「白河夜船」という言葉は、映画のタイトルにも採用された四字熟語です。言葉の響きから美しい古都の情景が浮かんでくるという人もいると思いますが、意味を理解している人は少ないかもしれません。ここでは「白河夜船」の言葉の由来と意味、使い方で気を付けたい点と類語について紹介しています。参考になると幸いです。
「白河夜船」とは?
「白河夜船」の意味は”実際は知らないのに知ったフリをすること”
四字熟語「白河夜船」の意味は、“実際は知らないのに知ったフリをすること”です。本当は経験していないのに、あたかも経験したような口ぶりで話をすることを表しています。
「白河夜船」の読み方は”しらかわよふね”
「白河夜船」の読み方は、“しらかわよふね”です。「白河夜船」の「夜船」を”よぶね”と読むこともありますが、「白河」を”しろかわ”と読むのは誤りとなります。
「白河夜船」は”京都の景色を知ったかぶりした話”による
「白河夜船」という言葉は京都で最も美しいエリアとも言われる「白河」に深い由縁があります。
昔、京都を旅してきたという人物が、京都・白河について「白河はどのような場所でしたか?」と聞かれたそうです。そして、こう答えました。「いや、夜に船で通ったので、よくわからない」と…。
しかし、この人は実際には京都を探訪してわけではなく「京都を見てきたフリ」をしていただけでした。「白河」という言葉の響きからうっかり「川」だと思い、「真っ暗闇の夜に船で通り過ぎただけだから知らない」と答えてしまったことが、「白河夜船」という言葉の始まりだとされています。
「熟睡し周囲で何が起こっているか気付かない」の意味もある
「白河夜船」は言葉が誕生した由来からやや意味が転じますが、二つ目の意味は「熟睡して何が起こってもわからないこと」です。
仕事やプライベートで忙しい時間を過ごした後や、逆に気分的にホッとし心が落ち着いている時、人は周りのことに何も気づかず寝付いてしまうことはありませんか?朝までぐっすりと熟睡してしまい、周囲の騒音や出来事に気付かない様子が「白河夜船」です。
「白川」「夜舟」と書くこともある
「白河夜船」の「白河」は京都・賀茂川から東山までの地域のことを指しますが、地名の「白河」を使わず「白川夜船」と書くこともあります。また「夜船」を「夜舟」と書くこともあるので、あわせて覚えておきましょう。
「白河夜船」の使い方と例文とは?
睡眠・女性続いて「白河夜船」の使い方と例文を紹介します。
「白河夜船」は熟睡して気づかなかったときにだけ使う
「白河夜船」は「熟睡して何も気づかない」という意味の四字熟語ですが、気づかない理由は「ぐっすり寝ていたから」となります。そのため、「ヘッドフォンで音楽を聴いていたから」「うっかりしていたから」「集中してなかったから」という理由で周囲のことに気づかなかった時には使われません。
また、「知ったフリをする」という意味において、「悪意を持って人をだます」というニュアンスで使うのも正しい使い方ではありません。あくまで「自分を大きく見せるために、自慢をする意図で嘘をつく」「話に信用性がない」という時に使うようにしましょう。
「白河夜船」を使った例文
「白河夜船」を使った例文を5つ挙げてみます。
- 弟が音楽のボリュームを最大に上げていたが、私は白河夜船で耳に入らなかった。
- 玄関のベルを鳴らし続けたが、家族は白河夜船だったため裏口から入るはめになった。
- 白河夜船でも、あのサイレンの音が聞こえないなんて、ちょっと信じられないよ。
- 同僚は世界の遺跡をほぼ周ったと言っているが、どうやら白河夜船らしい。
- Aさんの自慢話は、ほぼ白河夜船だと噂が立っている。
「白河夜船」の類語とは?
「白河夜船」の類語には、どのような表現があるのでしょうか?
「泥のように眠る」「昏々と眠る」は熟睡の類語
「白河夜船」で「熟睡して何も気づかない」の意味の類語は、「泥のように眠る」「昏々と眠る」「高いびきをかく」などがあります。
「泥のように眠る」は「寄ったり、疲れ果てて、正体がなく熟睡すること」、「昏々と眠る」は「意識がなく深い眠りにつくこと」、また「高いびきをかく」を「ぐっすりと寝入っていること」をそれぞれ意味します。状況によって使い分けをしていきましょう。
「訳知り顔に」「薀蓄もどき」は知ったふりをする意味の類語
「白河夜船」で「知ったフリをする」の意味での類語は「訳知り顔に」「子賢しげに」「薀蓄もどき」などになります。それぞれ、ものごとについて色々知っているフリをし、得意げに話しをすることを意味する言葉です。
まとめ
「白河夜船」には「本当は知らないのに知ったフリをすること」と「熟睡して何も気づかないこと」の2つの意味を持つ言葉です。
「白河夜船」は「周りに気づかないほどぐっすり寝入る様子」を表す時に使われますが、一方で、聞かれたことに対し「知っている」と嘘をつき、得意顔で話すような状況を表す時にも使われます。「あの人は白河夜船で信用できない」というように、ネガティブな意味で使われることもあるため、話す相手には十分気を付けましょう。