仕事や友人との会話の中でたまに出てくることがある「火の車」という言葉。言葉自体はシンプルですが、その意味をきちん把握していない方もいるかもしれません。
間違った意味で使うと恥ずかしい思いをしてしまいます。今回は「火の車」について正しい意味や使い方を、例文とともに紹介します。
「火の車」の意味や語源とは?
「火の車」の意味は”経済状況が非常に苦しいさま”
「火の車」の意味は、”経済状況が非常に苦しいさま”です。読み方は「ひのくるま」です。
ビジネスでは経営者が、プライベートではお財布のひもを握っている方がよく使う言葉です。経営がうまくいかず日々借金の返済に動き回っている状況や、生計が立てられないような状況下に置かれている場合に使われます。
名前のごとく、火のついた車に乗って走っているような切羽詰まった状況であることを意味しています。
「火の車」の語源は仏教用語の”火車(かしゃ)”
「火の車」は、仏教用語である「火車(かしゃ)」を訓読みしたものです。
「火車」はその名の通り火が燃え盛った車で、生前に悪行を積んできた者を地獄へ運ぶための乗り物でした。燃え盛る火の中で、悪人は地獄に着くまでひどく苦しめられます。その悪人のさまを、苦しい経済状況の困難さに重ねたことが由来となり使われるようになった言葉が「火の車」です。
「火の車」の使い方と例文とは?
「〇〇が火の車だ」という使い方が一般的
「火の車」は、「〇〇が火の車だ」という使い方が一般的です。この〇〇の部分には火の出どころ、つまり経済状況が苦しくなっている物や状況が主語として入ります。
よく使われている言葉で言えば「経営」や「財政」、また「家計」や「台所」があります。
「火の車」を使った例文
具体的に「火の車」を使った例文を6パターン紹介します。
<ビジネス編>
- 「運用資金がなくなり、途端に経営が“火の車”である」
- 「自転車操業で会社の財政状況はいつも“火の車”だ」
- 「軌道に乗っているように見えるが、内実は“火の車”だ」
<プライベート編>
- 「収入が減って家計が“火の車”だ」
- 「我が家の台所はいつも“火の車”で食べていくのがやっとだ」
- 「彼女は見栄を張っているだけで、内実は“火の車”なの」
例文からみてわかるように、「火の車」はネガティブな印象を与えやすい言葉です。しかし完全に破綻していない時に使うことが多く、苦しい中でもなんとか会社の経営や生活はできていることを表す意味でも使われています。
「火の車」の類語と対義語とは?
「火の車」の類語は”赤字・窮乏”
「火の車」のような、「経済状況が非常に苦しい状態」を表す類語を3つ紹介します。
■「赤字(あかじ)」
「赤字」は支出が収入よりも多いこと、つまり損失があるということを意味します。ビジネスからプライベートまで幅広く使われている言葉です。
- 「今年は徐々に赤字が減ってきている」
- 「急な出費で家計が赤字だ」
■「窮乏(きゅうぼう)」
「窮乏」は、金銭や物品が不足し生活に困っている意味を表す言葉です。なじみのある言葉で言い換えると、「貧乏」や「極貧」などがあります。また極めて貧しい暮らしに置かれている、その人自体のことを意味する場合もあります。
- 「私は窮乏の日にそなえて貯蓄を始める」
- 「世界の貧しい人々の窮乏を救うキャンペーンを企画する」
■「経営不振(けいえいふしん)」
「経営不振」とは、今までの売上が減ってしまい経営がうまくいっていない状況を意味します。ビジネスでよく使われる言葉です。「火の車」ほど悪化してはいませんが、そのまま放っておくと倒産にもつながりかねない危ない状況を表しています。
- 「円高の影響で会社が経営不振に陥った」
- 「経営不振で倒産寸前だったが、今年になって状況が一転した」
「火の車」の対義語は”悠々自適”
「火の車」の対義語として、「悠々自適(ゆうゆうじてき)」という言葉があります。
「悠々自適」は、「悠々=ゆったりと落ち着いている様子」と「自適=思うがまま楽しむこと」が合わさった言葉です。俗世間に振り回されることなく、思うがまま心静かに暮らすことを意味します。
- 「定年退職後は、悠々自適の生活をしている」
- 「海外に移り住み、悠々自適な人生を送っている」
「火の車」を英語表現とは?
「火の車」は英語で”strapped”
経済状況が非常に困難である「火の車」を英語に翻訳する場合は、“無一文の”という意味を持つ「strapped」という表現が適切です。使うときは、「be strapped for cash」と表現します。
もし不足程度の状況なら「be short of cash」を使うといいでしょう。切羽詰まった状況から少しおだやかな表現となります。
英語表現「火の車」の例文
英語で「火の車」の表現を使いたいときには、以下の例文を参考にしてください。
- “Our company are perpetually strapped for cash.”
「我が社は年がら年中“火の車”だ」 - “I’m always strapped for cash.”
「私はいつも“火の車”だ」 - “She appears to be well-off, but actually she is short of cash.”
「彼女は裕福そうに見えるけど、内実は“火の車”なの」
まとめ
「火の車」はなかなか使う機会がないかもしれません。しかし正しい知識を持っていてれば、実際その言葉に出くわした時に恥ずかしい思いや相手に失礼な返答をすることは避けられます。
知っている言葉が多い方が、ビジネスで失敗することが減りますのでしっかりと覚えておきましょう。