「脚色」とは「脚本に書き改めること」という意味の言葉でよく使われていますが、ほかにも意味があり、また競馬でも使われていることをご存知でしょうか。
この記事は「脚色」の意味や読み方のほかに、語源と使い方などを解説します。また「脚色」の類語と書き換え表現や、対義語なども紹介します。
「脚色」の意味と読み方とは?
「脚色」とは「脚本に書き改めること」
「脚色」とは、「小説や物語、ドキュメントなどの素材を使って、演劇やドラマ、映画用の脚本に書き換えること」という意味です。どのような素材を使っても構わないのですが、それを上演または上映用の脚本として書き改めることを指しています。
「脚色」には「粉飾を加えること」という意味も
「脚色」には「粉飾を加えること」という意味もあります。あることを比喩的により面白く伝えるために付け加えることを指しています。
この「粉飾を加えること」という意味は、脚色の本来の意味である「脚本にすること」に、脚色の「色」という言葉の意味が強調された結果、派生した意味です。
脚色の読み方は「きゃくしょく」
「脚色」は「きゃくしょく」と読みます。しかし明治初期までは「脚色」は漢語を由来としていたため「きゃくしき」と読まれていました。しかし、明治後期頃からは「きゃくしき」から「きゃくしょく」と読み方が変わりました。
競馬では「脚色」とは「馬が走っているときの足の運び具合」
「脚色」は競馬の専門用語としても使われていて、その意味は「馬が走っているときの足の運び具合」です。馬の走り方、走りっぷりを指して使われて、その読み方は「あしいろ」です。
- あの馬の足色が良いので、今日は勝てるかもしれない
- あの馬は足色が悪いので、今日は勝てないかも
「脚色」の語源と英語表現
「脚色」の語源は「古代中国の身分証明書」
「脚色」は古代中国で「提出された身分証明書や履歴書」という意味でした。「脚色」により、その人の出自などを明らかにしました。その後、中国の演劇界で、役柄や俳優の役割を解説するものや芝居の筋書きを「脚色」と呼ぶようになりました。
演劇用語の「脚色」が中国から日本に伝わる
「脚色」という言葉は、演劇用語として中国から日本へと伝得られると、日本では「役柄やコスチューム、または演劇の仕組み書」として「脚本」という言葉が使われるようになりました。それから、現代で使われているような「脚本として書き改めること」という意味でも使われるようになりました。
「脚色」は英語で「dramatization」
「脚色」の英語表現は「dramatization」です。「脚色する」という意味の「dramatize」から派生した単語で、日本語の「ドラマ」の語源です。「dramatization」とは「ドラマにすること」、つまり「脚色すること」という意味の英単語です。
- “This dramatization includes time alteration and fictionalized characters.
「この脚色には時間の改編や架空の人物が含まれている」 - “The TV-series present a fictional dramatization of the real stories.”
「テレビシリーズは、実話をフィクションとしてドラマ化したものです」
「脚色」と「脚本」「話を盛る」の違いとは?
「脚色」と「脚本」とは脚本化することと成果物の違い
「脚色」と「脚本」の違いとは、脚本化するという行為そのものと脚本そのものとの違いです。「脚色」は上演または上映用の脚本としてお話などを書き改めることですが、「脚本」は脚本化された本そのものを指しています。
「脚色する」と「話を盛る」の違いは粉飾か誇張かの違い
「脚色する」と「話を盛る」では、話を面白く伝えようとするときの伝え方に違いがあります。
「話を盛る」とは、「実際の内容を誇張して大げさに言うこと」という意味です。「脚色する」と「話を盛る」では、どちらも語り手は相手にその内容をおもしろく伝えようとする気持ちがあることに変わりません。しかし「話を盛る」では「元の話に別の要素を付け加えて大げさに言う」のに対して、「脚色」はおもしろく伝えるためなら「大げさに言うこと」以外の別の要素を加えたときにも使える言葉です。
「脚色」の使い方と例文
「脚色を加える」とは「潤色すること」という意味の言い回し
「脚色を加える」とは「潤色すること」という意味の言い回しです。実際の内容よりも誇張してより面白い話にするという意味で使われます。
事実をそのまま伝えても面白みが足りない。脚色を加えてもっとエンターテイメントにしよう。
「話しを脚色する」で実際の内容よりもおもしろくすること
「話しを脚色する」という言い回しは、「実際の内容よりもおもしろくすること」という意味で使われています。実際の内容に何か別の要素を付け加えたり、時には誇張したりすることで、その内容をおもしろく伝えることを指しています。
彼は実際の話を脚色していたよ。本当はそれほどドラマチックじゃなかったよ
「脚色は衰えない」とは競馬で馬の足並みが崩れないこと
「脚色は衰えない」は競馬で使われる言い回しで、「馬の足並みが崩れないこと」という意味です。走っている馬の姿から、まだスタミナが残っていて走りが遅くなっていない様子を指しています。この場合は「脚色」は「あしいろ」と読むので注意しましょう。
まだ脚色は衰えていないぞ。そのままゴールまで突っ走ってくれ!
「脚色」の類語・言い換え表現と対義語
「脚色」の類語は「劇化」
「劇化」とは、「物語や小説、出来事などを劇にすること」という意味で、「脚色」の類語です。「脚色」との違いは、「劇化」は「主に演劇用に劇にすること」を指しているのに対して、「脚色」は演劇の他にも映画やテレビの放送用など、媒体に拘わらず脚本(シナリオ、台本)として書き改められることを指しています。
「脚色する」は「大げさに言う」と言い換えられる
「脚色する」は話を面白く伝えるために粉飾するという意味で使われたときには、「大げさに言う」と言い換えられます。「大げさに言う」とは「実際の内容以上に誇張して言うこと」という意味です。
「脚色」の対義語は「原作」
「原作」とは「脚色の基にした著作や作品」という意味で、「脚色」の対義語です。「脚色」は原作となる作品を書き換えて脚本化したり、原作を粉飾することという意味です。
まとめ
「脚色」とは「きゃくしょく」と読み、「脚本として話などと書き改めること」という意味と、「話を粉飾すること」という意味があります。「脚色」が競馬で使われるときには「馬の足並み」という意味なり、読み方も「あしいろ」と変わります。