財務関連で働いていないとあまり聞きなれない「支払いサイト」という言葉。しかし日本の商習慣では「先に仕入れて後で決算する」という支払方法が一般的で、その際に使われる「支払いサイト」は重要な用語です。そこで「支払いサイト」の意味と使い方に併せて、仕入れ債務回転期間の計算方法も解説します。
「支払いサイト」の意味と語源とは?
「支払いサイト」の意味は”仕入れから現金を支払うまでの期間”
「支払いサイト」の意味は、”商取引において、取引代金の締め切り日から実際に代金が支払われるまでの期間のこと”です。
「支払サイト」と書き表されることもあります。
代表的な支払いサイト「月末締め翌月払い」の意味
代表的な支払いサイトに「月末締め翌月払い」があります。この「月末締め翌月払い」では、月末にその月の売り上げをまとめて請求して、その請求分の支払いは翌月末までに支払われるという契約になります。
代金の締め日から実際に代金が支払われるまでの期間が約30日になるため、この支払サイトを特に「30日サイト」と呼びます。
また「60日サイト」なら支払いは翌々月になります。
「支払いサイト」の語源
「支払いサイト」の「サイト」は英語で「sight」と書くのですが、その意味は日本独特で、手形を振り出した日から支払期日までの期間のことです。
英語の「sight」には視界や視力、見解などの意味がありますが、「手形の決済期間」という意味はありません。外国人には「手形の決済期間」という意味で「サイト」を使ってもわかりませんから、「terms of payment」(支払期間)のような別の言い方をします。
「支払いサイト」の計算をする意味と計算方法とは?
「支払いサイト」を計算して会社の財務状態の安定性を分析
会社の財務状態が安定しているかどうかを知るには、「売掛金などの売上債権」と「在庫などの棚卸資産」の分析に加えて、「買掛金などの仕入れ債務」を分析します。
この仕入れ債務の分析には、「仕入れ債務回転率」と、支払いサイトを計算してわかる「仕入れ財務回転期間」が使われます。
「仕入れ債務回転率」は仕入れ債務と売上原価の関係を知る指標
買掛金や支払手形からなる仕入れ債務と売上原価のバランスを知ることで、業績を上げられる環境にあるのかどうかを判断できます。
仕入れ債務回転率が低ければ決済までに余裕がある一方、回転率が高ければ、商取引の条件は悪く資金繰りも悪くなっていると判断されます。
計算方法は次の通りです。
仕入れ債務回転率 = 売上原価 ÷ 仕入れ債務
仕入れ財務回転期間の計算方法
何日で決済をしているのかを表すのが「仕入れ債務回転日数」で、何か月で決済をしているのかを示すのが「仕入れ債務回転月数」です。
それぞれの計算方法は次の通りです。
「仕入れ債務回転日数」の計算方法:
仕入れ債務回転日数 = 仕入れ債務 ÷(売上原価÷365(日))
「仕入れ債務回転月数」の計算方法:
仕入れ債務回転月数 = 仕入れ債務 ÷(売上原価÷12(ヶ月))
例えば、売上原価が800万円で、仕入れ債務が買掛金100万円と支払手形50万円を合わせた150万円だとすると以下のようになります。
仕入れ債務回転日数 = 150万÷(800万÷365)= 68.4日
仕入れ債務回転月数 = 150万÷(800万÷12)= 2.3ヶ月
この仕入れ債務回転日数や月数を過去2~3年分の結果と分析すると、会社の業績の傾向を知ることができ、また適切な改善案を見つけやすくなります。
支払いサイトが長いと資金繰りがしやすくなる
仕入れから決済までの期間が長ければ、その分会社は資金繰りを調整しやすくなります。決済までの期間が短ければ仕入れたすぐに利益を出し決済に資金を当てなくてはなりません。ところが支払いサイトが長ければ、決済までの時間を稼ぐことができて、利益を生み出すための余裕が生まれます。
ところが所用運転資金が多い企業では、仕入れ先が少しでも支払い分を早く回収しようとして、決済条件が短縮化されるなどして支払いサイトが短い場合があります。すると、支払いサイトに決済分の資金調達が間に合わず、結果的に支払い不能となることがあります。これが「黒字企業でも倒産」する原因です。
こうした黒字倒産を避けるために、仕入れ債務回転率を見て、十分な仕入れ財務回転期間が設けられているかも分析して、キャッシュフローを明確にすることで、早期に異常を見つけられます。
「支払いサイト」の英語表現とは?
英語表現は「usance」か「terms of payment」
英語で「支払サイト」を表現すると、「usance」か「terms of payment」です。「usance(ユーザンス)」は日本語としても通用しています。
「ユーザンス」の意味は「支払猶予期間」の意味で、支払いまで待ってもらうことです。
一方、「terms of payment」は「支払期間」という意味と同時に、「支払条件」という意味もあります。
例文は次のようになります。
- “usance bill”
「期限付き手形」 - “The company requests usually 90 days usance.”
「その企業は通常90日のユーザンスを求める」 - “The terms of payment is agreed between a buyer and seller for the goods.”
「その商品の支払期限が売り手と買い手の間で同意された」 - “According to the terms of payment he paid 20,000 Yen for the camera.”
「支払条件に従い、彼はカメラに2万円を支払った」
まとめ
「支払いサイト」とは仕入れから決済までの期間を指します。支払いサイトが短ければ決済までの資金調整に急を要しますが、その反対に長いと資金調整がしやすくなります。日本のビジネスでは仕入れが先で支払いが後というのは習慣的になっていることですから、ビジネス用語としてぜひ覚えておきたい言葉です。