「由々しき」とは「そのままだと大変なことになるかもしれない」という意味で、物事の重大さを強調するときに使われます。でも「忌々しき」とも書かれることもあり、どの漢字が正しいのでしょうか。
今回は、「由々しき」の意味や「忌々しき」との違い、語源のほかに「由々しき」の使い方と類義語も解説します。
「由々しき」の意味と語源
「由々しき」とは「大変なことになるかもしれない」
「由々しき」とは「そのままにしておくと大変なことになるかもしれない」「問題が大きくなるかもしれない」という意味の形容詞です。「由々しき」の後には、名詞や代名詞などの体言が続きます。
悪い意味合いで使われるのが一般的で、そのままにしておくと事態や問題、状況などが悪化して、大変なことになると予想される場合に使われます。
「由々しき」は「由々しい」の連体形
「由々しき」は「由々しい」という言葉の連体形です。「由々しい」は形容詞でシク活用をしますので、「由々しい」が名詞などの体言の前にくるときに「由々しい」が「由々しき」と変化します。
「由々しき」の読み方は「ゆゆしき」
「由々しき」は「ゆゆしき」と読みます。「由」という漢字は「ゆう」という音読みもありますが、「由々しき」では「ゆ」のように延ばさず発音します。
「由々しき」の語源は古語「ゆゆし」
「由々しき」の語源は古語の「ゆゆし」です。「ゆゆし」には、次のような意味があります。
- 神聖で恐れ多い
- 不吉だ。いまわしい。
- 程度がはなはだしい。ひととおりではない。
- すばらしい。立派だ。
「ゆゆし」という言葉は本来「斎」という漢字を使って書き表し、「神聖なこと」という意味でした。神聖ゆえに、手を触れたりすれば恐ろしいことが起こると信じられて「不吉」という意味が派生しました。そのため「ゆゆし」には、神聖で恐れ多いや不吉だという意味があります。
「由々しき」の語源は「ゆゆし」ですが、「由々しき」には「すばらしい」といったポジティブな意味はなく、「ゆゆし」のネガティブな意味だけを引き継いでいます。
「由々しき」と「忌々しき」との違い
「忌々しき」は「由々しき」の文語の表現
「忌々しき」は「由々しき」の文語表現です。そのため、現代の公用文や新聞などには「由々しき」が多く使われています。しかし「忌々しき」も間違いではありませんので、今でも使われることもあります。
「忌」の意味は「喪中や命日」
「忌」とは、喪中や命日を意味しています。音読みは「き」なのですが、「忌々しき」と書き「ゆゆしき」と読まれています。常用漢字表には「忌」を「ゆ」と読むように記載されていないことから、当て字として「由」が使われるようになりました。
「由々しき」の使い方と例文
「由々しき事態」など状況が悪化する恐れがある場合に使われる
「由々しき」という言葉は、このまま放っておくと状況が悪化してよくない方向に行くだろうと思われるときに使われます。そのため「由々しき」は、問題や大事、状況などの言葉と結びつくことが多いです。
例えば「由々しき事態」では、「その事態はそのままにしておくと大変なことになる恐れがある大変な状態」という意味を表しています。
「由々しき」を使った例文
- 投票率が前回の選挙よりもさらに低くなったことは、由々しき事態だ。
- 社員の怠慢は、生産性だけでなく他の社員へのモチベーションを喪失させる可能性がある由々しき問題だ
- この由々しき状況を解消するために、すぐに対策を立てる必要がある
- 由々しき国家の大事だからこそ、冷静な判断が必須だ
「由々しき」の類義語や言い換え表現
「由々しき」の類語は「大事の」や「一大事の」
「大事の」とは「重大な出来事や事態」という意味で、「一大事の」は「そのままにしておけない重大な出来事や事態」という意味です。
「大事の」と「一大事の」ではどちらも「重大な」という意味が含まれているのですが、「一大事の」の方が「大事の」よりもその出来事や事態がより深刻である場合に使われます。
「由々しき」で形容される出来事や事態が重大だと思われる場合には「大事の」に言い換えて、その重大さを強調したいときには「一大事の」で言い換えるといいでしょう。
- 大事の事態で、現在は情報収集に努めている
- 一大事の事態で、すぐにでも警報を出すか判断を迫られる
「大変な」も「由々しき」の類語
「由々しき」の程度がはなはだしい、尋常ではないという意味で使われているときは、「大変な」で言い換えられます。「大変な」とは「重大」という意味の他にも、「普通ではない」「並ではない」という意味もあります。
大変な事態になり、困惑している
「由々しき」の英語表現
「由々しき」は英語で「terrible」や「serious」
「由々しき」を英語では「terrible」や「serious」です。「terrible」と「serious」は両方とも、あることが「ひどい」「すごい」「大変な」という意味なのですが、「terrible」はそのままにしておくと恐怖や危険性が出てくると思われるという事態に使われます。一方、「serious」は全く冗談などが含まれず、その事態の深刻さが強調されるときに使われます。
「由々しき」の英語例文
- ”This is really something terrible.”
「これは由々しきことだ」 - “His awful speech caused a serious situation.”
「彼のひどい発言が由々しき状況を引き起こした」
まとめ
「由々しき」とは「そのままにしておくと大変なことになるかもしれない」という意味で、事態や問題が悪化して困ったことになると予想されるときに使われる言葉です。「忌々しき」とも書かれますが、一般的には「由々しき」が使われています。