「辞令」とは?人事異動などの辞令の種類や効力について解説!

会社などに勤めていると耳にすることのある「辞令」ですが、正しく理解できていますか?今回は辞令とはいったい何なのか、その効力や種類などについて解説してきます。正しく理解しておくことで、いざ辞令が出た時に慌てなくて済みます。また、辞令にかかわる社内規定がどうなっているか確認するのも良いでしょう。

辞令とは?

「辞令」とは会社が発令するもの

「辞令」とは、”官職や役職などの任免をする時に発令されるもので、それを示す文書のこと”です。つまり、会社など雇用主側が従業員に対して、人事異動や転勤、昇給や昇進などを命じることに当たります。社内報や掲示板などで社内の従業員全体に公表されることもあれば、本人のみに知らされるものもあります。

「辞令」は法律で義務付けられたものではない

辞令を交付することは、法律で義務付けられたものではありません。会社の方針や意向を伝えるための命令文書に当たります。連絡文書ではなく命令文書なので、その方針や意向に従業員は従う必要があります。

辞令の効力とは?

「辞令」は基本的には拒否できない

辞令は会社の決定事項として発令されるため、発令された後で従業員側から発令取り消しを求めたり変更を求めたりすることはできません。異動や転勤に関しての拒否もできません。

「辞令」を阻止したいなら内示段階で拒否する

転勤や転属などが決定する前に、人事部もしくは上司から「○○支店に行ってくれるか?」といった打診があるはずです。辞令を阻止したい場合は、この非公式の内示や打診の段階で拒否しましょう。辞令は書面に記載された日付か発令された瞬間からその効力を発揮することになります。

「辞令」は書面でなくても効力がある

多くの場合、辞令は書面で発令されますが、書面でなくても問題ありません。辞令を発令する権限を持った人が発令すれば、口頭であっても効力を発揮します。ただし、労働基準法で労働条件や基本給などを明記するよう決められている辞令、例えば採用辞令などは書面で発令しなくてはなりません。

「辞令」の種類と例文とは?

採用辞令

新たな人材を採用する際に交付するもので、採用が決まったことを伝える辞令です。基本給や採用日のほか、試用期間や労働条件を、会社は採用者に明示することが労働基準法で義務付けられているためです。テンプレートを紹介します。

○○発第○○号
○年○月○日

山田 一郎 殿

株式会社○○
代表取締役 鈴木太郎

 

 

辞令

 

貴殿を○月○日付をもって社員に採用する。ただし入社後○ヶ月間は〇○での研修を命じる。基本給は月額□□円とする。

 

 

以上

 

 

 

退職辞令

従業員の意思で退職する場合、通常退職願いや退職届を提出します。この場合会社からの退職辞令を発令しなくても、退職願いなどが人事部もしくは上司に届いた時点で退職辞令と同様の効力を発揮します。退職辞令がなくとも退職ができることになります。

配属決定辞令

採用と同時に配属に関する事柄を命じる辞令もあります。例文は次の通りです。

貴殿を○年〇月○日付をもって社員に採用し、△△部勤務を命じる。基本給は月額□□円とする。

配置転換辞令

従業員の配属先をある程度の期間ごとに変えて、さまざまな職務を経験させる方針の会社があります。従業員を適材適所に配置することや、組織を活性化するため、組織の方針変更のため、病気や育児・介護による欠員のためなどさまざまな目的があります。就業規則に配置転換命令が出せることが明記されていれば、社員の同意はなくとも発令することができます。例文を紹介します。

貴殿を○年〇月○日付で、△△課から□□課への配属とする。

転勤辞令

転勤は同じ会社の異なる勤務地へ異動することです。辞令の例文を紹介します。

○年〇月○日付をもって、△△支店勤務を命ずる。

転籍辞令

転籍は異なる会社へ籍をうつすことです。多くの場合はグループ会社間で行われます。辞令の例文を紹介します。

○年〇月○日付をもって現在の任を解き、○年△月△日付をもって□□株式会社への転籍を命ずる。
赴任にあたり○年〇月○日から○年△月△日まで、□日間の休暇を与える。

辞令が出た時の挨拶とは?

お世話になった方々への挨拶例

人事異動の辞令が出た際、所属している部署内でスピーチをする機会があります。その時に最低限入れておきたい内容が入った挨拶例を紹介します。

○○日付けで異動することになりました。山田一郎です。
今後は○○部○○課にて業務を担当する予定です
ここで培った経験を活かし、新しい部署でもお役に立てるよう邁進していく所存です。
異動した後も何かと関わりがあるかと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

取引先への挨拶メール書式

取引先など、お世話になった社外の人に送る挨拶メールの書式を紹介します。

件名:異動のご挨拶(株式会社△△ 山田)

 

本文:

株式会社○○ ○○部
鈴木 太郎様

いつもお世話になっております。
株式会社△△の山田でございます。

私事ではございますが、○月○日付で○○部から△△部へ異動になりました。
後任は、田中次郎が担当させていただきますのでよろしくお願い致します。

短い間でしたが○○様から多くのご指導、ご相談にのっていただいたことに感謝しております。本当に有難うございます。

今後とも、変わらぬお付き合いのほどよろしくお願い致します。

〖○月○日(○曜日)以降の連絡先〗
△△部
TEL:03-0000-0000
Mail:○○@○○○

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〒101-0000
東京都○○○○

株式会社○○
メディア編集局
山田太郎

TEL:03-0000-0000
FAX:03-0000-0000
Mail:○○@○○○
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「辞令」が無効となるケースと対処法とは?

介護による配置転換無効

介護が必要な家族を抱えている場合、転勤などを伴う配置転換の辞令が無効となることがあります。辞令を受けた本人が介護をできなくなること、本人の配偶者の心身への負担が増すことが想像できます。単身赴任をすることで受ける不利益が大きいことで辞令が無効となります。

理由なく地位が下がる配置転換

理由もなく地位を下げられる配置転換の辞令も無効となる場合があります。それまで培ってきた能力を発揮する機会や能力開発の場が失われるとして、辞令の無効が認められます。

辞令無効への対処法

辞令が無効である場合は拒否することができますが、有効である場合は拒否することで解雇される可能性がありますので注意しましょう。無効であるかどうか確認するためにも、費用がかかりますが弁護士に相談することが最善の方法です。弁護士に相談しなくても明らかに無効であると分かる場合は、拒否の意思表明を「配達証明付き内容証明郵便」で行っても良いでしょう。

まとめ

辞令は会社からの命令であり、一般的には拒否することができないものです。入社や処遇に関するさまざまな辞令がありますが、場合によっては辞令自体が無効となる場合もあります。どうしても拒否したい時は、辞令が発令する前に対処するようにしましょう。正しい知識を持って、社会人らしい適切な対処ができるようにしておくと良いでしょう。