「○○を鑑みる」や「○○に鑑みる」などの使われ方をする「鑑みる」という言葉。実は、「○○を鑑みる」が誤用だと知っていますか?誤用を避ける「鑑みる」の正しい使い方と意味、類語との違いを紹介するので、参考にしてください。
「鑑みる」の意味や読み方とは?
「鑑みる」の意味は”先例を参考に考えること”
「鑑みる」の意味は、”先例や規範を参考にして考えること”です。ただ考えるのではなく、比較や参考にする対象がある場合に使われます。例えば、「他社の慈善事業への取り組みに鑑みて、我が社も対策を取り直す必要がある」という例文。
上記の例文では「他社の取り組み」を参考にして自社の対策を考えているため、「鑑みる」の適した使い方と言えます。
「鑑みる」の読み方は”かんがみる”
「鑑みる」の読み方は「かんがみる」です。「鑑」という漢字は他にも、音読みで「カン」訓読みで「かがみ」と読むので、覚えておくといいでしょう。書き言葉で表す場合、形が似ている「鏡」と間違いないよう注意してください。
誤用を避ける「鑑みる」の使い方とは?
「現状を鑑みる」は誤用
「鑑みる」という言葉を使う時、耳にする「現状を鑑みる」や「失敗を鑑みて」という使い方。「現在の状況を参考にして考える」や「失敗例を参考に考える」という意味で使われているのでしょうが、実は誤用であり、正しくは「現状に鑑みる」です。
「現状のことを考える」のであれば、「を」で間違いないのですが、「現状に照らし合わせ、現状以外のことを考える」ため、正しくは「に」になるのです。
先例を参考にした結果を意味する「鑑みた結果」
「鑑みた」を使った言い回し方の1つが、「鑑みた結果」です。先例を参考に考えた結果を意味しており、「鑑みた結果、○○だった」などの使い方をします。
例えば、「過去3カ月の売り上げに鑑みた結果、化粧品の分野からは撤退することが決まった」という例文。上記の例文では、過去3カ月の売り上げを参考に考えた結果、化粧品の分野から撤退するという結論が出たことを意味しています。
「鑑みる」を使った例文とは?
例文①「市況に鑑みると」
「鑑みる」の言い回しとして、「○○に鑑みると~だった」があります。例えば、「昨今の株式市況に鑑みると、活発市況であることがわかった」という例文だと、「昨今の株式市況を参考に考えた結果、活発な市況であることがわかった」という意味になります。
例文②「前年の売り上げに鑑みて」
前の年の売り上げを参考に考えている様子を表している、「前年の売り上げに鑑みて」という文章。例えば、「前年の売り上げに鑑みて、当初予定していた予算を大幅に引き上げることにした」と使えます。
「鑑みる」の類語とは?
鑑みるの類語①「考慮する」
様々な要素を含め、よく考えることを意味する「考慮する」という言葉。「鑑みる」の類語に当てはまりますが、違いがあるため注意が必要です。「考える」ことを意味している点は同じですが、先例や規範など参考とする対象がある「鑑みる」に対し、「考慮する」は判断や行動をする前によく考えることを意味します。
参考の対象となる先例があるのかどうかで、使い分けてください。
鑑みるの類語②「踏まえる」
「判断の基準や根拠とする」という意味を持つ「踏まえる」という言葉。「鑑みる」の類語はいくつかありますが、比較対象があるという点では「鑑みる」に最も意味が近いと言えます。違う点があるとすれば、「鑑みる」は先例と現状を照らし合わせて考えているのに対し、「踏まえる」は先例を基準にして現状を判断していることになります。
段階でいうと「鑑みる」は考える状況であって、判断するまでは至っていません。「照らし合わせて考えている」のか、「基準として判断している」のかで使い分けることができます。
鑑みるの類語③「顧みる」
過去に起きた出来事を考えることや、過去の人を思い浮かべることを意味する「顧みる(かえりみる)」という言葉。過去のことを引き出している点で、「鑑みる」の類語と言えます。
違いがあるとすれば、「顧みる」は過去の出来事や人を思い返している様子を表しており、過去の先例を参考に、現状について考えていることにはなりません。
単に過去の出来事や人を思い返す場合は「顧みる」を、過去を参考に現状について考える場合は「鑑みる」をと、使い分けましょう。
「鑑みる」の英語表現とは?
鑑みるの英語表現は「In view of~」
英語では「In view of~」が、「鑑みる」の意味として使用できます。「~」の部分に比較する対象を当てはめて使ってください。例えば、「In view of past failures」という文章だと、「過去の失敗に鑑みる」という意味の英文となり、「past failures」が過去の失敗を意味しています。
まとめ
先例や規範を参考に、考えることを意味する「鑑みる」という言葉。類語には「考慮する」や「踏まえる」が当てはまりますが、意味に違いがあるため使い分ける必要があります。よく耳にする「○○を鑑みる」という使い方は、正しくは誤用であるため、注意してください。