「滅私奉公」という言葉を聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。「滅私奉公」は、人によって抱くイメージの異なる言葉のため、使うときに注意が必要です。今回は「滅私奉公」の意味や使い方を紹介します。また、似ている言葉である「丁稚奉公」との違いも紹介していますので、参考にしてください。
「滅私奉公」の意味と読み方とは?
「滅私奉公」の意味は”公のために私心を捨てて尽くすこと”
「滅私奉公」の意味は、“公のために私心を捨てて尽くすこと”です。「滅私奉公」は「滅私」と「奉公」に分けることができます。
「滅私」の「滅」は、「消滅」や「滅亡」などと使われ、「滅びる、消え失せる」という意味の漢字です。「私」は、自分自身を指していますので、「滅私」とは、「自分自身を消す」という意味の言葉です。
「滅私奉公」として使う場合の「滅私」は、自分の私利私欲を考えない、自分の意見を捨てるという意味で使われています。
「奉公」とは、雇い主のために働くことや、国など公のために身を尽くすことを指す言葉です。「奉」は、「さしあげる」や「尽くす」という意味の漢字です。
「滅私」と「奉公」を合わせて、「公のために私心を捨てて尽くすこと」という意味になります。
「滅私奉公」の読み方は”めっしほうこう”
「滅私奉公」の読み方は、“めっしほうこう”です。似ている言葉に「丁稚奉公」がありますが、こちらは「でっちぼうこう」と読みます。同じ「奉公」という漢字でも、「めっしほうこう」では、「ほ」に濁点がつかないので注意しましょう。
「滅私奉公」は、昔は美徳、今は悪いイメージも
「滅私奉公」は、時代によって印象の変わっている言葉です。例えば江戸時代に書かれた書物である「葉隠」には、「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」という有名な言葉があります。
「自分の命を捨ててでも、主人のために尽くす」という生き方が、武士として道であり、そういった生き方を勧めていると解釈できます。
しかし、現在の日本では「会社のために自分の命を捨ててでも働く」という「滅私奉公」の働き方は、「ブラック企業」や「過労死」などの言葉と結びつき、悪いイメージを持っている方が多いでしょう。
個人の価値観によって、「滅私奉公」に抱く印象が変わってきますので、言葉を使う時には注意が必要です。
「滅私奉公」の使い方と例文とは?
「滅私奉公」は会社や国に尽くすときに使うことが多い
「滅私奉公」は、会社や国に尽くすときに使うことが多いです。例えば、武士は主君に対して滅私奉公していたと言われています。自分の所属している国の一番偉い人を、命をかけて守っていたという意味です。
現代では、会社に対して滅私奉公するという使い方をされることがあります。最近では少なくなってきましたが、毎日寝る間も惜しんで会社のために働くことが正しいとされてきた時代がありました。
「自分の寝る時間を削って仕事をする」「家族との時間を削って仕事をする」というのが、まさに私心を捨てて会社のために働いていることから、「滅私奉公」と言われていました。
「滅私奉公」を使った例文
「滅私奉公」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 会社に滅私奉公をすることが美徳と言われていたのは、もう昔の話だ。
- 会社に滅私奉公しろというのはブラック企業だと言われても仕方がない。
- 寝る間を惜しみ、趣味も持たず働く彼の働き方は、まさに滅私奉公だ。
- 滅私奉公は、家で妻が支えていたからこそできることだ。
- かつての武士は、主君のために滅私奉公をしたと言われている。
「滅私奉公」と「丁稚奉公」の違いとは?
「丁稚奉公」とは”幼い子を見習いとして預けること”
「丁稚奉公」とは、江戸時代などにあった慣習で、幼い子どもを見習いとして、商人や職人のもとに預けることをいいます。預けられた子どもは、見習いとして仕事をし、預け先に貢献します。
商人や職人のもとに10歳前後の子が預けられ、仕事だけに関わらず、日常生活の常識などを身につけたりしていました。
丁稚奉公した子どもは、最低限の衣食住は約束されていましたが、基本的に給料などが払われていないことが多く、現在では労働基準法で違法とされています。
「滅私奉公」と「丁稚奉公」の違いは”私心を捨てるか見習いか”
「滅私奉公」と「丁稚奉公」は、「奉公」という言葉がついていて、見た目は似ていますが、まったく異なる意味の言葉です。
共通点である「奉公」は、雇い主や国などのために働くことを指しています。しかし、「滅私奉公」は、国などの公のために、私心を捨てて働くことで、「丁稚奉公」は、幼い子が見習いとして雇い主のために働くことです。
まとめ
「滅私奉公」とは「公のために私心を捨てて尽くすこと」を意味する四字熟語です。多くの場合、「公」とは、国や会社のことを指します。国や会社のために、自分の私利私欲を考えずに尽くすことが、「滅私奉公」です。「滅私奉公」は美徳と言われていた時代もありましたが、現在では、悪い印象を抱く人も多いため、使う時には注意しましょう。