マネージャー職での面接において企業が採用基準とする一つに「ヒューマンスキル」があります。いくら技術力に優れていても、豊富な知識があっても、「ヒューマンスキル」が備わってなければ業務を遂行することは困難となるでしょう。
ここではテクニカルなスキルと併せて企業が求める「ヒューマンスキル」の意味と定義をはじめ、種類と具体例、「ヒューマンスキル」関連のおすすめ本を紹介したいと思います。
「ヒューマンスキル」とは?
「ヒューマンスキル」とは「対人関係を良好に保つ能力」
「ヒューマンスキル」とは、「対人関係を良好に保つ能力」です。英語の「human skill」のことです。
「ヒューマンスキル」はマネージャーや管理職などの立場にある人に求められる能力で、組織や企業で統括するあらゆる業務を円滑に遂行するための能力です。つまり「ヒューマンスキル」が欠けている場合、業務に支障が出てくる可能性も高くなるということになるでしょう。
「ヒューマンスキル」の提唱者は「ロバート・カッツ」
マネジメントに求められる能力の一つ「ヒューマンスキル」を提唱したのは、「ロバート・カッツ・L(Robert Katz L」という人物です。
カッツ氏は名門ハーバード大学の教授であり、また経営学者としても知られていますが、組織や企業が統括するあらゆる業務が円滑に回るにはどのような能力が必要か、研究を重ねて答えを導き出したことでも有名です。
「人」という歯車を有効的に回転させ、個人のみならず、グループや部署などのまとまりをも先導するマネージャーや管理職の「必須能力」をまとめ、多くの企業が実践の場に取り入れている能力の定義となります。
「ヒューマンスキル」の項目一覧と例とは?
「ヒューマンスキル」の項目一覧を挙げながら、具体例をみてみましょう。
「ヒューマンスキル」の7つの項目
「ヒューマンスキル」はの7つの項目に細分化されています。
- コミュニケーション能力
- ヒアリング能力
- 交渉能力
- プレゼンテーション能力
- 働きかける能力
- 高い向上心
- リーダシップ能力
それぞれの能力を強化することによって、マネジメントに必要な「対人関係能力」がレベルアップします。組織や企業で統括する立場になる人は自身のウィークポイントをみつけ、能力アップを図っていくことが大切です。
「ヒューマンスキル」7つの項目の例
■コミュニケーション能力
ヒューマンスキルの軸。人間関係を有効に維持する能力。職場でのさややかな挨拶や同僚や後輩への声掛け、また気軽な会話が自然にできます。
■ヒアリング能力
相手の話を正確に理解できる能力。相手の言葉に耳を傾け、複雑な内容でも要点を読み取ることができます。
■交渉能力
人と人、グループとグループの間に立って、双方の異なる意見を争うことなく交換する能力です。お互いにベネフィットがあるよう、上手に話を進めて行きます。
■プレゼンテーション能力
目的やゴール、メリットや自分の意見を伝える能力です。単なる自己主張ではなく、起承転結を踏まえてわかりやすく話をすることができます。
■働きかける能力
部下の能力ややる気を引き出す能力。FBやミーティングを通し、業務における動機付けを行うことができます。
■高い向上心
自己管理を徹底し、ポジティブに自己能力を磨き続ける能力を指します。研修に積極的に参加したり、新しいアイデアを常に自分の言葉で発信できる力です。
■リーダシップ能力
グループや部署を先導する能力です。困難にぶつかっても正しい決断ができ、バックアッププランやトラブルシューティング能力など、全体的に強い責任感が発揮できます。
ヒューマンスキルを磨くには「研修」に参加するのがおすすめ
「ヒューマンスキル」を磨くためには、知識のみならず実践的なOJTを踏まえて学ぶことができる「研修」や「トレーニング」がおすすめです。
企業は研修対象者に対し該当する「補助金・助成金制度」を利用することもできるでしょう。企業の活性化や生産性向上のためにも、マネージャー層や管理職に「ヒューマンスキル」を磨く研修を提供していくことが大切です。
カッツの3能力とは?
「ヒューマンスキル」を提唱したカッツ氏は、マネージャーや管理職に必要な能力を3つのエリアに分類しています。「ヒューマンスキル」の前後に位置する2つの能力「テクニカルスキル」と「コンセプチュアルスキル」についても理解を深めましょう。
「テクニカルスキル」は「業務を滞りなく遂行できる能力」
マネージャー層に最も必要される「テクニカルスキル(technical skill)」は、組織や企業の歯車となる業務を滞りなく遂行できる能力を指します。それぞれの業務に関わる専門的な知識を保持し、的確に指示できる能力のことです。
「コンセプチュアルスキル」は「ものごとを的確に捉える能力」
「コンセプチュアルスキル(conceptual skill)」は、言葉通り「概念か能力」のことです。ものごとの本質を見極め状況を的確に捉える能力を指しますが、例としては市場動向や今後の展開、また戦略や改善への立案などを、組織の現在の環境や状況を考慮して提案・実行する能力などが挙げられます。
役職別で見る3つの能力の必要度
カッツの3能力においては役職で必要となる比重が少しずつ異なります。まず、組織や企業に属するトップ3の階層をトップから順に「経営者層」「管理職層」「マネージャー層」として見てみましょう。
「経営者」は「コンセプチュアルスキル」と「ヒューマンスキル」に最も比重を置き、「管理職」は「ヒューマンスキル」を中心にそれぞれ3つの能力がバランスよく必要となります。そして「マネージャー職」は「ヒューマンスキル」と「テクニカルスキル」が最も求められます。
もちろん、経営者でもある程度の「テクニカルスキル」、また「マネージャー職」でも「コンセプチュアルスキル」への理解は必要となるため、知識のアップデートはマストと言えるでしょう。
「ヒューマンスキル」を学ぶためのおすすめ本とは?
「ヒューマンスキル」を磨くための第一歩として読んでおきたいおすすめ本を2つ紹介します。
働く人のための「読む」カウンセリング――ピープル・スキルを磨く
役職を問わず、人間関係とつまづいた時に読みたいカウンセリング型の本です。人間関係の法則をはじめ、職場でのトラブル解決の手段やポジティブライフで必要な項目が具体的に載っています。
伝える力
「ヒューマンスキル」の軸となる「コミュニケーション能力」に特化した一冊です。「話す」「書く」「聞く」能力を高めて対人関係をスムーズにする方法がわかりやすくまとめてあります。物事の本質を読み取ることで周囲の人から好かれる人物になることができる、仕事もやりやすくなる、その他「ヒューマンスキル」を習得するメリットが満載です。
まとめ
向上心あるビジネスパーソンなら、組織や企業で昇格することは大きな目標でもあることでしょう。しかし、マネージャーや現場監督、中間管理職の座をせっかく得ても「ヒューマンスキル」が備わっていなければ、対人関係を良好に保つことは難しいかもしれません。
周囲で動く業務を滞りなく遂行するためにも、「ヒューマンスキル」の7項目を意識し、相手の立場で言葉を伝えたり、正確に状況を捉える力をつけていきましょう。