「方々」の3つの意味と正しい使い方!意味で読み方が変わる?

「方々」には異なる意味が複数ありますが、私たちは日常のやりとりで特に意識することなく、自然に使い分けをしています。しかしその使い方が本当に適切なのか、深く考える機会はあまりないのではないでしょうか。そこで今回は「方々」について、主に使用される3つの意味と使い方について例文を交えて解説します。

「方々」の3つの意味

意味は「人々」、「複数の事柄が併存」、「あちこち」

「方々」の意味は「人々、複数の事柄が併存、あちこち」です。

まずは次の3つの文章を読んでみてください。

  1. 「ご来場の方々(かたがた)」
  2. 「お礼方々(おれいかたがた)ご挨拶申し上げます」
  3. 「方々(ほうぼう)探し回る」

上記の例文全てに「方々」が用いられていますが、3つとも違う意味で使われています。それぞれの意味は、以下の通りです。

  1. 「ご来場の方々(かたがた)」⇒「人々」の丁寧な言い方としての「方々」
  2. 「お礼方々(おれいかたがた)ご挨拶申し上げます」⇒複数の事柄が併存していることを表す「方々」
  3. 「方々(ほうぼう)探し回る」⇒「いろいろな場所、あちこち」を表す「方々」

3つの使い分けをしっかり意識してできるよう、次から個別に説明します。

「人々」の丁寧な言い方としての「方々」

意味は「人々」、読み方は「かたがた」

「人々」を丁寧に表す敬語表現としての「方々」があります。「かたがた」と読みます。尊敬の意を含んだ2人称の人代名詞で、本来は複数の人を表しますが、1人に対して用いることもできます。

「方々」(かたがた)を使った例文

「ご来場の方々に申し上げます」
「多くの方々の賛同を得ることができた」

「方々」(かたがた)の類語は「皆様」

「人々」を丁寧に表す表現の類語としては、「皆様」があります。複数の人に対して敬意を表す表現としては同じですが、「皆様」はその場にいる人に対して呼びかける際に単独で用いることができるのに対して、「方々」は修飾する語句が必要となるため単独で用いることはできないという違いがあります。

【皆様】の例⇒「皆様にご案内申し上げます」
【方々】の例⇒「ご来場の方々に申し上げます」

それでは「方々」と「皆様」はどのように使い分ければよいのでしょうか?「皆様」は関係する全ての人に対して呼びかける言葉という意味があります。そのため、複数の人に伝えたい事柄があり、注意を喚起したい時などは「ご来場の皆様へご案内いたします」とした方が「ご来場の方々へ」とするより自然な表現となります。

また、具体的に対象となる人々を指していて抽象度が低い場合も「方々」より「皆様」の方が適切です。

×⇒「本日はお世話になった方々にご挨拶に伺いました」
⇒「本日はお世話になった皆様にご挨拶に伺いました」

また、目上の人や取引先と対面して会話をする際に、そこにいる人々を指したい場合は「方々」より「皆様」を用いた方が柔らかく丁寧な印象を与えるようです。その理由として、「皆様」が丁寧な呼びかけの表現として一般的に用いられていることや「方々」が口語的でやや硬い表現という印象があることなどが挙げられます。

「方々」(かたがた)を使うときの注意点

人々に対する尊敬語が「方々」であるため、身内や一般的な人々を指す場合に用いるのは間違いですので気を付けましょう。

×⇒「当社の担当部署の方々です」
×⇒「仕事を終えた方々が一斉に帰宅する」

複数の事柄が併存していることを表す「方々」

意味は「複数の事柄が併存」、読み方は「かたがた」

「~を兼ねて」「~がてら」といった、ひとつのことをするついでに他のことを表す時に接続詞として用いる「方々」があります。この場合も「かたがた」と読みます。感謝の気持ちと他の事項が並存していることを示す言い回しとして手紙でよく用いられます。ビジネスメールの文面に使用されているのを目にすることも多いでしょう。

また自分自身の行動に対して用いる場合は、固い雰囲気の文語表現となりますので状況に応じて使用しましょう。

接続詞としての「方々」を使った例文

「お礼方々(かたがた)ご挨拶申し上げます」
「ご挨拶方々伺わせていただきます」
「散歩方々買い物をする」
「墓参方々帰省する」

接続詞としての「方々」の類語は「~がてら」

類語表現としては「~がてら」があります」。「散歩がてら買い物をする」と自分の動作に用いるのには問題ありませんが、目上の人や取引先などに対して「お礼がてらご挨拶申し上げます」などと用いるのはくだけた表現すぎて失礼になりますので、この場合はやはり「方々」を用いるようにしましょう。

「いろいろな場所、あちこち」を表す「方々」

意味は「あちこち」、読み方は「ほうぼう」

いろいろな場所へ向かう様子や、いろいろな方角や場所を表す「方々」もあります。この場合は「ほうぼう」と読み、漢字で「方々」と書くよりひらがなで「ほうぼう」と書くほうが一般的です。

「方々」(ほうぼう)を使った例文

「方々/ほうぼう走り回って金策をする」
「方々/ほうぼうの国から留学生がやってくる」
「方々/ほうぼう探してついに取引先を見つけた」

「方々」(ほうぼう)の類語は「諸所」「あちこち」

「あちこち」がくだけた類語表現となりますが、ビジネスシーンでは「あちこち」を用いることはあまり無いでしょう。「あちこち」の難しい表現として「諸所(しょしょ)」がありますが、現代ではあまり用いられることは無くなっているようです。ビジネス文書などで「あちこち」を表現したい時は「方々(ほうぼう)」と覚えておきましょう。

まとめ

「方々」には「かたがた」と「ほうぼう」2つの読み方があり、主な意味は次の3つでした。①「人々」の尊敬語としての「方々(かたがた)」、②複数の事柄が併存していることを表す「方々(かたがた)」、③「いろいろな場所、あちこち」を表す「方々(ほうぼう)」。

難しくはない漢字の「方々」ですが、掘り下げてみるといろいろな顔を持っています。平易な表現と油断せず、それぞれの意味と使い分けをしっかり把握しておきましょう。