ことわざには「鬼」を含むものが多くあります。有名なものは「鬼の目にも涙」「鬼の居ぬ間に洗濯」などです。また「刀下の鬼となる」や「鬼の霍乱」のように響きがかっこいい言葉もありますが、意味を意外に感じる人もいるかもしれません。「鬼」を含むことわざの代表的なものを紹介しましょう。
「鬼」を含むことわざとは?
「鬼」を含むことわざ一覧
- 鬼の首を取ったよう(おにのくびをとったよう)
- 鬼に金棒(おににかなぼう)
- 鬼の霍乱(おにのかくらん)
- 鬼を欺く(おにをあざむく)
- 鬼も角折る(おにもつのおる)
- 鬼の空念仏(おにのそらねんぶつ)
- 渡る世間に鬼はない(わたるせけんにおにはない)
- 鬼の目にも涙(おにのめにもなみだ)
- 鬼の居ぬ間に洗濯(おにのいぬまにせんたく)
- 心を鬼にする(こころをおににする)
- 刀下の鬼となる(とうかのきとなる)
- 来年の事を言えば鬼が笑う(らいねんのことをいえばおにがわらう)
- 心に鬼を作る(こころにおにをつくる)
「鬼」を含むことわざの特徴
「鬼」を含むことわざの多くは、「鬼」が何かの比喩表現であることが特徴的です。「鬼のように怖い人」「鬼のように厳しい人」を「鬼」と表すことが多くあります。
ネガティブな存在として用いられやすい「鬼」ですが、ポジティブなニュアンスも持ちます。例えば「鬼の霍乱」の「鬼」は「健康な人」という意味です。
「鬼」を強者として扱うことわざ
「鬼の首を取ったよう」は些細なことを自慢すること
「鬼の首を取ったよう」は、些細なことなのに、大手柄のように自慢することを意味します。昔の戦の風習から生まれたことわざです。
かつての日本では、敵将の首を持ち帰り、自分の活躍の証明にしていました。名高い優れた将の首であるほど、手柄が大きくなります。
人間よりも強い鬼の首を本当に取ったのなら、大手柄です。しかし、このことわざでは「実際には違うのに、鬼の首を取ったように振舞う」ことを批判・揶揄する意味で用いられます。
「鬼の首を取ったよう」の意味とは?誤用しない使い方や類語を紹介
「鬼に金棒」は強い人が強化されること
「鬼に金棒」は強い人が強化されることを意味することわざです。最初から強い鬼に武器(金棒)を持たせることで、素手の時よりも強くなることを表しています。
「鬼に鉄杖(てつじょう)」、「鬼に金梃(かなてこ)」のように、金棒以外の武器を使ったことわざもあります。意味はどちらも同じです。
「鬼に金棒」の意味とは?由来や類語・反対語も解説(例文付き)
「鬼の霍乱」は健康な人が珍しく体調を崩すこと
「鬼の霍乱(かくらん)」の意味は、普段は健康な人が珍しく体調を崩すことです。ここでの「鬼」は「丈夫で健康な人」を例えています。
「霍乱」がかっこいい言葉に感じる人もいるかもしれません。実際には「日射病」を意味する言葉です。
「鬼を欺く」は鬼のように勇猛であること
「鬼を欺く」は鬼のように勇猛であることを表すことわざです。鬼のように見えるほど、強くて勇敢であることを表しています。
「鬼に見えるほど、見た目が恐ろしい」という意味も持ちます。
「鬼」の怖さ・悪人ぶりに注目することわざ
「鬼も角折る」はきっかけがあると悪人も改心すること
「鬼も角(つの)折る」はきっかけがあると悪人も改心することを表すことわざです。ここでの「鬼」は悪人を例えていて、「角」を鬼の象徴として扱っています。
「頑固な人が急に態度を変える」という使い方もあります。
「鬼の空念仏」は冷酷な人が優しいふりをすること
「鬼の空念仏(そらねんぶつ)」とは、冷酷な人が優しいふりをすることです。「からねんぶつ」は誤読とされます。鬼が本心ではないのに、慈悲深いふりをして念仏を唱える様子を表すことわざです。
冷酷とまでいかなくても「その人らしくないほどに良い心がけをしている」という意味でも用いられます。
「渡る世間に鬼はない」は世間には良い人もいること
「渡る世間に鬼はない」は、世間には冷たい人ばかりではなく、良い人もいることを意味します。ここでの鬼は冷たく無慈悲な人を意味する比喩表現です。「世間に鬼はない」とも表記します。
1990年から2019年まで、このことわざをパロディしたタイトルのドラマが放送されていました。人気作だったことから、ドラマタイトルが正しいと誤解する人もいるようです。
「鬼」を厳しい・口うるさい人に例えることわざ
「鬼の目にも涙」は厳しい人も時には涙を見せること
「鬼の目にも涙」とは、怖くて厳しい人も、時には涙を見せることを表します。厳密な意味は「冷酷で無慈悲な人間でも、時には憐れみを感じる」です。そのため、かつては悪人に使われていました。
「鬼の居ぬ間に洗濯」はうるさい人がいない間に休むこと
「鬼の居ぬ間に洗濯」は、口うるさい人がいない間に、くつろいで休むことを意味することわざです。口うるさく怖い人を鬼に例えています。
ここでの「洗濯」は慣用句「命の洗濯」の意味で用いられています。「命の洗濯」の意味は「普段の仕事や苦労から離れて、のんびりと休んだり楽しく過ごす」です。
「心を鬼にする」は同情しつつも厳しい態度をとること
「心を鬼にする」は相手に同情しつつも気持ちを抑え、あえて厳しい態度をとることを表しています。育児や部下の指導の場面でよく用いられています。
「自分自身に厳しくする」という用法は誤用ですので注意しましょう。
その他の「鬼」を含むことわざ
「刀下の鬼となる」は刀で斬り殺されること
「刀下の鬼(き)となる」とは、刀で斬り殺されることを意味することわざです。ここでの「鬼」は、人の魂を意味しています。
辞書によっては「鬼」を「き」ではなく「おに」と読むものもあります。
「来年の事を言えば鬼が笑う」は先のことを話す人をからかう
「来年の事を言えば鬼が笑う」は、先のことを話す人をからかう際に用いることわざです。予測できない未来のことを話すと、おかしさに鬼でさえ笑ってしまうということを表しています。
「来年の事を言うと鬼が笑う」「明日の事を言えば鬼が笑う」のような別表記も使われています。
「心に鬼を作る」は2つの意味があることわざ
「心に鬼を作る」とは、2つの意味があることわざです。「恐怖心から、疑心暗鬼になる」と「良心に恥じることがあって悩む」になります。どちらも心の状態を「鬼」に例えています。
まとめ
「鬼」はさまざまなものの比喩表現に使われています。それだけ、日本人にとって馴染み深い存在だったのでしょう。「鬼」をどんな意味で使っているか確認すれば、ことわざの意味も覚えやすいかもしれません。