「斜に構える」の意味と使い方とは?類語や心理についても解説

社会人になってからよく聞く言葉に「斜に構える」があります。上司や先輩などに「君は斜に構えている」と言われ、意味をあやふやにしたまま素通りしたことはありませんか?

ここでは「斜に構える」の意味と語源、本来の意味と現在の使われ方、類語と英語表現について紹介しています。さて、「斜に構える人」とはどのような人なのでしょうか?

「斜に構える」とは?

「斜に構える」の意味は”ものごとを真っすぐ見ないさま”

「斜に構える」の意味は、“ものごとを真っすぐ見ない・相手と向き合わず皮肉的な態度を示す”です。もともとの「改まった態度を見せる」という意味合いではなく、むしろ逆の意味で現在では使われています。

「斜に構える」は剣道における意味とはややかけ離れ、言葉そのものが説明する通り「ものごとを斜めから見るような不真面目な態度」「普通ではない気取った姿勢」となり、相手に対して誠実さが伝わりにくい態度を表すような意味となります。

もともとの意味「改まった態度を見せる」とは意味が異なり、誤解を与える可能性が高く、さらに誤用も多い言葉の一つと言えるでしょう。できれば言い換えの言葉を使って、相手への混乱を避けたほうが良いかもしれません。

「斜に構える」の読みは”しゃにかまえる”

「斜に構える」の正しい読み方は“しゃにかまえる”です。基本的には「ななめにかまえる」という意味で使われる言葉ですが、「斜に構える」という日本語表現における正しい「斜」の読み方は音読みの「しゃ」となります。

もともとは剣道用語の「刀の構え方」

もともと「斜に構える」は、「剣道の刀の構え方」で使われている言葉です。剣道には5つの基本的な構え「上段、中段、下段、八相、脇構え」があり、それぞれ決まったスタンスと意味を持ちますが、「斜に構える」はこの中で「中段」の構えを指す言葉です。

剣道の5つの構えの中で最も基本となるのが「中段」であり、他の4つの構えに移りやすく、また相手からの攻撃も防御できる特徴を持っています。「中段」はあらゆる状況に対応できるスキのない構えでもあり、試合が始まる前に、お互いが向き合う時の基本姿勢でもあるのです。

「斜に構える」の元々の意味は”改まった態度を見せる”

前述したように、「斜に構える」は剣道の「中段」の構えのことですが、本来は「試合で対戦する相手に、刀を先を下げ、姿勢を斜めにして身構えること」を指していました。ちなみに「中段」とは、剣先の延長部分が対戦相手の目の間か、もしくは左目に来るように構えることで、「正眼の構え」「人の構え」また「水の構え」とも呼ばれています。

「斜に構える=中段」というスタンスは、相手の目に向けて構えるものであり、これから試合に臨むという「身構え」また「心と態度の改め」でもあるのです。つまり「斜に構える」が持つもともとの意味は「改まった態度を見せる」となります。

「斜に構える」の使い方で気を付けたい点と例文

「斜に構える」を使う時は相手に注意

「斜に構える」は「身構える」「ものごとを真っすぐに見ない」「気取った普通では態度をする」ことを意味する言葉です。基本的には相手を褒めるために使われる表現ではないため、言葉を放つ相手や立場には注意が必要でしょう。

たとえば、取引先の相手が気取った態度をとったり、皮肉めいた姿勢でものごとを語ったとしましょう。冗談のつもりで「斜に構えないで、真剣に対応して下さい」と言ったとしても、相手の受け止め方次第では「失礼」にあたることも考えられます。

「斜に構える」には「普通ではなく、斜めからものごとをみる不真面目な態度」という意味も含まれているため、繊細なビジネスシーンでは使う相手やタイミングに気を付けるようにしましょう。

「斜に構える」を”改まった態度を見せる”の意味で使うことは少ない

もともと「斜に構える」は剣道の構え「中段」のことを指し、「改まった態度を見せる」という意味がありますが、現代ではこの意味で使われることはほとんどありません。一般的に浸透している意味は「身構えた」「気取った」「皮肉めいた態度」となるため、たとえ、自分はもともとの意味で使っていても、相手にその意図が伝わる可能性は極めて低いことを留意しておく必要があります。

「斜に構える」を使った例文

「斜に構える」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 今までずっと斜に構えてきたせいで、多くの人に誤解されてきた。
  • 斜に構えた物言いだけには、ならないようにすべきだ。
  • 緊張が裏目に出たのか、面接で斜に構えた態度になってしまった。
  • 斜に構えた態度をとっていると、部長に注意された。
  • そんなに斜に構えなくても、素直に物事を受け入れればどれだけ楽なことか…。

「斜に構える人」の心理と性格とは?

「斜に構える人」は”周囲と一緒になりたくない”と身構えている

「斜に構える」ことは決して悪いことではありませんが、人生において斜に構えたことで、損をしてきたと感じる人もいるでしょう。「斜に構える人」は他人に自分の考えや主張を曲げられたくないため、どうしても身構えてしまう傾向があります。そのため、周囲と一緒になりたくない、他人の色に染まりたくない、と懸命に努めていることが多いのです。

もちろん他人を嫌うという意味ではなく、周囲や集団との関わりに不安や困惑を抱いていることが多いため、「斜に構える」ことで相手を警戒しているのでしょう。

「斜に構える人」は”ものごとに批判的”な面も

「斜に構える人」の特徴で最も目立つ点が「ものごとに批判的」であることです。周囲への愚痴や不満が多く他人を認めようとしない、それ故にいつも孤独で一匹狼のような存在であるとも言えます。

「斜に構える生き方」をやめたい人も多くいる

今まで「気取り過ぎ」「真剣味に欠ける」「普通ではない」などと言われてきた経験はありませんか?「斜に構える生き方」を自覚しながらも、なかなか自分を変えることができず、苦しい思いをしている人も多いでしょう。

「斜に構える生き方」は決して楽だとは言えません。他人を批判し、周囲と反対のことばかりを好む…。そんな生き方から脱却したい人も多くいます。

相手を理解し受け入れることは容易なことではありませんが、自分を特別視せず、集団で群れて生活することで得られることは数多くあります。ことにビジネスシーンにおいては、人との密接なつながりがマネーを生むこともあるでしょう。実際、斜に構えないことで得することも数多くあります。

「斜に構える」の類語と英語表現とは?

「斜に構える」の類語は”しらけた目で”や”冷笑的に”など

「斜に構える」の類語には「しらけた目で」「冷笑的に」「シニカルに」「あざけるように」などが挙げられます。「シニカル」はカタカナ語としても日常的に使われていますが、「ひねくれた」「皮肉的な」という意味があるため、表情に「嫌々感」が出ているようなシーンで言い換えができるでしょう。

「斜に構える」の英語表現は”be cynical about”

英語で「斜に構える」を表現するときは、カタカナ語でも知られる「シニカル=cynical」を使うとよいでしょう。文法的には「You are cynical about everything(君はなんでも斜に構える)」などようになります。

まとめ

「斜に構える」の語源は剣道の最も基本的な構え「中段」で、もともとの意味は「改まった態度を見せる」となります。しかし、現代においては言葉の意味が変わり「ものごとを真っすぐ見ない皮肉な態度をとる」「気取った態度で臨む」というような意味で使われることがほとんどです。誤用の多い言葉の一つでもあるため、使い方には注意が必要でしょう。

「斜に構える」は相手や状況によっては、意味において「混乱」を招きやすい言葉とも言えるため、可能であれば、わかりやすい言い換えの言葉で代用するとよいかもしれません。