「琴線に触れる」の意味と語源とは?正しい使い方と類語・対義語も

「琴線に触れる(きんせんにふれる)」という言葉は、美しい意味を持ちつつも、誤用をしやすい表現の一つです。ここでは「琴線に触れる」の意味と使い方を中心に、誤用の例、類語と対義語、英語表現を交えて解説しています。

「琴線に触れる」とは?

「琴線に触れる」の意味は「人の心の奥にまで届き、感動させること」

「琴線に触れる」の意味は、「人の心の奥にまで届き、感動させること」です。人によって感動する度合いや量は変わってきますが、ここでいう感動や共鳴とは「大きくて強い」ものを指しています。

日々の生活で心の底から感動したり、強く共鳴することは案外少ないものです。だからこそ、「琴線に触れる」という言葉を使った時に「どれほど素晴らしい感動や共鳴を与えることができたか」を伝えることができます。

「琴線に触れる」は和楽器の「琴(こと)」を使った言葉

「琴線に触れる」は、美しい音色を奏でる伝統楽器「琴」を使った言葉です。琴は糸に触れると、優雅で心に響くような素晴らしい音を出してくれます。この状況が「琴線に触れる」という言葉が生まれる背景につながっているのです。

「琴線に触れる」の語源は中国「列子」

「琴線に触れる」は中国・周の時代に生まれた故事が語源だとされています。中国の漢文『列子』には「琴の音色を聴いている耳は、まるで私の心の中のようである」という文章が示されています。

現在でも、中国では心の奥や心情を「琴の糸」になぞらえて、目に見えることのない感動や共鳴を表します。

「琴線に触れる」の読み方は「きんせんにふれる」

「琴線に触れる」の正しいよう味方は「きんせんにふれる」です。「ことせんにふれる」と読まないように注意してください。

「琴線に触れる」の使い方と例文とは?

「琴線に触れる」は大きな感動に使う

「琴線に触れる」は普段の生活で得るような小さな感動とは違い、大きく心が動き、深く共鳴した状況で使うのがベストです。もちろん四葉のクローバーを見つけるのも「感動的」ですが、もっと大きく心の底から感動した場面に使うのが適切だと言えるでしょう。

「琴線に触れる」を使った例文

「琴線に触れる」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 久しぶりに上司から涙のでるような励ましの言葉があった。琴線に触れるとはこのことだ。
  • 琴線に触れたのは、幼い子供が声を枯らしながら募金活動をしていたのを見た時だ。

「怒りに触れる」「逆鱗に触れる」との誤解に注意

「琴線に触れる」は本来の言葉の意味とは裏腹に、「逆鱗に触れる」「怒りに触れる」などと誤解されることが多いようです。とくにビジネスシーンでは「相手の琴線に触れるようなことだけはするな」というように誤用しないように注意して下さい。

もちろん、「触れるべきではない話題に触れる」という解釈も誤りです。

「琴線に触れる」類語と対義語は?

「琴線に触れる」の類語は「感動する」「胸を打つ」

「琴線に触れる」の類語は「感動する」「胸を打つ」「心に響く」「心を揺さぶられる」などがあります。「感動する」や「胸を打つ」は心が強く動き感嘆する様子で、感動したことをストレートに表現したいときにはわかりやすいでしょう。

また「心に響く」や「心が揺さぶられる」は、心に深く感じ感銘を受ける様子を表しています。心がどう動いたのかを表す言い換え表現です。

「琴線に触れる」の対義語は「馬鹿馬鹿しい」「無関心」

一方「琴線に触れる」と反対の意味を持つ対義語は、心が動かない様子や共鳴しないことを表す「馬鹿馬鹿しい」「無関心」「無感動」「感銘のない」などがあります。

「琴線に触れる」は英語で何という?

英語表現は「I’m struck by」

英語で「琴線に触れる」を表現するときは、少しの感動ではなく「心に衝撃が走る」というような意味を持つ「I’m struck by」を使うと良いでしょう。

「I’m struck by」を使った英語短文

「I’m struck by」を使って短文を作ってみましょう。

  • I’m struck by my father’s words.
    父の言葉が琴線に触れた。
  • I have found the music where I’m struck by.
    琴線に触れるような素晴らしい音楽に出会った。

まとめ

「琴線に触れる」は「きんせんにふれる」と読み、意味は「人の心の奥に届き、心情に触れ感動させること、共鳴を与えること」となります。言葉の誤用が多いため、「逆鱗に触れる」「怒りに触れる」などと混同しないように注意して下さい。

社会人になると、さまざまな状況に遭遇し、いろいろな地位や立場の人との交流があるものです。「琴線に触れる」ような出来事と多く出会い、数多くの感動を経験していきましょう。