「ズバリ」と言いたくなるような発言に対し「的を射る」という言葉を使うことがあります。知らず知らずのうちに放つ表現ですが、言葉の意味や使い方に不安を感じる人もいるでしょう。
ここでは「的を射る」の意味と使い方を中心に、似た言葉である「的を得る」「当を得る」との違い、類語と英語表現についてまとめています。使い方の例文や語源と併せて参考になれば幸いです。
「的を射る」の意味と似た言葉との違い
さっそく「的を射る」の意味と、「的を得る」「当を得る」との違いから見てみましょう。
意味は「ことの要点をついているさま」
「的を射る」の意味は、「ことの要点を正確についている」です。誰かが話をしている時に、核心を突くような鋭い意見を発したら、それは「的を射る発言」と言えるでしょう。
「的を得る」「当を得る」との違い
「的を射る」と似たような言葉に「的を得る(まとをえる)」がありますが、どちらも「上手に要点をつかむ」「ものごとを的確に捉える」という意味合いのある言葉です。
「的を得る」は辞書にも掲載されている慣用句ですが、以前は誤用として認識されていた経緯があるため、講演会やスピーチ、またはメディアなどで使う時は「的を得る」ではなく「的を射る」を使う傾向が強いです。その逆に、日常的には「的を得る」を好んで使う人が多いと言われています。
また「当を得る」は「道理に沿っている」「人が多なうべき道にかなっている」という意味で使われるため、「ものごとを的確に捉える」という意味の「的を射る」とはニュアンスが異なってきます。
「的を射る」の使い方と例文
それでは「的を射る」の使い方と例文についてみてみましょう。
「的を得る」と混同しないように使う
「的を射る」の使い方で気を付けたいことは、現在でも「的を射る」「的を得る」の正誤に対しては議論点があるということです。日常生活においては「的を得る(まとをえる)」を「的を射る(まとをいる)」という意味合いで使っている人は多く、実際に「的を射る」と同じ意味で問題なく通じています。
しかし、前述したように世間一般に流れるメディアや学術論文など、一般的に正式な場面と言われるシーンでは「的を射る」が正しいとされているのが現状です。この点だけ留意をして、会話や文章に用いるようにして下さい。
「的を射る」を使った例文
「的を射る」を使ったわかりやすい例文を挙げてみます。
- 課長の新商品の説明は的を射ている。
- 的を射た発言は、周囲の表情を一気に変えた。
- 必ずしも的を射た解釈とは言えないが、全体像はしっかり掴めているだろう。
- 的を射た行動をすれば、無駄なく効果的に時間を過ごすことができると思う。
「的を射る」の類語は?
「的を射る」の類語にあたる言葉を挙げてみましょう。
類語①「正鵠を射る」「的中した」
「的を射る」の類語には「正鵠を射る(せいこくをいる)」「的中した」「核心をついた」「大当たりの」「ズバリの」などがあります。中でも「正鵠を射るは「ものごとの要点や狙いどころを的確につかむ」という意味があり「的を射る」とほぼ同じ使い方をすることが多いでしょう。
ちなみに「正鵠を射る」は「的を射る」から派生した言葉で、昭和に入ってから生まれたと言われています。「正鵠」とは的の中心部のことで、「ものごとの核心」という比喩的な対象として用いられるようになりました。
類語②「看破した」「見抜いた」
また、「要点やポイントを外さず正確につく」という意義の類語なら「看破した」「見抜いた」「ポイントを突いた」「ツボを外さない」「鋭い」などが挙げられます。それぞれ「的を射る」の類語になりますが、言い換えが必要な時は微妙なニュアンスの違いに注目し、適切な一語を選ぶようにしましょう。
「的を射る」の英語表現
最後に「的を射る」の英語表現について紹介します。
英語では「hit the nail on the head」
「的を射る」を英語で表現する時は「頭の上の釘を打つ」という意味の「hit the nail on the head」を使います。「核心や要点を突く」という意味で慣用句としてビジネスでも使われる言葉です。
「的を射る」を使った英語例文
「的を射る」の簡単な英語例文を挙げてみます。
- That’s it! You just hit the nail on the head.
その通り。的を射る意見だ。 - I got the idea from one of my college that was absolutely hitting the nail on the head.
ズバリ、同僚から的を射る発言を聞くことができた。
まとめ
「的を射る」は「要点を正確についている」という意味のある言葉です。日常的には同じ意味を持つ「的を得る(まとをえる」という表現を使うことが多いですが、メディアや講演会などでは「的を射る(まとをいる)」を使う傾向があります。これは、かつて「的を得る(まとをえる)」という言い回しが間違いであると認識されていたからです。
ビジネスシーンではメールやビジネス文書、重要な会議やプレゼンなどでは「的を射る(まとをいる)」を使ったほうが無難だと言えますが、環境に応じて柔軟に使い分けをするようにしてみて下さい。