経済やビジネスシーンで、問題提議の意図を持って放たれる言葉の一つが「トレードオフ」です。メディアで頻繁に見聞きする言葉ですが、売買取引が要する業界では必須のビジネス用語でもあります。
ここでは「トレードオフ」の意味と使い方の他、トレードオフを使ったビジネス例文、言い換えのできる類語や反対語について解説しています。「反比例」の図式を頭に入れながら、「トレードオフ」のイメージを取り入れていきましょう。
「トレードオフ」とは?
早速、「トレードオフ」の意味から英語表記と併せて解説します。
「トレードオフ」の意味は「両立できない関係」
「トレードオフ」の意味は、「両立できない関係」「得失評価」「代償」です。基本的には、二つのものごとがあり「一つを尊重すれば、他方が成り立たない」という意味です。
「トレードオフ」は両者のバランスが良好に保たれることがなく、一方が得をして、他方が損をしてしまうような状況を示しています。行動そのものは「より望ましい方と入れ替える」というニュアンスがあり、ビジネスやマーケティングの分野では一つの「交換条件」の一つとして掲げらる言葉です。
「トレードオフ」は英語の「trade-off」
「トレードオフ」の英語表記は「trade-off」です。「trade」にネガティブな状況を示す「off」が後続していることに注目しましょう。
「トレードオフ」は日常生活でも反比例を表す
「トレードオフ」は日常生活にも数多く存在しています。たとえば、「お金の時間」の関係では、働く時間を増やせば収入は増えますが、自由な時間は減ってしまうでしょう。「高品質と低価格」の関係では、品質の高さを求めれば高額になり、安さを重視すれば品質は落ちます。また、車の燃費向上を求めれば、排気ガス中の窒素酸化物が増え、人体に悪影響を与えるリスクが高まるという例も「トレードオフ」です。
「トレードオフ」は生物の世界にも
「トレードオフ」は生物の世界にもあります。「飛ぶ」ことが通常だと思われる鳥類をみてみると、中にはペンギンやダチョウのように「飛べない」鳥もいます。この「トレードオフ」を考察すると、ペンギンは飛ぶ代わりに「泳ぐ力」を、ダチョウは「速く走る力」を代償として得ているのがわかるでしょう。
「トレードオフ」は経済学で必須用語
「トレードオフ」で最も代表的な例が「経済政策で失業率を下げようとすると物価が上昇し、逆に物価の安定を図ろうとすると失業率が上がる」というジレンマの関係でしょう。ちなみに、この関係性を表す曲線を発表したのがニュージーランドの経済学者で、名前をとって「フィリップス曲線」と呼んでいます。
両方の目的がありながら、同時進行で目的を果たすことができない矛盾が「トレードオフ」となりますが、「福祉政策を強化させれば増税は免れず、減税を試みれば福祉政策が崩れる」というように、経済成長や万全な社会資本を目指す過程では、さまざまな「トレードオフ」を体験することとなるのです。
「トレードオフ」の使い方と例文
続いて「トレードオフ」の使い方と例文を挙げてみます。
「トレードオフ」は「公平性」のない状況で使う
「トレードオフ」は「一方を得れば、他方が失われる」という矛盾と代償が伴う現象です。そのため、どちらも公平な結果となる状況で使うのは適切ではありません。「トレード」そのものには「交換」「貿易」という意味がありますが、「トレードオフ」は「両立できない関係」を示す言葉です。双方がハッピーになるような結果となる場合は使わないようにして下さい。
「トレードオフ」を使った例文
「トレードオフ」を使った例文を挙げてみます。
- 経済成長におけるトレードオフ問題について議論をする。
- トレードオフは日常生活にも多く存在している。
- 商品価格と品質のバランスを保つことで、トレードオフを防ぐことができる。
- トレードオフを解消すれば、多くの企業で公平なビジネスを継続できるかもしれない。
「トレードオフする」
「トレードオフする」は「より良いものと交換する」「相殺取引をする」という意味で使われ、マーケティングやビジネス取引で頻繁に飛び交う表現となります。例文を挙げてみましょう。
- A社との話し合いの結果、受託業務においてトレードオフすることとなった。
「トレードオフ」の類語と反対語は?
それでは「トレードオフ」と言い換えができる類語と反対語を見てみましょう。
言い換えをするなら「代償」「矛盾」「二律背反」
「トレードオフ」の類語にあたる言葉は「代償」「矛盾」「二律背反」「相殺」などです。一方が利を得る反面、他方が萎んでしまう状況を考えれば、このような言葉が類語として適切と言えます。
反対語には「両立性」
「トレードオフ」の反対語になるのは、双方が成り立つという意味の「両立性」です。英語では「compatibility(コンパティビリティ)」となります。
まとめ
「トレードオフ」は経済やマーケティング分野に限らず、日常生活でも多くの事例が挙げられます。意味は「両立できない関係」となり、「一方が良くなれば、他方が悪くなる」という矛盾やジレンマを表し、「問題提議」の題材として使われることが多いのが特徴です。
現代社会においては技術革新や各分野でのイノベーションが進み、トレードオフが解消することも増えてきいます。トレードオフのある状況では「何をどれくらい優先させるべきなのか」を留意し、二つの関係で生まれる「妥協点」を意識しながら、上手に取捨選択をするようにして下さい。