「釘をさす」の意味とは?使い方の例文と類語・英語表現も紹介

「釘をさす」(釘を刺す・くぎを刺す)は、恐ろしげな印象を受ける方もいるかもしれませんが、ビジネスや日常会話においては使う機会も多く、意味をしっかりと理解しておきたい言葉です。今回は「釘をさす」という言葉について意味と由来・使い方を解説するとともに、類語や英語での表現も紹介します。

「釘をさす」の意味や由来・語源とは?

意味は「あらかじめ念を押す・注意や警告をする」

「釘をさす」の意味は、”あらかじめ念を押す”です。後からなにか間違いや問題が起こることがないようにするため、あらかじめ相手に注意・警告をしておくことを指す言葉です。。間違いや問題が起こったときに、相手が「聞いていなかった・忘れていた・知らなかった」など言い逃れをしないようにするためです。

日本の木造建築技術に由来する

「釘をさす」という言葉の由来は、日本の伝統的な木造建築の技術「木組み」(きぐみ)にあります。「木組み」とは釘などの金具を使わない工法のこと。

木材に切り込みを入れることや「ほぞ」と呼ばれる穴をつくることにより、木材同士をつなぎ合わせます。かつては日本の木造建築においては「木組み」の工法が用いられていましたが、建物の強度を上げるために鎌倉時代から釘が用いられるようになり、江戸時代から「釘をさす」という言葉が使われはじめました。

「釘をさす」の使い方と例文とは?

「釘をさす」は問題を起こしそうな相手や第三者に対して使う

「釘をさす」という言葉は、間違いや問題を起こしそうな相手や第三者に対して使う言葉です。したがって相手から自分自身に対して「釘をさされる」場合もあります。

「釘をさす」を使った例文

<念押しをする場合の例文>

  • 明日のプレゼンは失敗が許されないから、必ず1時間早く出社するようみんなに釘をさしておいてくれ。
  • 書類を提出するときにはまず私に見せるようにとあれほど釘をさしたのに、なぜ見せなかった?

<問題を起こらないように相手の行動を抑制する場合の例文>

  • 彼は目を離すとすぐさぼりたがるから、一言釘をさしておいたほうがいいね。
  • あなたは何もしなくていいと釘をさされてしまった。
  • うわさになると面倒だからご馳走してもらったことは秘密にするよう釘をさされた。
  • 叔母さんは悪気はないけどいらない一言が多いからなあ。黙っておくように釘をさしておいたほうがいいよ。
  • この銘柄には手を出してはいけないとあれほど釘をさしたのに、聞く耳を持たなかったため、彼は一文なしになってしまった。
  • 主人は浮気をしていることに気づかれていないと思っているみたいだけど、さりげなく釘をさしてやったわ。

<良くない行動や言動を注意する場合の例文>

  • 彼女は最近私用外出が多すぎる。私から釘をさしておこう。

「釘をさす」の類語とは?

類語は「釘を打つ」

「釘を打つ」という言葉も、「釘をさす」と同じ「念押し・警告・注意」の意味を持ちます。しかし「念押し・警告・注意」を表す場合には、「釘を打つ」ではなく「釘をさす」を使うことが一般的でしょう。

「肝に銘じる・警鐘を鳴らす・苦言を呈する」も類語

「肝に銘じる」「警鐘を鳴らす」「苦言を呈する」の3つは「釘をさす」と近い意味を持つ言葉です。

「肝に銘じる」という言葉は「忘れてしまわないよう、大切であると強く意識する」との意味。「釘をさす」の「念押し」に近い言葉として使うことができます。

「警鐘を鳴らす」は「釘をさす」と同じ「注意・警告」の意味として使います。

「苦言を呈する」は「釘をさす」同様に「注意をする」の身を持ちます。しかし「釘をさす」に比べると、厳しく注意する「非難」や「批判」の意味を含んだ言葉です。

「釘をさす」の英語や中国語表現とは?

英語では「to remind ○○ of」など

「釘をさす」を英語で使う場合には「to remind ○○ of」や「to give a warning」を使用するのが適しています。

「remind」は「思い出させる」「注意する」などの意味をもち、「to remind ○○of」というフレーズは「釘をさす」と同じ意味として使うことができます。

「warning」は「警告」の意味を持ち、「to give a warning」というフレーズは「釘をさす」と同じように、「警告する・注意する」の意味で使用します。

中国語では「叮嘱」

「釘をさす」を中国語で使う場合には「叮嘱」を使用するのが適しています。「叮嘱」は「何度もくりかえして言い聞かす」という意味を持つ動詞で、「念を押す」の意味として使うことができます。

「釘をさす」の類似表現とその違い

「釘をさす」に類似した「釘」を使った表現および「○○をさす」という表現について、その意味と「釘をさす」との違いについて紹介します。

「釘」を使った慣用句・ことわざ

「釘が利く」(くぎがきく)は、「意見をしたことの効果があったことを表しています。「釘をさす」が行動する前に使う言葉であるのに対して、「釘が利く」は行動した結果に対して使う言葉となります。

一方、「釘になる」の言葉は「手や足が釘のように冷たくなり凍える」状態を表す「釘」そのものの状態を例える表現となります。

「さす」を使った慣用句・ことわざ

「水をさす」という言葉は「横からわりこんで邪魔をする」、「油をさす」は「おだてる」「煽る」という意味をそれぞれ持っています。また「とどめをさす」という言葉は「二度と立ち上がれないよう確実に倒すこと殺すこと」を意味します。

これらは「○○をさす」という表現ではありますが、いずれも「釘をさす」とはまったく異なる意味を持つ言葉です。

まとめ

「釘をさす」とは、後になって間違いや問題が起こらないように、事前に念押しや警告をすることで、ビジネスにおいては頻繁に使う言葉です。しかし慎重になるがゆえに、むやみやたらと「釘をさす」と、相手は信頼されていないと感じてしまうこともあるでしょう。「釘をさす」ときには、適切なタイミングや言い方についても心がけるようにしてください。