「疾風」とは「速く吹く風」という意味ですが、読み方には「しっぷう」と「はやて」があります。どちらも正しい読み方なのでしょうか。
この記事では、「疾風」の意味や読み方のほかに、「疾風」の使い方として故事成語の「疾風に勁草を知る」や、四字熟語の「疾風迅雷」や「疾風怒濤」も解説します。
「疾風」の意味とは?
「疾風」の意味は”速く吹く風”
「疾風」の意味は、“速く吹く風”です。つまり、勢いよく吹く風のことです。風力で言うと、秒速6~10メートル程度で、木の枝を揺らすほどのスピードです。
「疾風」の「疾」という漢字に「速い」という意味があり、あっという間に進むほどの速さを表しています。
「疾風」は”疫痢”という意味も
「疾風」には“疫痢(えきり)”という病気の意味もあります。「疫痢」とは赤痢の一種で、子どもに発症する重症化する病気です。顔面蒼白や血圧低下などの症状があるのですが、死亡率が高かった病気のため「はやて」と呼ばれるようになりました。
現在では発病することの少ない病気です。
「疾風」の読み方とは?
「疾風」の読み方は”しっぷう・はやて”
「疾風」の読み方は“しっぷう・はやて”です。一般的には「疾風」は”しっぷう”と読まれています。
「はやて」という読み方は熟字訓
「疾風」は熟字訓として読んだときに「はやて」と読みます。熟字訓とは熟字となった時にだけ読まれる読み方のことで、「疾風」の場合は「疾」と「風」という2字の漢字が組み合わさり熟字となったことで「はやて」と読まれます。「疾」という字に「はや」という読み方や、「風」に「て」という読み方があるわけではありません。
「疾風(はやて)」は戦闘機や列車の愛称に使われている
「疾風」を「はやて」と読ませることで、さまざまな使い方がされてきました。その一例をご紹介します。
「疾風」の使い方と例文とは?
「疾風」をたとえとして使う
「疾風」は物事が早いたとえとしてよく使われます。「疾風のように~」として直喩にして、物事が早いさまを表します。
疾風のように現れて、私を助けてくれた
「疾風に勁草を知る」とは疾風を使った故事成語
「疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る」とは”苦難にあった時に、初めてその人の強さや賢さがわかること”という意味の故事成語です。「勁草」とは”風に強い草”という意味で、意志の強さのたとえとしてよく使われる言葉です。
「疾風に勁草を知る」は、中国の後漢時代の歴史を記した『後漢書』にあるエピソードが由来しています。新王朝を打倒するために戦っていた豪族の劉秀(りゅうしゅう)は苦戦続きで仲間がいなくなっていったのですが、一人残り共に戦い抜いた武将・王覇に対して「疾風に勁草を知る」と言ったという伝説が残っています。
「疾風」を使った例文
「疾風」を使った例文をご紹介しましょう。
- 昨晩は荒れて、疾風が吹き雷も鳴った
- 疾風に耐えて花は花壇でまだ咲いていた
「疾風迅雷」と「疾風怒涛」の意味とは?
「疾風迅雷」とは”とても素早く凄まじいこと”
「疾風迅雷(しっぷうじんらい)」とは”強い風と激しい雷”という意味の四字熟語です。「強い風と激しい雷」という意味が転じて、「動きがとても素早くすさまじいこと」という意味もあります。「疾風迅雷」は人の行動でその速さを強調したい時などに使われます。
- 疾風迅雷に荒れた空模様だったが、見事に晴れ渡った
- 疾風迅雷のように仕事を片付けた彼女は優秀すぎる
「疾風怒濤」とは”激しい風と荒れる波”
「疾風怒濤」とは”激しい風と荒れる波”という意味の四字熟語です。荒れ狂う風と波を表していて、そこから「激しいさま」や「大きく変化するさま」という意味も派生しました。
「疾風怒濤(しっぷうどとう)」は、ドイツの1770年~80年に起こった文学運動「シュトゥルム・ウント・ドランク」の日本語訳が由来です。「シュトゥルム・ウント・ドランク(Sturm und Drang)」とは、ゲーテやシラーを中心に起こった文学革新運動で、啓蒙主義的な偏向に対して、自然と個性を尊重した人間味のある作品性を主張しました。ドイツ文学史における新しい波としてとらえられた文学運動です。
疾風怒濤時代に活躍した作家
「疾風」の外国語表現とは?
「疾風」は英語で”gale”や”fresh breeze”
「疾風」は英語で“gale”や“fresh breeze”と表現します。一般的には「gale」が使われますが、気象用語として「fresh breeze」が使われることがあります。
「疾風」の英語例文
「疾風」の英語例文をご紹介しましょう。
- “The gale blows down hundreds of trees.”
「疾風で何百本もの木がなぎ倒される」 - “The boy ran like a gale”
「少年は疾風のように駆け抜けた」
まとめ
「疾風」とは「速く吹く風」という意味で、「しっぷう」と「はやて」という2つの読み方があります。どちらの読み方も正しいのですが、速い風や疾風をたとえとして使ったときには「しっぷう」と読まれるのが一般的です。その一方で、「疾風」が名称として使われるときに「はやて」と読まれることもあるでしょう。
「疾風舟(はやてぶね)」とは、疾風に乗って走行する舟のことです。「しっぷうぶね」とは読みません。
第二次世界大戦時の日本陸軍が製造していた戦闘機「疾風(はやて)」は四式戦闘機の愛称です。速度や武装設備など当時の戦闘機としては優れた性能を持つ戦闘機でした。
「はやて」とは盛岡駅、新青森駅、新函館北斗駅間で運行されている東北新幹線・北海道新幹線の特別急行列車の愛称です。