「土用」とは、二十四節気以外の季節を指す「雑節」のひとつです。夏のイメージが強い「土用」ですが、実際はいつが「土用」なのでしょうか。今回は「土用」の期間をはじめ、過ごし方や避けた方が良いこと、食べると縁起が良いものなどをご紹介。「土用の丑の日」についても解説します。
「土用」とはいつ?意味や起源は?
「土用」は雑節のひとつ
「土用」とは、二十四節気(にじゅうしせっき:1年を太陽の動きに合わせ 24等分した季節区分)以外の季節を指す「雑節(ざっせつ)」のひとつです。
「土旺用事(どおうようじ)」を略した言葉で、「土が旺(さかんに)なり、用事(働き・支配)をする」という意味があります。つまり、「土用」とは「土が最も働く時期」を意味します。
「土用」は春・夏・秋・冬の年4回ある
「土用」は各季節、年4回あります。立春(2月4日頃)・立夏(5月5日頃)・立秋(8月7日頃)・立冬(11月7日頃)の直前の約18日間を「土用」といい、季節の変わり目の混沌期となります。
それぞれが「春土用」「夏土用」「秋土用」「冬土用」と呼ばれ、最初の日を「土用の入り」、最後の日を「土用明け」と言います。
「土用」の起源は陰陽五行説
「土用」の起源は、古代中国の陰陽五行説です。陰陽五行説では、宇宙の万物は「木・火・土・金・水」の5つの気でできているとされます。
木は東の方位で春、火は南の方位で夏、金は西の方位で秋、水は北の方位で冬、土は中央で四季の主とされ、土が代表する季節がないため、「土用」を定めて「季節の変わり目」の象徴とされています。
「土用の丑の日」とは?
「土用の丑の日」は「土用」の期間にある「丑の日」のこと
「土用の丑の日」の「丑」とは、十二支の丑を指します。十二支は年単位でも巡りますが、1日単位でも巡り、12日毎に繰り返されています。そのため「土用」の期間内に巡ってきた「丑の日」が「土用の丑の日」になります。
年によっては、「土用」の期間内に2回「丑の日」がある場合があり、その場合には1回目を「一の丑」、2回目を「二の丑」と言います。
「土用の丑の日」にうなぎを食べる理由
夏土用の時期は、暑さが本格化するという意味の節気「大暑(たいしょ)」の期間中になるため、江戸時代よりこの期間の丑の日を「土用の丑の日」として重視してきました。
「土用の丑の日」にうなぎを食べる風習は、江戸時代の蘭学者、平賀源内(ひらがげんない)が売上不振の続く知り合いのうなぎ屋を助けるため、店の前に「土用丑の日、うなぎの日」という貼り紙をし、大当たりしたことがきっかけとされます。
「土用の丑の日」が夏に2回ある場合は、「一の丑」の時にうなぎを食べる習慣があるようです。
「土用」の期間の過ごし方とは?
「夏土用」は「土用の虫干し」や「土用干し」を
梅雨明けの頃にやってくる「夏土用」は、湿気やカビ、虫が気になる時期です。この時期にカビや虫の害から衣類や書物を守るため、陰干しして風を通すことを「土用の虫干し」と言います。
また、梅干し作りでは「土用干し」をして殺菌作用を高め、長期保存を可能にします。「土用干し」を行うことで色も鮮やかになり、風味も増します。
雑菌の繁殖を抑えるため、田んぼの水を抜き土をひび割れ状態にする「田の土用干し」。根が水を求めて地中深くまでしっかりと張るため、台風に強くなるとされます。そこに水を入れると、稲が水をよく吸収し、良い稲穂が実ると言われます。
「土用」の期間の土いじりは避けた方がいい
「土用」は、土を司る土公神(どくしん・どくじん・どこうしん)という神様が支配する期間と考えられ、土を動かしてはいけないとされます。そのため、土いじりや草むしり、畑仕事やガーデニング、造園や地鎮祭、井戸掘りや穴掘りなどは避けた方が良いとされてきました。
今でも家を建築する際に、土を掘り起こしたりする基礎工事や壁塗りなどは、土用の期間を外して計画されることが多いようです。ただし、土用前に着手していた農作業や増改築については、やっても良いとされています。
土用は季節の変わり目で、体調を崩しやすく、気持ちも不安定になりがちです。そのため新しいことは始めず、静かに過ごす方が良いとされています。転職や就職、結婚や結納、開業や開店、新居の購入など、新しく始めることや大きな契約は避けた方が良いと言われています。
また、土用期間中の移動はどの方角であっても良くないとされますので、旅行や引っ越しなど、知らない土地への移動も避けた方が良いとされています。特に、土用の期間に凶とされる方位「土用殺」への旅行は、怪我をしたり災難に遭ったりしやすいとされるため注意が必要です。春土用は「南東」、夏土用は「南西」、秋土用は「北西」、冬土用は「北東」が土用殺方位です。
「土用の間日(まび)」は作業OK
「土用」期間中でも、土公神が天上に行き土を離れるため、土を動かしても大丈夫とされる日があります。それが「土用の間日(まび)」です。それぞれの季節の土用の間日は以下の通りです。
「土用」の期間に食べると縁起が良いものは?
「春土用」には「い」のつく食べ物や「白い食べ物」
「春土用」の期間中は、「戌の日(いぬのひ)」に「い」のつく食べ物を食べると縁起が良いと言われます。「い」のつく食べ物には、いくら、いわし、いか、いも、いちごなどがあります。
また、「白い食べ物」も縁起が良いとされ、豆腐、白米、大根、かぶなどが挙げられます。
「夏土用」には「う」のつく食べ物や「黒い食べ物」
「夏土用」には、「丑の日」に「う」のつく食べ物を食べると縁起が良いとされます。「う」のつく食べ物の筆頭が「うなぎ」です。「土用の丑の日」には、うなぎの他にも、うどん、梅干し、瓜(きゅうり、すいか、かぼちゃなど)、牛肉(うし)などが食べられています。
また、「黒い食べ物」が縁起が良いとされ、「土用しじみ」や「土用餅(あんころ餅)」も、地域によって食べる習慣があります。
「秋土用」には「た」のつく食べ物や「青い食べ物」
「秋土用」には、「辰の日」に「た」のつく食べ物が食べられています。たこや玉ねぎ、たけのこ、大根などが「た」のつく縁起が良い食べ物として挙げられます。
「秋土用」はその他に「青い食べ物」が縁起が良いとされ、秋刀魚や鯖などの青魚がよく食べられます。
「冬土用」には「ひ」のつく食べ物や「赤い食べ物」
「冬土用」に縁起が良いとされる食べ物は、「未(ひつじ)の日」に食べる「ひ」のつく食べ物。ヒラメ、ヒラマサ、ひじきなどがあります。
また、「赤い食べ物」も「冬土用」に食べると良いとされ、りんごやトマト、パプリカなどが挙げられます。
まとめ
「土用」とは「雑節」のひとつで、「土旺用事」を略した言葉です。「土が最も働く時期」を意味しており、各季節に年4回あります。「土用」の期間内に巡ってきた「丑の日」を「土用の丑の日」と言い、「夏土用」の「土用の丑の日」には「う」のつく食べ物が縁起が良いとされ、うなぎやうどんなどが食べられています。