「烏合の衆(うごうのしゅう)」という言葉は、政治家が他党を批判する発言などで聞くことがあります。「烏合の衆」は、相手を批判する言葉なのでしょうか?この記事では「烏合の衆」の意味や語源となった故事、さらに使い方と例文を紹介します。あわせて類語・対義語と英語表現も紹介しています。
「烏合の衆」の意味と由来とは?
「烏合の衆」の意味は”規律のない人々の寄り集まり”
「烏合の衆」の意味は、“規律や団結力のない、人々の寄り集まり”です。「烏合」とは、カラス(烏)の集まりを統制のない集まりとして例えた言葉であり、「衆」とは、多くの人々という意味です。
「烏」の字は「カラス」の漢字であり、「鳥(とり)」の字ではないので注意してください。
「烏合の衆」の由来は『後漢書』の故事
「烏合の衆」の言葉は、中国古典の『後漢書 耿弇(こうえん)伝』に書かれた故事が出典です。耿弇と部下のやりとりの中で、「烏合の衆など簡単に蹴散らすことができる」と耿弇が述べるくだりがあります。耿弇とは、後漢初代皇帝である劉秀に仕えることになる武将です。漢文では「烏合之衆」の表記となっており、すでに漢時代には成語となっていたことがわかっています。
「烏合の衆」の使い方と例文とは?
「烏合の衆」は”能力のない人の集まり”という意味で使う言葉ではない
「烏合の衆」は統制のない寄せ集めの集団を否定的に表現するときに使われます。先に説明した由来となった故事では、敵軍の弱さを指摘する意味で使われていましたが、現代では政界における他党の批判の言葉として使われます。
注意すべきポイントとして「烏合の衆」は、規律や団結力なくただ集まっただけの人々の集団のことを表現する言葉であり、「能力がない人の集まり」ではないことを押さえておきましょう。例えば他党を批判する「〇〇党は烏合の衆だ」という言葉の意味とは、「〇〇党は無能な者の集まりだ」ではなく、「政治思想や政策がバラバラの、寄せ集めの集団だ」ということを意味しています。
「烏合の衆」は否定的な場面で用いられることが多い言葉ですが、統制がとれなくなった状態の集団を中立的に表現するときにも使われます。
「烏合の衆」の状況を表す例文
「烏合の衆」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 昨今の政党は、理念なく数だけ揃えた烏合の衆となっているのではないか
- 大勢の人が集まるイベントでは、烏合の衆とならないように統制する人が必要だ
- 災害時のボランティアは、まとめる人員がいないと烏合の衆となってしまう
- 飛行機が運航停止となったが、アナウンスがないまま乗客予定者は烏合の衆となって混乱した
「烏合の衆」の類語と対義語とは?
「烏合の衆」の類語と対義語を紹介します。
類語①「有象無象」の意味は”たくさん集まった価値のないもの”
「有象無象」(うぞうむぞう)とは、たくさん集まった価値のないものや、つまらない人のことをいいます。もともとは仏教用語の「有相無相」(うそうむそう)という、この世にある有形無形のすべてのものという意味の言葉が変化して「有象無象」と書くようになり、意味もまた変化して「雑多なつまらないものや人たち」を表すようになりました。
「烏合の衆」は集団自体に意味がないことを表しますが、「有象無象」はその人やもの自体がつまらないものだという意味を持っています。「有象無象のがらくた」「有象無象の輩(やから)」など、否定的に使われます。
類語②「寄り合い所帯」の意味は”統一のない雑多なものの集まり”
「寄り合い所帯」とは、複数の世帯が一カ所に集まって住むという意味の他に、統一のない雑多なものの集まりという意味があります。組織化されていない団体という意味では、「烏合の衆」と同じ意味で使われることもありますが、「衆」ではなく「所帯」の言葉から、寄り集まっている人ではなく団体を指して使われます。
「烏合の衆」の対義語は”一致団結”
「烏合の衆」の対義語としては、「統制がとれた集団」という意味の言葉が求められますが、そのような意味の熟語で適当なものはないようです。
多くの人が一つの目的を持って結束するという意味の「一致団結」が近い意味を持つといえます。
「烏合の衆」の英語表現とは?
「烏合の衆」の英語は”disorderly crowd”や”rabble”など
「烏合の衆」を示すところの「無秩序な人の群れ」を表す英語表現は「disorderly crowd」「rabble」「undisciplined mob」などがあります。
■例文
- 「リーダーなき集団は烏合の衆になりかねない」
A group without a leader could become a mere rabble. - 「イベント会場は烏合の衆で埋め尽くされた」
The event venue was filled with a disorderly crowd.
まとめ
「烏合の衆」とは、カラスの集まりを統制のない集まりとして例えた言葉で、「規律のない状態の、人々の寄り集まり」という意味の言葉です。寄り集まった人々が能力がないという意味ではなく、その集団自体に目的や規律がないことを意味しています。つまり、集団のまとまりがなく、混迷した状態を表現するときに使われる言葉です。
チームプレーが求められるビジネスにおいては、どんなに能力のある人材が集まっていても、目的や規律のない烏合の衆になってしまっては、成果を生み出すことは難しいといえるでしょう。