「傾聴」の意味と使い方とは?傾聴力のトレーニングや資格も紹介

話を聴いてくれる人が周囲にいると、心が満たされ気持ちが落ち着いてきませんか?「傾聴」は相手の話を積極的に聴くテクニックの一つで、臨床心理の世界でも注目される分野です。「傾聴」のスキルを習得することで得られるメリットは大きく、何より人間関係を良好に保つこともできます。

早速、「傾聴」の意味と傾聴技法、傾聴のトレーニング方法と効果、また「傾聴」の資格について紹介しましょう。

「傾聴」とは?

「傾聴」の意味は「相手の話に耳を傾けること」

「傾聴」の意味は、「相手の話を真摯に聴く」「相手の言うことに深く耳を傾ける」とです。「傾聴」の「傾ける」「聴く」という言葉が示す通り、音や声を自然に耳で受け取るということではなく、「心を落ち着かせて意識して聴き入れる」という意味が正しい解釈となります。

「傾聴」を正しく行うには、専門的なトレーニングや研修を受ける必要があり、現在では「傾聴」に対するスキルが提示できる資格も登場しています。

「傾聴」の英語は「active hearing」

「傾聴」は英語で「active hearing」または「attentive hearing」です。「active hearing」は臨床心理学で「積極的傾聴」と呼ばれ、アメリカの心理学者カール・ロジャースが提唱した手法として知られています。

特に看護の分野では「傾聴すること」が必要不可欠

身体的、精神的に落ち込んでいる患者と向き合う看護の世界では「傾聴」は偉大なテーマでもあります。患者が気持ちや感情をストレートに吐き出せる環境を作らなければ、積極的な医療は実現できないからです。

また、心理的な悩みを抱える人のための「電話相談」の場においては、看護的視点と併せて「傾聴技術」は必要不可欠でしょう。心の拠り所として電話をしてくる相談者にとって「熱心に聴いてくれる人がいる」という事実はどれだけ心の支えになるでしょうか。顔の見えない「電話相談看護」であるからこそ「傾聴技術」が生き、光り輝くのです。

「傾聴の姿勢」のポイントをおさえることが重要

「傾聴の姿勢」で最も大切な心構えを紹介しましょう。「聴き手」もストレスを溜めないようにする必要があります。

「思考と感情を白紙に戻して」傾聴すること

「傾聴」を始める前に、プライベートのことや個人的な感情をリセットしましょう。10回程度の深呼吸で、気持ちや心理状態が徐々に和らいできます。深呼吸をする時のコツは「呼吸を意識すること」です。

「興味と感謝の気持ちを高める」ことが傾聴の姿勢の基本

「傾聴」が始まる前に、全てにおける興味や好奇心、感謝や歓喜の気持ちを感じ、高めるようにします。気持ちにネガティブな要素が少しでもあると、相手の話を肯定的に聴くことはできません。これから話す相手に対して「あなたに出会えて感謝している」「あなたのことがもっと知りたい」と相手を大切な人として捉えるイメージを膨らませておきましょう。

「自己と相手の感情に距離を置く」ことも傾聴において重要

「傾聴」では相手から受け取るネガティブな話に共感をすることもあります。しかし、相手に共感をすることと感情移入は別次元です。相手の気持ちや感情は、あくまで「相手のもの」とし、聴き手として心理状態が不安定にならないように心がけましょう。

傾聴技法の3つの種類とは?

3つの「傾聴技法」について紹介します。

傾聴技法1「共感的理解」

「共感的理解」とは「相手の視点、相手の立場に立ち、相手の気持ちや話の内容に共感しながら聴き入れることです。「共感する」という行いは相手にとって「話を聴いてくれている」「認めてくれている」という安心感を与えてくれます。

傾聴技法2「無条件の肯定的関心」

「無条件の肯定的関心」とは、聴き手の私的な感情を取っ払い、無条件で肯定的に話を聴くことです。たとえ、話の内容に誤りや間違いがあっても、また社会的に反する内容であっても、否定をせず関心を持って聴く技法です。

傾聴技法3「自己一致」

「自己一致」とは、聴き手自身の感情や意見も尊重し、相手の話で理解できない点がある時は内容を確認しながら、真摯な姿勢で話を聴いていくという技法です。分からない点をそのまま置き去りしてしまうと、相手に「私の話はそれほど重要ではない」と誤解を招いてしまうこともあるでしょう。質問と答えを確認する行程が加わりますが、相互理解はお互いに安心感を与えてくれます。

「傾聴力」のトレーニング方法と効果とは?

「傾聴」のトレーニング方法と得られる効果を挙げてみます。トレーニングの環境は聴き手と相手の2人構成で進めていきましょう。

「傾聴力」を鍛える3つのトレーニング

「傾聴」のトレーニングの基礎として、3つのシンプルなルールを軸に進めていきます。聴き手が従う3つのルールは「質問は少なめにする」「話題を変えない」「アドバイスをしない」です。話の内容を変更するのは相手のみで、アドバイスや意見を求められても答えないようにします。

主役はあくまで「相手(話し手)」であり、聴き手と立場が逆転してはなりません。そのため、聴き手がアドバイスや意見をすることで、相手の立場が下にならないようにすることが大切です。傾聴の基礎的なトレーニングですが、やはり聴き手にとっても最初はストレスになるかもしれません。少しずつ回数をこなして慣れていきましょう。

「傾聴」で得られる双方の効果

「傾聴」で得られる効果を「聴き手」「相手」の双方の視点で挙げてみます。

  • 聴き手の効果:コミュニケーション能力と人間関係の向上
  • 相手の効果:安心、落ち着き、認められた、という感情の芽生え

などです。聴くことが難しいと感じることが減り、話すことが楽しいと感じることが増えてきます。

「傾聴」に関する資格と使い方とは?

「傾聴」に関する資格について紹介します。

傾聴に関する資格「認定傾聴サポーター」

認定傾聴サポーター」は一般社団法人日本傾聴能力開発協会が発行する資格です。

「傾聴サポーター」の養成講座では、まず「聴き手」がストレスを溜めずに楽な気持ちで「傾聴」できることを念頭に、傾聴の土台作りとなる知識や技術を学んでいきます。うなづきやあいづちの意味、日常生活におけるロールプレイングなどを含んだ魅力ある内容で「傾聴」への理解を深めていきましょう。

「傾聴」の資格の有効的な使い方は看護やカウンセリング分野

「認定傾聴サポーター」を取得すれば、メンタルヘルスや福祉関係、看護やカウンセリング分野で役に立ちます。初めて話す相手が「傾聴技術」を持っていれば、問題解決や治療への近道にもなることでしょう。

まとめ

「傾聴」は職場でも有効的に使える技術です。部下を多く抱える上司が「傾聴」の技術を習得していれば、安心して「心の奥」を見せてくれるに違いありません。上司が良い聴き手であるチームは雰囲気が良く、アットホームな関係が築き上げられている場合が多いです。

職場内の活性化や、最終的には生産性を高めることにもつながると考えられる「傾聴」のスキルは、多くの企業で採用を検討し始めています。「部下の気持ちが分からない」と頭を抱える前に「傾聴」の技術を習得してみませんか?