ビジネス上のやり取りは敬語が基本です。しかし丁寧な言葉づかいを心掛けているつもりで、意味や使い方をしっかりと理解せずにやみくもに敬語を使っていることはありませんか?それでは返って未熟な印象を相手に与えてしまい逆効果となることも。そんな風に、ある意味適当に使われがちな敬語の一つが「させていただきます」です。ここでは改めて「させていただきます」の意味や使い方を見直してみましょう。
「させていただきます」の意味・過去形
「させていただきます」の意味は「させてもらう」
「させていただきます」は、「させてもらう」という意味があり、この言葉の謙譲語にあたります。文化庁によって平成19年2月にまとめられた「敬語の指針」で、「させていただく」は次のように定義されています。
- 自分が行うことが相手、または第三者の許可を受けている
- 自分が行うことによって恩恵を受けると言う気持ち、または事実がある
この2つの条件を満たす場合に、「させていただききいます」を使うのが適切になります。
「させていただきました」は過去形
「させていただきました」は、「させていただきます」の過去形となるため、「許可が必要で、自身が恩恵を受ける場合」に使用するとよい言葉です。
「させていただきます」同様、「許可が必要ない場合」など、多用してしまうと慇懃無礼な印象を与えかねない言葉となりますので、気を付けて使いましょう。
「させていただきます」のよくある3つの誤用パターン
ベテランの社会人でも、「させていただきます」を不適切に使用している方は決して少なくありません。ここでは「させていただきます」のよくある間違った使い方をご紹介します。
誤用パターン1:許可を得る事柄ではない
わざわざ相手からの許可を得るような事柄ではない場合に「させていただきます」を使うのは適切ではありません。
例えば「(自分の)スケジュールを調整させていただきます」、「(自分に届いたメールを)確認させていただきます」のような使い方は不適切です。
誤用パターン2:許可を得ていない
まだ相手からの許可を得ていないのに「させていただきます」を使うのは適切ではありません。
例えば、まだ上司からの許可を得ていないのに「〇月×日、お休みさせていただきます」と断言するのは、自分勝手で失礼だと取られかねません。そのような場合は「〇月×日ですが、お休みをいただくことは可能でしょうか?」と伺う表現にするのがいいでしょう。
誤用パターン3:二重敬語になっている
「拝見させていただきます」は一見正しい敬語のように見えます。しかしこれは間違いです。
「拝見」は「見る」の謙譲語、そして「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語なので二重敬語になっています。「させていただきます」を使うことで「謙譲語+謙譲語」の二重敬語になっているパターンは非常によく見られます。
「させていただきます」どちらが誤用?
ケース1は「取引先からの許可を受けて」おり、かつ部長に挨拶ができるという「恩恵が受けられる」ため、2つの条件を満たしています。そのため、適切な使い方と言うことができます。
しかし、ケース2は連絡をすることに対して相手からの許可を受けたわけではなく、また連絡をすることによって自分自身が恩恵を受けるわけでもありません。そのため「させていただきます」を使うことはあまり適切であるとは言えません。
「させていただきます」を「いたします」に言い換えると?
「いたします」の意味
「いたします」は「する」の謙譲語。「させていただきます」は「させてもらう」の謙譲語です。
そのため、原則としては前述の通り相手の許可が必要な行為には「させていただきます」を、許可が必要ない行為には「いたします」を使用するのが良いでしょう。
「いたします」に言い換えてスマートに
「させていただきます」を使うときは、謙虚な姿勢を相手に示すことを狙いとしていることが多いのではないでしょうか?しかし、あまりにも「させていただきます」を使いすぎることは、過剰にへりくだって見えたり、文章がくどくなったりと決していいことばかりではありません。
「させていただきます」は「いたします」と言い換えても十分に敬意は伝わります。特に相手からの許可を必要としない事柄の場合は「○○いたします」と言い換えたほうがスマートでしょう。
「いたします」を使って脱「させていただきます症候群」
とにかく何でもかんでも語尾を「させていただきます」と話す人を「させていただきます症候群」と呼びます。
本人は控え目な態度を示すつもりで「させていただきます」を使っていると思われますが、周りからは「言葉の意味や用途を理解していない未熟な人」という目で見られているということが、この「させていただきます症候群」という呼び方に表れています。
「自分の言葉の使い方は正しいか?」「”いたします”に言い換えはできないか?」自分の発言を振り返って、言葉の使い方に気を付けてみましょう。
まとめ
「させていただきます」は「自分にとって恩恵のある事を、相手の許可を受けた上で行う」場合に用いる言葉だと言うことが分かりました。それ以外のケースで使うことは、例え謙虚な姿勢を示すためだとしても返ってマイナスのイメージを持たれかねません。敬語は意味や使い方を正しく理解し、適材適所で使うことが大切です。