「桃源郷」の意味と使い方とは?由来と類語・英語表現も

「桃源郷」とは、どのようなところかイメージしたことはありますか?一度行ってみたいと思ったことのある人もいるかもしれません。「桃源郷」は、意外と日常の会話でも使える言葉です。今回は「桃源郷」の意味や使い方、由来となった話を紹介します。

「桃源郷」の意味とは?

「桃源郷」の意味は”世俗を離れた別世界”

「桃源郷」の意味は、“世俗を離れた別世界”です。わずらわしいことのない楽園とも言います。「世俗」とは、世間一般の人が住むところを指す言葉で、「世俗を離れた別世界」とは、普段日常を過ごしている世界から離れた、理想的な世界です。

理想的な世界という意味から、完璧な世界と捉えられることもありますし、架空の場所という意味も含んで使うこともあります。

「桃源郷」の由来とは?

“陶淵明の桃花源記”が「桃源郷」の由来

「桃源郷」の由来は、「陶淵明」の「桃花源記」です。「陶淵明」は「とうえんめい」と読み、中国に4世紀頃にいた詩人です。「桃花源記」は、「陶淵明」が書いた散文で、この時代の散文文学の傑作と言われている作品です。

「桃源郷」は桃林に囲まれた平和で豊かな場所

「桃花源記」に出てくる「桃源郷」は、桃林に囲まれた平和で豊かな場所です。住んでいるのは、数百年前の戦争を避けて、隠れ住み始め、そのまま何も知らずに住み続けている人々となっています。

つまり、桃林があってとても美しく、戦乱などのもめ事のない、理想的な場所として描かれています。

「桃花源記」の内容

武陵の漁師が川に沿って進んでいくと、道に迷い、桃の林に出くわしました。漁師はとても不思議に思い、林の奥を突き止めようとしたところ、川の水源で林が終わっており、山がありました。

山には小さな穴があり、穴の向こうから光が見えたので、船を置いて穴の中に入りました。しばらく進むと、広々として明るいところに出ました。広い平地で、家屋が並び、素晴らしい田や池、桑や竹がありました。自分とは違う衣服を着た村人が、畑で種をまいていました。

村人はとても驚きましたが、漁師を歓迎し、酒や肉料理をふるまってくれました。話を聞くと、村人の先祖が秦の時代の戦乱から逃れて、世間から離れたこの土地に移り住み、外の世界とは、隔たってしまったとのことです。

漁師は外の世界の話をしつつ、数日過ごして、別れを告げました。村人は、外の世界の人には、この土地のことを言わないでほしいと言いました。

漁師は目印をつけながら帰宅し、役所の太守に報告しました。太守は人を派遣して漁師と一緒に探させましたが、見つけることはできませんでした。また、志の高い南陽の劉子騎が、その村に行こうと計画しましたが、実現しないうちに病で亡くなり、その後、探すものはいなくなってしまいました。

「桃源郷」の使い方と例文とは?

「素晴らしい場所」を例えて使うこともある

「桃源郷」は、「世俗を離れた別世界」という意味で、実際には存在しない架空の場所を指す言葉です。しかし、日常生活では、「現実に存在するのが不思議なほど素晴らしい場所」という意味のたとえで「桃源郷」と使うこともあります。

例えば、「旅館の窓から見た景色は、桃源郷のようだった」というように、実際に存在している景色を褒めるときに使うことができます。

「桃源郷」の例文

  • 山道を進んでいくと、桃源郷のような景色を見ることができた。
  • 何気ないいつもの風景が、突然桃源郷のように思えてきた。
  • 桃源郷のような景色が見られると聞いていたが、私にはよくわからない。
  • 異世界に入り込んだ気分になれるアミューズメントパークは、私にとっては桃源郷だ。

「桃源郷」の類語とは?

「桃源郷」と同じ意味の”桃源境・桃花源・武陵桃源”

「桃花源記」に描かれた別世界は、「桃源郷」だけではなく、「桃源境」や「桃花源」「武陵桃源」などと呼ばれることもあります。

「桃源郷」の類語は”別天地・理想郷・ユートピア”

「桃源郷」の類語には「別天地」「理想郷」「ユートピア」があります。「別天地」とは、現実とはまったく違う理想的な別世界という意味の言葉です。「理想郷」は、漢字の通り、理想の村里のことを指します。

「ユートピア」は、イギリスのトマス・モアという思想家が描いた理想の国家のことを言います。

「桃源郷」の英語表現とは?

「桃源郷」は英語で”paradise on earth”や”hidden paradise”

「桃源郷」は英語で”paradise on earth”や”hidden paradise”と表現できます。「paradise on earth」は、直訳すると”地球上の楽園”で、「hidden paradise」は、”隠れた楽園”です。

まとめ

「桃源郷」は、「世俗を離れた別世界」という意味の言葉です。「陶淵明」が書いた「桃花源記」が元となっており、架空の理想的な世界を表しています。現代では、素晴らしい景色などを「桃源郷のようだ」と例えて使うこともあります。ちょっと工夫した誉め言葉になりますので、機会があれば使っていただけると嬉しいです。