「ご無礼をお詫びいたします」「ご無礼をいたしました」「ご無礼します」など、お詫びをするときになんとなく丁寧な印象の言葉が浮かびます。
仕事や人間関係で、いざお詫びをしなければならないときに、正しいお詫びの仕方やわからない人も多いかもしれません。「ご無礼をお詫びします、といえばよかった気がする」というあいまいな状態ではなく、しっかりポイントをおさえて、スマートにお詫びのできる社会人へステップアップしましょう。
無礼の意味と使い方
「ご無礼」の意味は「礼儀にはずれている」
無礼とは「礼儀にはずれている」という意味です。一般的には「礼儀にはずれる・こと(さま)。失礼。ぶらい」というイメージがあります。
敬語の接頭辞「ご」がついて、自分の無礼な言動を指す謙譲語、もしくは美化語のどちらかを表します。
「ご無礼」の使い方
実際の使い方としては、「今日は無礼講だ」「無礼者め」「無礼を働く」形でしょうか。なお、ビジネスではお詫びをするシーンで使われます。
無礼の反対語は「慇懃(いんぎん)」「礼儀正しい」であり、組み合わせて「慇懃無礼」という四文字熟語になると、「表面の態度は丁寧だが、心の中では相手を軽くみている・こと(さま)」というマイナスな意味になります。
ご無礼の「ご」は必要?
場合によって「無礼」「ご無礼」を使い分ける
「ご無礼」は、名詞「無礼」に、接頭辞「ご」がついたものであり、「誰から誰に向けて発するときに使うか」によって、先頭に「ご」をつけるかどうかは変わります。
たとえば、自分の失態を詫びる際に「本当に無礼な態度をとってしまい申し訳ございません」というように、謙譲語として「ご」をつけません。一方、目上の方の立場にたって配慮すれば「多大なご無礼をお詫び申し上げます」となり、丁寧語として「ご」をつけます。
ご無礼を使ったビジネスフレーズ
「ご無礼します」「ご無礼の段」「ご無礼いたしました」というフレーズをたまに聞くことがあります。しかし、正確に理解して使っている人は少ないのではないでしょうか。
それぞれどんな使い方をしているのか、解説します。
●「ご無礼します」
「礼儀をはずれる」という意味は変わりませんが、名古屋弁の一種で、地域性のあるフレーズです。岐阜や熊本でも使われており、武士の言葉のようで耳に残るため、世間で知られていると思われます。
●「ご無礼の段」
「失礼なことをした件について」という意味です。
「段=件、こと、もの」を表すため、ビジネスメールで「先日の件、進捗いかがでしょうか」と送るケースのように、「ご無礼の段、深くお詫び申し上げます」という使い方をします。
●「ご無礼いたしました」
「失礼いたしました」と同じ使い方ですが、「失礼」と「非礼」と「無礼」は似ているようで重さの違う言葉になるため、使い分けると相手に程度が伝わります。違いについては、次の章で解説します。
「非礼」「失礼」「ご容赦」の違いは?
実際お詫びをするときに、どのくらい礼儀に反していたら「失礼」で、「無礼」はどう使えばいいのでしょうか。判断基準は「印象の悪さ」によって図ります。印象の悪い順に並べると、「非礼>無礼>失礼」となり、ケースごとに考えるとイメージしやすいです。
「非礼・無礼・失礼」の使い分け
●レベル①「失礼」
例)「失礼いたしました。お怪我はないですか?」
職場の廊下ですれ違いざまにぶつかったときに聞くような、重度の軽い使い方をします。部屋を出るときの挨拶など、悪いことをしていなくとも、礼儀として表現するのに使うため、もっとも多用します。
●レベル②「無礼」
例)「年下でありながら気分を害すような生意気な発言をし、ご無礼をお許しください」
相手の感情に影響がでるほどの礼儀を外す行為をした際に使います。失礼よりも重く、かしこまって使うため、日常生活で使う機会は少ないです。
●レベル③「非礼」
例)「この度、誤ってお客様の個人情報を漏えいする事態となり、大変な非礼を心よりお詫び申し上げます」
3つの中では最大級の失態であり、取返しのつかないような重度の礼儀をはずす出来事が発生した際に使われます。
「ご容赦ください」との使い分け
「ご無礼」も「ご容赦」もお詫びするシーンで使いますが、「ご容赦」は目上の人に謝罪して許しをこう際に使います。「ご容赦ください」が典型的な使い方ですが、電話でなく、メールや書面で使います。また「ご無礼をお詫びいたします」よりも軽いニュアンスになります。
「ご無礼をお詫びいたします」は文のどこにいれる?
手紙やメールで実際に謝罪文をつくるときに、文中のどこにどのような流れで使うと自然でスマートな社会人といえるのか、覚えておきましょう。
手紙の書き方と注意点
正式な謝罪文の場合、直筆で書くことが大切です。時候の挨拶は省き、お詫びする内容を端的に書くことが大切です。物品の破損や怪我を負わせてしまった場合や相手に不快な思いをさせてしまった場合など、シーンによっても文面が変わります。
ビジネスメールのつくり方と注意点
そもそもメールで謝罪文を送ること自体が失礼に当たることもあります。しかし、急を要することなど、時間短縮に繋がるのがメールのメリットです。ビジネスメールでは、相手方のお名前を出したあと、一番最初の一文に盛り込むのが自然です。
手紙もメールにおいても、事情を説明する場合に言い訳がましく伝わらないように気をつけましょう。
「ご無礼」以外のお詫びの種類
お詫びには「ご無礼をお詫びいたします」以外にもさまざまな表現の仕方があります。社会人マナーとして恥をかかないようにバリエーションをおさえておくと、いざというときに便利です。
「ご無礼」以外の例文
- 「申し訳ございません」
- 「面目ないです」
- 「お騒がせしました」
- 「ご心配をおかけしました」
- 「ご迷惑をおかけしました」
- 「陳謝いたします」
- 「深く反省しております」
- 「お詫びの言葉もありません」
- 「考えが及びませんでした」
- 「あるまじきことでした」
- 「非礼の数々をお許しください」
間違えても「すみません」は同僚や友人など、立場が同じ位置の人に向けて使うので、ビジネスシーンでは気をつけましょう。
まとめ
お詫びをするときは、とにかくすばやく、素直に受け入れて心から伝えることが大事です。「ご無礼」を使ったお詫びは丁寧な表現として相手にソフトに伝わるので、「ご容赦ください」を使ってお許しをこう文章も入れながらぜひマスターしてみてください。さらっと謝ることができる、社会人マナーをわきまえた大人はかっこいいものです。