「溜飲を下げる」とは、不平や不満などをみずから解消してすっきりとした気分になることです。「溜飲」は日常的に使用される言葉ではなく、誤用されることも多いため、正しい意味と使い方を知っておきましょう。今回は、「溜飲を下げる」の由来や例文、類義語や対義語を紹介します。
「溜飲を下げる」の意味とは?
「溜飲を下げる」とは胸をすっきりさせること
「溜飲を下げる」とは、抱えていた不平や不満などを解消してすっきりした状態をいう慣用句です。ストレスや胸のつかえとなる不満などを自発的に解消し、気持ちを晴らしたときに使います。
「溜飲を下げる」は自分のことについてだけでなく、第三者のことを客観的に言う場合にも使える表現です。なお、「溜」の字は常用漢字ではないため、新聞や公用文では「留飲」と表記されます。
「溜飲を下げる」の読み方と由来
「溜飲を下げる」は「りゅういんをさげる」と読みます。
「溜飲」とは、消化不良により胃液が上がってきたり、胸やけがしたりすることを意味する医学用語です。胸につかえていた食物が消化されると胃液の上昇もなくなりすっきりとすることから、気分をすっきりさせるという意味で使われるようになりました。
現代では「溜飲」を単独で使用することはほとんどなく、「溜飲を下げる」のように慣用句として用いられています。
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「溜飲を下げる」の使い方と例文
「溜飲を下げる」には自発的な行動をともなう
「溜飲を下げる」は、不平や不満を解消するための行動を自発的に取った結果、すっきりとした状態になるときに使います。
- 私は話し合いの場でこれまでに蓄積した不満をすべてぶちまけ、溜飲を下げた。
- 上司は理不尽な要求をする取引先に毅然と抗議することで、部署内の溜飲を下げているようだ。
「溜飲が下がる」とは意味や使い方が異なる
「溜飲」には「溜飲が下がる」という表現もありますが、「溜飲が下がる」は、解消のための行動があるかどうかは問われません。
他者の行動や時間など、自発的な行動以外で問題が解決されてすっきりしたときに「溜飲が下がる」を用います。
- 彼の心からの謝罪を受け、私は溜飲が下がった。
- 行動の意図を第三者に理解してもらえれば、彼の溜飲も下がるだろう。
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「溜飲を晴らす」は誤用のため注意
「溜飲を下げる」は気を晴らすという意味で使われます。そのため「溜飲を晴らす」と言う人もいますが、これは誤用です。「溜飲」が何であるかを考えると、「晴らす」は適切ではないことがわかるでしょう。
文化庁が実施した「平成29年度 国語に関する世論調査」によると、3割以上の人が「溜飲を晴らす」と誤用していることがわかりました。10年前の同調査よりも、誤用する人の割合が高まっています。
「溜飲を下げる」の類語・言い換え表現
不満を発散する「鬱憤を晴らす」
「鬱憤を晴らす」(うっぷんをはらす)は、積もり重なった不満や怒りなどを外へ発散することです。
不満や怒りに直接思いをぶつけることもあれば、気分転換をする、好きなものごとに集中するなど、まったく関係のない方法で発散されることもあります。
心が晴れやかになる「胸がすく」
「胸がすく」は、不安や不満などのもやもやした感情が取れたようにすっきりと晴れやかになることです。すくとは空くことで、胸に詰まっていたつかえがなくなることを意味します。
「溜飲を下げる」とよく似ていますが、「胸がすく」は不満がなく、ただすっきりしたという意味でも使える点が異なります。
さっぱりとして気持ちが良い「清々しい」
「清々しい」(すがすがしい)は、さっぱりとして気持ちが良いこと、快いことを意味する形容詞です。
「溜飲を下げる」のように不満を解消するという意味はありませんが、心がすっきりとした様子を表すときに言い換えができるでしょう。
「溜飲を下げる」の対義語
暗い気持ちになる「気が滅入る」
「溜飲を下げる」の対義語の一つは「気が滅入る」(きがめいる)です。
「気が滅入る」は暗い気持ちになりふさぎ込むという意味で、何らかの原因で嫌な気分になったり、元気がなくなったりするさまを表します。気分がすっきりとしないときに、幅広く使用される言い回しです。
心がふさぐ「鬱屈する」
「鬱屈する」とは、心がふさぎ気分がすぐれないこと、悲しみや不安で気分が沈み、憂鬱な気持ちになることです。原因は不平や不満とは限りませんが、つらい思いが胸につかえて元気がない状態を指すため、「溜飲を下げる」の対義語といえるでしょう。いわば「溜飲」がある状態です。
「鬱屈する」は、落ち込んでいるときにもよく用いられます。
まとめ
「溜飲を下げる」は、胸にわだかまった不平や不満を自らの行動で解消し、すっきりとした気持ちになることです。「溜飲が下がる」との違いやなぜ「下がる」のかを理解していれば、適切な使い方ができるでしょう。
また、新聞や公用文では「留飲を下げる」と代用表記されることも覚えておいてください。