「抄訳」の意味とは?翻訳との違いや使い方と意訳・仮訳も解説

「抄訳」とは「原文から抜き出した一部を訳すること」という意味ですが、読み方がわかりにくい言葉ですよね。この記事では、「抄訳」の意味や読み方のほかに、「翻訳」との違いや使い方を解説します。また「意訳」「仮訳」「拙訳」などの「抄訳」と似た言葉の意味と違いについても解説します。

「抄訳」の意味とは?

抄訳とは「原文から抜き出して翻訳すること」

「抄訳」とは「原文から抜き出して翻訳すること」という意味があります。外国語で書かれた原文を日本語に翻訳すること、という意味で使われることが多いです。

「抄訳」の「抄」という漢字は「すくい取る」「書き写す」という意味のほか、「抜き書きをする」という意味があります。また「訳」は「他の言語に書き換えること」という意味です。

「抄訳」の読み方は「しょうやく」

「抄訳」は「しょうやく」と読みます。「抄訳」は読み方の難しい言葉のひとつで、「みょうやく」や「さやく」などの誤読が多いので気をつけましょう。

「抄訳」は英語で「abridged translation」

「抄訳」は英語で「abridged translation」です。「abridged」とは「要約された」または「短縮した」という意味で、「translation」は「翻訳」です。

「抄訳」の動詞形「抄訳する」は端的に表現する英語表現はないので、意訳して「translate selected important points from~(~から選んだ重要箇所を翻訳する)」などのような英語表現になります。

「抄訳」の英語例文
  • “Please give me the abridged translation of this material as soon as possible.”
    「この資料の抄訳を至急届けてください」
  • “This is an abridged version of the novel.”
    「これは抄訳版の小説です」

「抄訳」と「翻訳」の違いとは?

抄訳と翻訳の違いは「原文の一部の翻訳か翻訳そのもの」

「抄訳」と「翻訳」の違いとは、原文の一部を翻訳するのか、翻訳行為そのものを指すかという点にあります。

「抄訳」は、原文の一部を抜き取って翻訳するという意味に対して、「翻訳」とは「翻訳するという行為」「翻訳されたもの」という意味です。つまり、「翻訳」は原文のどの部分を翻訳するのかということは問題ではありません。

「翻訳」とは「他の言語に書き換えること」

「翻訳(ほんやく)」とは「ある言語で書かれたものを他の言語に書き換えること」という意味です。また「他の言語に書き換えられたもの」を指すこともあります。

この本来の「翻訳」の意味から派生して、「翻訳」には「わかりにくい表現や言葉などをわかりやすく書き換えること」や、コンピューターのプログラミングでは「高級言語から機械語へと変換すること」という意味もあります。

「抄訳」の使い方と例文

「抄訳する」のように動詞として使う

「抄訳」はその行為を指して「抄訳する」のように動詞として使えます。「抄訳」をする状態や動作を表現するときには「抄訳する」を使うと自然な表現になります。

「抄訳する」の例文
  • 原作本は長すぎるから、抄訳するのが良さそうだ
  • 子どもには、抄訳した小説のほうがわかりやすかった

「抄訳版」とは「原作本を抄訳した版」のこと

「抄訳版」とは「外国語で書かれた著作を抄訳した版」のことです。「抄訳版」と呼ばれる本の多くは、原作本の一部を抜粋して翻訳して、全訳よりも短くしてあらすじをわかるようにまとめられています。

抄訳版が作られる理由にはいろいろありますが、例えば、原作本が長いため、または児童文学としては不適切だと考えらえる残酷な描写があるので省略するためなどが挙げられます。

「抄訳」と類語・似た言葉の違いとは?

「意訳」とは「原文全体の意味から翻訳すること」

「意訳」とは「原文全体の意味から翻訳すること」という意味です。意訳も抄訳のように翻訳することですが、「意訳」では文章を構成する言葉一つ一つの意味にとらわれるのではなく、文章全体から意味をすくい取って訳します。また、抄訳のように翻訳する箇所を限定しません。

「拙訳」とは「下手な翻訳」

「拙訳(せつやく)」とは「下手な翻訳や訳文」のことです。拙訳の「拙」とは「つたないこと」や「劣っていること」という意味で、「拙訳」では「他の役と比べるとよくない、劣った訳」という意味になります。

また自分が翻訳した文を謙遜して「拙訳」と言うこともあります。

「拙訳」の例文

拙訳ですが読んでいただけますか

「仮訳」とは「仮に訳すこと」

「仮訳」とは「正式の翻訳のまえに訳される仮の翻訳またはその訳文」のことです。「仮訳」という言葉は、書類などを翻訳してその訳文が最終稿ではないときの文章を指しています。類語に「試訳」や「トライアル」があります。

「抄出」とは「抜き出して書くこと」

「抄出(しょうしゅつ)」とは「抜き出して書くこと」という意味の言葉です。必要とするところを原文から抜き出し書くことで、その類語には「抜き書き」や「抜粋」があります。

「抄出」には「抄訳」のように翻訳するという意味はありませんから、原文から抜き書きだけをして別の言葉に置き換えることがない時には「抄出」を使います。

「抄訳」の対義語とは?

「抄訳」の対義語は「完訳」「全訳」

「抄訳」の対義語は「完訳」または「全訳」です。「完訳」と「全訳」とは「原文を省略することなくすべての文を翻訳すること」という意味です。

「抄訳」が「原文の一部を翻訳すること」という意味に対して、「完訳」と「全訳」が「全文を翻訳すること」ですから、「完訳」と「全訳」は「抄訳」の対義語になります。

対義語「完訳」の英語訳と例文

「抄訳」の対義語「完訳」の英語訳は、「abridged(要約された)」の否定形を使って「unabridged translation」とします。また、「complete」を使って「complete translation」という表現も可能です。

例文

“This is a complete translation of the novel.”
「これはその小説の完訳です」

まとめ

「抄訳(しょうやく)」とは「原文の一部を翻訳すること」という意味の言葉です。その反対語で、全文を翻訳すること、またはその訳文は、「完訳」または「全訳」と言います。「意訳」や「拙訳」などどの言葉も翻訳するという意味で共通していますが、その訳され方によって使い分けられます。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。