「上手・下手」の意味と由来は?舞台用語や序列による席の覚え方も

「上手・下手」は使う分野によって意味や読み方が変わる言葉です。「かみて・しもて」と読む場合は、主に方向を表す言葉になります。ライブやコンサート、演劇などの舞台用語として知られています。

その他、序列で座席が決まるマナーの面でも使われます。舞台用語を中心に、「上手・下手」の意味や由来、覚え方を説明しましょう。

「上手・下手」の意味とは

「上手・下手」の意味と読み方は分野で異なる

「上手・下手」は、分野によって意味や読み方が変わります。専門用語として知られているのは舞台用語です。舞台用語としての読み方は「上手(かみて)・下手(しもて)」で、他にも映像作品やマナー用語でも同じ読み方をします。

日常会話では「上手(うわて)・下手(したて)」や「上手(じょうず)・下手(へた)」という読み方がよく使われるでしょう。

「上手・下手」の「手」は方向を意味する

分野によって詳細は変わりますが、「上手(かみて)・下手(しもて)」と読む場合は、主に「方向」という意味です。

一般的に「上手(かみて)」は川上や風上などの「上の方向」を意味し、「下手(しもて)」はその反対側を意味します。ここでの「手」とは、方向を表すニュアンスで使われています。

方向の由来には「偉い人」が関係する説も

舞台用語として「上手」という場合、「演者から見て左側」が上手です。この由来は諸説ありますが、「東側に偉い人が座る」ことが一説にあります。

古代の日本では、東側に偉い人が座っていました。そして、照明がない時代は明るい南向きに舞台を作っていたため、東側は「演者から見て左」になります。そのため「偉い人が座る上等な席」として、そちらを「上手」と呼ぶようになったという説です。

他にも「歌舞伎の花道(役者の通り道)が演者から見て右側にあるため」という説があります。花道の側は落ち着いて見られないため、反対側が上等な席として上手になったという考えです。

「上手・下手」の舞台用語での意味・覚え方

「上手・下手」は舞台の左右を表す言葉

舞台用語の「上手・下手」は舞台やステージの左右を表す言葉で、読み方は「かみて・しもて」です。伝統芸能や演劇、ライブなどさまざまな舞台で使われています。

ステージに立って客席を見る「演者視点」では上手が左側、下手が右側です。観客の目線では逆になります。

「上手・下手」の覚え方

「上手・下手」の覚え方として有名なものが、音楽用語の「ピアニッシモ」を利用した覚え方です。本来ピアニッシモは「すごく弱く」という意味ですが、ここでは「ピアノ(が)シモ(=下手)」とすることで、下手を簡単に覚えられます。

ピアノはステージの下手に置かれることから「ピアノがある方が下手」です。「一般的な学校では体育館のステージにピアノがあるため、誰でも覚えやすいのでは」と考えられたのでしょう。

「上手・下手」を使う理由は演者・スタッフのため

「上手・下手」は日常的に使わない表現ため、「左右で表現しないのはなぜ?」と不思議に思う人もいるかもしれません。「左右」を使わないのは、演者やスタッフが混乱しないためです。

例えば、客席側から舞台をチェックするスタッフが「Aさんは右側にはけて(右側に退場して)」と言ったとします。この時、演者のAさんは自分の目線で右なのか、スタッフの目線で右なのか分かりません。

一方「上手・下手」の向きは常に固定されています。覚えてしまえば相手の場所や向きを考えずに「上手へはけて」と言えるようになります。

「上手・下手」どっちがいいかは演目や好みによる

演劇やライブのチケットを購入する際、座席を選べることがあります。その際「上手と下手、どっちがいいの?」と気になる人もいるようです。しかし、「どこが最適か」は演目や好みによって変わるため、常に同じ場所とは限りません。

例えば、好きな俳優やアイドルの立ち位置が決まっている場合、近い方の席が良いと言えるでしょう。歌舞伎の場合は、花道がある下手側の方が「花道での演技をじっくり見れて好き」だという人もいます。

「上手・下手」の映像作品での意味とは

「上手・下手」は視聴者目線で方向を表す

映像作品でも「上手・下手」が使われます。この場合の読み方は「かみて・しもて」です。完成した映像を見る視聴者の視点で、右側が上手、左側が下手になります。

上手は「未来」下手は「過去」という演出も

映像作品の演出では、上手・下手に特別な意味があると考えられています。上手が表すのは「未来」「ポジティブ」、下手が表すのは「過去」「ネガティブ」という演出です。

例えば、主人公が上手から下手へ歩いている場合、悲しい気持ちや過去を後悔しているニュアンスが含まれていることがあります。

「上手・下手」のマナーでの意味とは

序列によって「上手・下手」に座るか決まる

「上手・下手(かみて・しもて)」は、座席順のマナー用語としても使われています。日本では序列で座る場所が変わるのがマナーです。

もっとも偉い人が座る席を「上座(かみざ)」と呼び、序列が低い人の席は「下座(しもざ)」と呼ばれます。つまり、上座がある方向が「上手」、下座がある方向が「下手」になります。

上手(上座)は「入り口から遠い座席」が基本

基本的には「入り口からもっとも遠い席が上座」のため、上手も入り口から遠い席の方向になります。これは「入り口から遠い方が安全で快適なことが多いから」です。そのため、部屋の環境によって変動することがあります。

例えば、入り口側の方が窓からの眺めが美しい場合、入り口に近い席が上座になり得ます。「下手に案内された」と誤解されないよう、眺めがいいことを説明したうえで、席に案内しましょう。

「上手・下手」のその他の意味と使い方

「うわて・したて」という読み方での意味

「上手・下手」を「うわて・したて」と読む場合、「かみて・しもて」のように対で使われないことがあります。「上手(うわて)」とは「能力・思考が、別の人物より優れていること」という意味です。

一方「下手(したて)」とは「へりくだった態度で接すること」を意味します。へりくだっていることを卑下するニュアンスもあります。

「じょうず・へた」という読み方での意味

「上手・下手」を「じょうず・へた」と読むときは、「技術や動作の技量」を表現します。「上手(じょうず)」を使うのは技量が優れていること、「下手(へた)」を使うのは劣っていて人並みにできないときが多いです。

まとめ

「上手・下手」を舞台で使う場合、「演者視点で舞台の左側」を意味します。左右で表現しない理由は、演者やスタッフが混乱しないためです。マナーにおいて、上手は「上座」下手は「下座」がある方向を表します。序列や部屋の状況によって座る席が決まるため、ビジネスシーンで間違わないよう覚えておきましょう。