「手水」の読み方や作法・やり方とは?「花手水」やトイレの意味も

「手水」とは、神社や寺院に参拝する前に手と口を水ですすぎ清めることです。事前に一般的なやり方・作法を覚えておけば、スマートに参拝できるでしょう。「なぜ読み方が複数あるのか」「コロナ禍で人気になった花手水とはなにか」などとあわせて説明します。また、参拝に関すること以外の「手水」の意味も紹介しましょう。

「手水」の意味や読み方とは

「手水」の意味とは「参拝前に手・口を清めること」

「手水」の意味とは「神社・寺院を参拝する前に手や口をすすぐ水、またはその行為」です。「手水を使う」「手水をとる」などと表現します。手水は、神様や仏様に会う前に行う重要な準備だとされています。手と口をすすぐことで、魂を清めることになるためです。

「手水」は「手を洗う水」「洗ったあとに手についた水」という意味でも用いられていました。そのほかの意味や方言については後ほど紹介します。

「手水」の読み方は「ちょうず」「てみず」

「手水」の読み方は「ちょうず」または「てみず」です。現在では「ちょうず」の方が一般的ですが、寺院によっては「てみず」を使っています。また、「てみず」をメインの読み方とする辞書もあります。

複数の読み方がある理由は「音の変化が起きたため」です。本来は「てみず」と読んでいましたが、次第に「てうず」→「ちょうず」と音が変わりました。

「手水」の由来は「神道の禊」

「手水」の由来は「神道の禊(みそぎ)」です。禊とは、穢れ(けがれ)を落としたいときに、川などで体を洗うことです。罪や穢れを清めることが目的になります。

かつては、神社へ入る前に川で禊をしていました。しかし、汚い川が増えたことで禊が困難になったため、境内できれいな水を使い手水を使うようになりました。

「手水」のやり方や作法とは

「手水」の一般的なやり方

寺社や地域によって差がありますが、一般的な手水のやり方を紹介します。

  1. 最初に洗うのは手です。左手→右手の順番で、柄杓で水をかけて洗いましょう。
  2. 右手に柄杓を持ち変えて左の手のひらに水を溜めます。溜めた水で、音を立てずに口をゆすぎましょう。その後は左手をもう一度洗います。
  3. 最後に柄杓を傾けて、椀の水を柄にかけて洗います。次に柄杓を使う人がきれいな状態で使うためです。

「手水」は形に囚われないことも大切

「手水」は身を清める重要な作法です。しかし、やり方ばかり気にして心が伴っていないのは本末転倒だといえます。心を込めて行いましょう。

手水のような作法は、動作を通じて神仏を敬う心を成熟させることが大切だと言われています。

「手水」の作法は神社も寺も同じ

「手水」は神社でも寺社でも行います。基本的な作法は同じです。ただし、前述した通り寺社や地域によって違う可能性もあります。心配な場合は、先に確認してから手水をとるとよいでしょう。

「手水」の関連用語

「手水舎」とは手水を使うための施設

「手水舎」とは、手水を使うための施設のことです。読み方は複数あり、手水を「ちょうず」と読む場合は「ちょうずや」「ちょうずしゃ」です。「てみず」と読む場合は「てみずや」「てみずしゃ」になります。

一般的には、壁の無い小屋のような建物で、水盤(水を張る鉢)に柄杓が置かれています。

「花手水」とはもともと水を使わない手水

本来の「花手水」とは、手水舎がない野外の神事で水を使わずに手水することです。花で手をこすって手水をします。

花だけでなく草木や雪で行うこともあるため、「芝手水」「草手水」「雪手水」とも呼ばれます。

「花手水」は紫陽花を浮かべた手水舎を表すことも

コロナ禍で「花手水」に新しい意味が増えています。手水舎や水盤を花で飾る、フラワーアートの一種を意味する言葉として用いられることが増えました。

元々は京都の寺社で行われていましたが、コロナ禍をきっかけに、全国へ広まりつつあります。手水舎の使用を、感染拡大防止のために中止しているためです。使われなくなった手水舎を紫陽花(あじさい)などの花で飾っています。

花手水を行う理由は寺社によって異なります。代表的なものは「コロナ収束を祈って」「参拝客に喜んでほしい」「廃棄される花の有効活用」などです。

「手水」のその他の意味と使い方

「手水」はトイレの別名でもある

現在ではあまり使われることはありませんが、「手水」はトイレ(便所)の別名としても使われていました。理由は、「手水」にもともと「手を洗う水」という意味もあるためです。トイレの後には手を洗うことから「手水=トイレ」になりました。

「手水廻し」は「手水」がテーマの落語

「手水廻し」とは「手水」がテーマの落語です。ここでの「手水」に参拝は関係ありません。大阪方面の方言で、起床してから顔を洗うことやその道具一式を意味します。落語家によってアレンジすることはありますが、一般的な内容を紹介しましょう。

大阪から来た客が宿屋で「こっちに手水を廻して(洗顔道具を貸して)」と言いました。この方言が誰にも通じなかったことで騒動がおき、客は怒って帰ってしまいます。店主は「手水を廻す」の意味を知るために大阪に向かいますが、そこで素直に聞かなかったことから失敗してしまうという滑稽な話です。

まとめ

「手水」は長い歴史を持つ作法です。近年では「花手水」に新しい意味が増え、華やかなフラワーアートとしてSNSを賑わせています。伝統的な作法も新しい意味も、どちらも押さえておきましょう。