「不肖」(ふしょう)の正しい使い方とは?意味と例文も紹介

ちょっと古風な言葉のひとつに「不肖(ふしょう)」があります。現代ではそれほどポピュラーな表現ではありませんが、古い小説やアニメなどで見聞きしたことがあるという人もいるのではないでしょうか。今回はそんな「不肖」の正しい意味と具体的な使い方を紹介します。



「不肖(ふしょう)」の意味とは?

「不肖+名前」で謙遜の表現

「不肖(ふしょう)」の意味は文脈によっても少しずつ変わりますが、もっとも一般的なのは自分に対して使う謙遜の表現でしょう。たとえば、「不肖」のあとに自分の名前を続けて「不肖、山田花子。精一杯がんばります」といえば、「この程度の人間ですが、自分なりに一生懸命がんばります」という意味になります。

控えめというより、やや自虐的なニュアンスさえ伝わってくる「不肖(ふしょう)」という表現。適切に使いこなすために、漢字の意味も確認しておきましょう。

「肖」は「あやかる」という意味

「不肖(ふしょう)」の「肖」は、一文字では「肖る(あやか・る)」と読みます。たとえば、縁起物の七福神にちなんで店の屋号を「えびすや」と名乗ったり、すぐれた業績を残した偉人の名前を冠した町があるなど、好ましい事物に便乗することでわが身にも何らかの恩恵を願う行為を「肖る(あやかる)」といいます。

「肖る」に否定を意味する「不」を付けることで「肖らず(あやかっていない)」ことを表すのが「不肖」という言葉で、何ら好ましいものの恩恵を受けていない(人徳に乏しい)という意味になります。

「肖」は「似ている」という意味

特定の人物に似せて描かれた絵を「肖像画(しょうぞうが)」と呼ぶように、「肖」には「似ている・似せる」という意味もあり、すぐれた人物のそばにいるのに少しも感化されず、良い影響を受けていないことを「不肖」と表現します。

父親を中心とする「家制度」が規定されていた戦前の日本では、家長である父親に似ていない子を指して「不肖の息子」などと言ったようですが、制度が廃止されて以降は師匠や上司が父親に代わる権威となりました。立派な人物に対して見劣りする、相応しくない弟子や部下という意味で使用されます。

「不肖」の類語と対義語

不肖の類語は「拙い(つたない)」など

「不肖(ふしょう)」とよく似た意味をもつ言葉に、「不束(ふつつか)」や「拙い(つたない)」などがあります。「ふつつか」には躾が行き届かず気が利かない女性を卑下するニュアンスがあり、古くから自分の子どもに対して「不束な娘ですが」のような謙遜の表現として用いられてきましたが、現代では女性に対する人格否定と認識されることもあります。

同じく「つたない」も未熟で劣っていることを表す言葉ですが、こちらは「つたない英語」「つたない筆文字」のように何らかの技術が劣ることを表すへりくだった表現で、ビジネスシーンでも比較的よく耳にする言い回しです。

謙遜を意味する一人称の代名詞「小生(しょうせい)」

自分自身をへりくだった言い方で表現する際、「不肖」に近い意味で使われるのは「小生(しょうせい)」という言葉です。男性の一人称で、手紙などの書き言葉にのみ使用されます。話し言葉で「小生は・・・」とは言わないので注意しましょう。

「不肖の息子」の対義語は「愛息子(まなむすこ)」など

「不肖」を一人称の謙遜に使う場合の対義語はありませんが、できの悪い息子や期待されていない弟子という意味であればその反対は「自慢の息子・愛息子(まなむすこ)」「愛弟子(まなでし)」となります。すぐれた素質を認められ、特段の手間と愛情を注がれた存在のことです。

「不肖(ふしょう)」の例文と使い方の注意点

身内について「不肖の~」は間違い

自分の子どもや兄弟のことを卑下して「不肖の~」を使うと「わが身内にしては愚かな~」という意味になり、自分自身を高めることになってしまいます。「不肖の父」という言い方も一般的ではありません。

家族のことを言い表す謙譲語には「愚息(ぐそく)・拙女(せつじょ)・愚父(ぐふ)・愚母(ぐぼ)」などがありますが、たとえ身内であっても「愚」は卑屈すぎると感じる人も増えています。「老父・老母」のほうが耳触りが良いかもしれません。

「不肖の息子ですが」も間違い?

息子がへりくだった態度で両親に接するときに使われる表現で、間違いではありません。自分の父親を称えることになるため対外的には使えないとされますが、日常の会話では自分の不甲斐なさを表すのに使われることもあります。この場合は誤用というよりも、「誇るほどの親ではないけれど、自分はそれ以下である」という謙遜の表現と解釈できます。

謙遜の場合は単純に「未熟者」という意味

一方、自分自身がへりくだるときは、シンプルに「未熟者の~・無才の~」という意味で使われます。「不肖~」と自己紹介しても、「父親は立派な人物ですが、自分はそれに似ず愚かです」ということにはなりません。

「不肖~」を使った例文

以下は「不肖」を使った例文です。パターンとしてはおもに「自己紹介・第三者間での評価・目上を立てるあいさつ」の3つに分けられますが、第三者からの紹介を受けて自己紹介をする場面で「不肖」を使うと紹介者の顔を潰すことになるという見かたもあるようなので、控えた方が無難でしょう。

  • 不肖の身ではありますが、精一杯精進いたす所存です。(自己紹介)
  • 不肖、山田太郎。丈夫な体と素直さだけが取り柄です。(くだけた自己アピール)
  • あの歌舞伎俳優は、不肖の息子をもったために恥をかいた。(第三者としての評価)
  • 不肖の弟子ではございますが、これからもよろしくご指導ください。(弟子から師匠へのあいさつ)
  • 不肖の息子ですみません。(息子から父へのあいさつ)
  • 織田信長の次男は、不肖の息子と呼ばれながらも戦国時代を生き抜いた。(親の才能を受け継いでいない)

まとめ

今回紹介した「不肖(ふしょう)」は、現代ではそれほどメジャーな表現ではありませんが、うまく使いこなせば微妙な気持ちを伝え合うことができるでしょう。ぜひボキャブラリーのひとつに加えて表現の幅を広げてみてください。