「社長にゲキをもらったよ」などと使われがちな「ゲキを飛ばす」という言葉があります。何となく「発破をかけられた」と意味で使っていませんか?しかし正しくは「檄」という字を使い、意味も異なります。今回はとても間違いやすい「檄を飛ばす」の意味や語源、例文もご紹介しますので参考にしてみてくださいね。
「檄を飛ばす」の意味・由来・語源は?
「檄を飛ばす」を「激を飛ばす」と勘違いしていた、という人は多いでしょう。どちらも読みは同じですし、「檄」と「激」は字も似ていますが、漢字が違うだけではありません。まずは「檄を飛ばす」という言葉について、正しく認識しておきましょう。
「檄を飛ばす」の意味は「主張を知らせて同意を得る」
「檄を飛ばす」の意味は、「主張を知らせて、同意を得る」です。イメージとしては、ある人が複数名に向けて自身の主張をし、その主張に同意を促す行為です。「お知らせ」よりも主張する気持ちが強く、賛同をしてほしい気持ちが強い言葉です。
相手が一人のときに「檄を飛ばす」が使えないわけではありませんが、言葉が持つ「主張を知らせて同意を得る」という目的が、やや複数名をイメージさせることから、相手が一人の場合には「知らせる」「伝える」などが使われています。
「檄を飛ばす」の由来は中国、語源は「飛檄」
「檄を飛ばす」という言葉の由来は中国にあると言われています。古代中国では、人々に伝えたいことや賛同を得たいことがあった場合に木札に文章を書いて人々へ回覧しました。この木札を「檄文(げきぶん)」。檄文を遠くに住む人にまで届くように発することを「飛檄」と言いました。
つまり木札そのものを「檄」とし、「檄を飛ばす」という意味です。この「飛檄」から「檄を飛ばす」という言葉ができています。
「檄を飛ばす」の例文
「檄を飛ばす」が本来の意味で使われている例文
実際に「檄を飛ばす」が本来の意味で使われている例文をご紹介します。いずれの例文も、イメージによっては、激励の意味に捉えることもできますが、そこが「檄を飛ばす」の間違えやすいところです。「知らせて、賛同を得ようとしている」という、発言者の気持ちに注目しましょう。
・新入社員への「檄」
「社長は入社式で「自社の成長に必要なものは人である」と檄を飛ばした」
・教師から生徒への「檄」
「私は教師として、生徒たちに「時間を大切に使うように」と檄を飛ばした」
・父から家族への「檄」
「父は家族に「自分の責任を取れる人間になって欲しい」と檄を飛ばした」
・総理大臣から国民への「檄」
「総理大臣は外交の重要性について檄を飛ばした」
「檄を飛ばす」の類語と誤用例
類語は「檄文を回す」「声明を出す」
「檄を飛ばす」を他の言い方に変えるのであれば「檄文を回す」「声明を出す」などです。多少ニュアンスは異なりますが、いずれも「自分の意見を広く伝えて、賛同を求める」という趣旨に変わりはありません。多少固い言葉となるため、日常で使われることは少ないでしょう。
日常的に使われる、意味の近い言葉は「報告」「通告」などです。しかし、これらの言葉では「主張を知らせる」ということしか表すことができません。「同意を得る」という部分については別の言葉を付け足す必要があります。
「檄をもらう」は基本的には使わない
「檄をもらう」「檄をいただく」など、檄を飛ばされた側からの表現に「檄」が使われることはほとんどありません。これは「檄」という言葉を考えてみると感じられるものですが、基本的に「檄」はもらうだけではなく、賛同をするまたは賛同をしない、という何らかのアクションや気持ちの変化が必要な言葉です。そのため「ご意見をいただいた」「ご指導をくださった」などの表現が妥当でしょう。
間違いやすい「激を飛ばす」との違い
「”激”を飛ばす」は本来の意味では誤り
「檄を飛ばす」が「激を飛ばす」と勘違いして使われていることがあります。主には、誰かを激励したり、熱く指導する場面です。比較的高い温度で発せられる「激励」「激高」などの言葉に影響されていることが多いでしょう。一般的に「激を飛ばす」という言葉に違和感を持っていない人は多く、それほど「激を飛ばす」という言葉は多く使われているのです。
「激を飛ばす」を受け入れる人もいる
言葉は時代と共に変化していきます。少し前なら受け入れられなかった言葉も、使う人が多ければいつの間にか「言葉」として市民権を得ることもあるからです。「激を飛ばす」も同じで、言葉としては存在しないものであっても、その行為自体がポジティブに捉えられることが多く、結果として「激を飛ばす」という言葉が本来は存在しない言葉だったと認識していても、意味を理解して受け入れる人は多いでしょう。
まとめ
「檄を飛ばす」という言葉が使われるのは、普段よりも改まった場であったり、背筋が伸びるような緊張感の中であることが多いでしょう。「檄を飛ばす」という言葉を正しく理解することで、言葉を発する人の想いの強さや温度を正確に受け止めることができます。自分の想いの中にあるものが「檄」に当てはまると感じたときに、ぜひ使ってみてください。