取引先や目上の人などに宛てるメールや、お礼状などで見かける事のある「過分」という言葉は、どのような意味で、どのような場合に使われているのでしょうか?また文書だけで使われている言葉なのでしょうか?「過分」や「過分な」という表現の正しい意味と使い方、文例を紹介します。
「過分」の意味と言い回し表現
「過分な」という言葉は、文書やメールではよく目にしますが、ビジネスシーンにおいても普段はあまり耳にしない言葉だと思います。それでは「過分な」とはどのような時にどのような意味でどのように使うのが正しいのでしょうか?
「過分」の意味は「とても・すごく・過剰・過大」
「過分」自体の意味は「とても・すごく・過剰・過大」などの状態を表します。口語表現としての「とても・すごく」などの言葉を、文語表現に置き換えたものが「過分」となります。
文章として成り立たせるためには「過分」単体だけで使うのはなく、「過分な」や「過分なる」などの文章として使うのが一般的です。
「過分な」という言い回しで使う
ビジネス用語として「過分」という言葉を使うときは、「過分な」や「過分なる」という言い回しで使われるのが一般的です。
「過分な」は「身に余る扱いに対して謙遜するさま」とあり、上司や取引先などの目上の人に丁寧に自分をへりくだって気持ちを伝える際の謙譲語となります。
「過分な」の一言で「私のような者にはもったない程の物・事」という内容を表現できる文となります。
「過分」はどんな時に使う?
「過分」は口語表現としての話し言葉ではなく、文語表現としての書き言葉として使う敬語です。少々堅く真面目な文書を作成する場合に使用します。
「過分」を使うのにふさわしい場面や使い方をみてみましょう。
「過分」はお礼や感謝の気持ちを伝える時に使う
「過分」を使う時は、目上の人や取引先から頂き物をしたり、目上の人からのお褒めの言葉や評価などを頂いた時に、お礼や感謝の気持ちをメールや書面で伝える時に用います。
頂いた物・事自体を賞賛する意味と、「自分には分に合わないほどの素晴らしい物」を頂いた感謝の気持ちとして「過分な」を使います。また、良い評価や、お褒めの言葉を頂いた場合にも、自分の能力を上回った評価や賞賛を頂いたという感謝とお礼を表現する時に「過分」という言葉を使います。
「過分」の正しい使い方
「過分」の正しい使い方は、「感謝の気持ちを自分をへりくだって伝える」と考えると正しく使うことができます。
「自分のような者にとても高価な物を贈ってくれてありがたい」という気持ちを伝えたい場合は「過分なる贈り物を頂き、誠にありがとうございます」と表現します。
また、「自分のような物に、もったいない程の高い評価を頂きありがたい」という気持ちの場合は、「過分なる評価に感謝致します」となります。この場合「過分なる」が「自分にはもったいない程の」という謙譲語として表現できる伝え方となります。
「過分」の類語
「過分」という表現は主に書き言葉として用いられる言葉です。
ビジネスでのお礼状や感謝を伝える際の、謙遜の意味を込めて表現する場合と、「身分不相応」という良くない表現として使う場合があるので注意が必要です。
「過分」の類語は「もったいない」など
お礼や感謝の意味を表現する場合は、謙遜の意味を交えた類義語を使います。「過分な」が持っている肯定的な意味を口語的に表現した類義語です。
- 「もったいない」お言葉〜
- 「身に余る」光栄をいただき〜
- 「結構な」お品をいただき〜
- 「温かい」お心遣いをいただき〜
- 「お心のこもった」お品をいただき〜
「過分」の能力を超えた意味としての類義語
自分の能力を超えて相応しくないという意味での表現は、否定的な意味となります。ビジネスシーンにおいては文語的にも口語的にも否定的な意味での「過分な」を直接使う事は稀で、類義語として別の表現を使うことの方が多くなります。
- 「分不相応な」
- 「身の丈に合わない」
- 「相応しくない」
- 「似つかわしくない」
「過分」を使う時の注意点
「過分」という表現には、感謝の気持ちを表す謙譲語として使われる場合の意味と、否定的な表現を示す場合の意味があるという点に注意して使うことが重要です。
肯定的な意味として使う
感謝の気持ちを表現するための謙譲語として使う場合は、肯定的な意味として表現できる「過分」として使います。「私にとってはもったいない程の素晴らしい物・事」を文語で一文字で表現する言葉が「過分」となります。
また、受け取った物や事柄と、「過分」という言葉に前後する表現に気を付けて文章を作るようにします。
否定的な意味としては使用しない
否定的な意味での「過分」という言葉は、分不相応な・身の丈に合わない・相応しくないという意味がありますが、実務上、否定的な意味として「過分」という言葉は使いません。「過分」という言葉をビジネスシーンで使用する場合は、肯定的な意味として取り扱うのが一般的です。
「過分」を使った文例
ビジネスシーンで良く見られる、贈り物を受け取った際のお礼状・会合に招待された際の参加、不参加のお返事・会合参加後のお礼状で使われる「過分」を使った文例を見てみましょう。
お中元やお歳暮、贈り物へのお礼状
取引先や目上の人からお中元やお歳暮などの贈り物を受け取った場合は、お手紙やハガキ、メールなどでお礼状を送ります。実際にお会いする機会が多く、口頭でも伝えられる場合があったとしても、一旦文書でのお礼状を送るのがマナーです。
- 「過分なるお心遣いに感謝致します」
- 「過分なお品を頂戴し、誠にありがとうございます」
- 「過分な贈り物を頂き、ありがとうございます」
目上の人からパーティや会合の招待への返信
取引先や目上の人から、祝賀会や結婚披露宴、会合やパーティーへの招待を受けた場合、文書やメールで参加、不参加の返信をするか、先方の指定する形式で返信をします。「過分な」を使ってまずは感謝の気持ちを伝えてから、参加、不参加の意を伝えます。
- 「過分なご配慮ありがとうございます。誠に残念ではございますが〜」
- 「過分なご高配、誠に感謝致します。喜んで参加させていただきます」
- 「過分なお誘いを頂き、誠にありがとうございます。残念ながらこの度は〜」
パーティや会合参加後のお礼状
パーティーや会合へ参加した際、後日、参加に対する感謝のお礼状を書面やメールで送るのが一般的です。よく顔を合わせる機会があって、口頭でも感謝を伝える事のできる相手でも、一旦は文書やメールでお礼状を出すのがマナーです。この場合も「過分な」を使って感謝の気持ちとお礼を伝える事ができます。
- 「過分なおもてなしを頂き、誠にありがとうございました」
- 「過分な機会を与えて頂き、心より感謝致します」
- 「過分なご配慮、誠にありがとうございました」
まとめ
「過分な」は文語的で硬い表現のため、日常ではあまり使われる事はありません。しかしビジネスシーンにおいては、謙譲語として感謝の気持ちを表現するお礼状に良く使われています。「過分な」を使えば、不必要な丁寧語を重ねてお礼を述べる事を避けられる上に、すっきりとまとまった文章でお礼状を作成する事ができます。社会人としてお礼状を出す際には「過分な」を使いこなして、洗練された文章を作る事を心掛けましょう。