという説です。「もし芽の出た豆を見つけ出し、なおかつ村を襲わなかったら、殿様にしてあげよう。」という内容のものでした。

ちなみに、昔は年越しに行われていた豆まきの後、それらの豆から芽が出てしまうと災厄や飢饉などが起こると信じられていました。

そして鬼はやっと芽の出た豆を見つけましたが、その事実を殿様に伝えている間に「芽の出た豆」はなくなってしまったそうです。殿様は「来年があるじゃないか」と鬼を慰め、鬼がニッコリと笑ったという説です。

「鬼が笑う」の由来5:岩にぶつけて角が折れた?

ある日相撲取りが亡くなり、生前の取り決めで地獄に送られました。閻魔様に生前の行いを問われ「人々を楽しませるために、相撲を取っていた」と答えましたが「楽しそうだから、極楽に送ってあげよう。その前に相撲を見せてくれないか?」と頼んだそうです。

相撲取りは鬼と相撲を取ることになり、見事圧勝しましたが、鬼は投げ飛ばされた結果、岩に頭をぶつけて角を失ってしまいます。閻魔様は「来年になったら、新しい角がしっかり出てくるようにしてあげよう」と慰め、鬼がニッコリ笑ったという説です。

この5つの由来の中で最も有力視されているのは一番最初の「明日のことも分からぬのに、来年のことを話す人間は馬鹿げている」と嘲笑した説だとされています。

「鬼が笑う」類語と英語表現

「鬼が笑う」の類語と英語表現を見てみましょう。

「鬼が笑う」の類語は「三日先知れば長者」

「鬼が笑う」の類語には「明日の事を言えば鬼が笑う」を筆頭に、「三日先知れば長者」「一寸先は闇」などが挙げられるでしょう。

「明日の事を言えば鬼が笑う」は「明日のことすらわかないから、考えるのは馬鹿馬鹿しい」、「三日先知れば長者」は「先見の明がある人はほとんどいない(先のことなどわからない)」、また「一寸先は闇」は「ちょっと先の事でもわかり得ない」という意味があります。

「鬼が笑う」を英語表現は「nobody knows the tomorrow」

「鬼が笑う」を英語にする時は「An ogre laughs」と直訳しても意味が通じません。意義から捉えて「明日の事や来年の事は分からない」と考えると「nobody knows the tomorrow (future)=明日の事はわからない」という表現が最も適切です。

まとめ

「鬼が笑う」は「来年の事を話すと鬼が笑う」「明日の事を話すと鬼が笑う」などようにも使われることわざで「先のことを話すのは馬鹿げている」という意味があります。

ビジネスシーンではとくに金融や投資関連において明日の事、来月の事、さらに来年の事を予想するのは難しいものです。しかし、通常の職場では先のことを話すのは決して無駄なことではなく、むしろ必要なことでもあるでしょう。心配をし過ぎたり偏った意見に縛られないようにしながら、ある程度は先に対しての考えを持つようにしていきたいものです。