「とりあえず」の敬語での使い方とは?意味や言い換え表現も紹介

「とりあえず」という言葉は、友人との会話で使うことも多いため、ビジネスでの使い方に不安があるという人も多いようです。この記事では「とりあえず」の意味とあわせて敬語での使い方や、手紙やメールでの使い方を例文とともに紹介します。加えて「とりあえず」の言い換え方も紹介しています。

「とりあえず」の敬語での使い方とは?

「とりあえず」は敬語をつなげて使う

「とりあえず」の敬語表現は、“とりあえず〇〇します・とりあえず〇〇いたします”です。スピードが求められるビジネスにおいて、最終的な結果がどうなるかはわからないが、取り急ぎの対応をいったん行うという場面は頻繁に発生します。そのようなときは「とりあえず」を敬語につなげて使うことができます。

「とりあえず」の敬語での使い方とビジネス例文

「とりあえず」は、現在どのような状況で、次にどうする予定なのか、ということを説明しながら使うのがよいでしょう。「とりあえず」の意味は、最終段階の手前で臨時の措置としてそれを行う、という意味であるため、そのときの状況や、その後の対応策が明示されないままだと、相手に不安や不信感を抱かせてしまうためです。

  • 準備できるものをとりあえず用意しました。不足分は発注済みです。
  • 現時点で作成可能な資料をとりあえず準備しました。詳細な資料はデータがわかり次第すぐに作成します。

手紙やメールで使うときは前後の状況説明をしっかり入れる

手紙やメールで「とりあえず」を使うときも、前後の状況を含めて記載しましょう。

  • 現時点で確定した事項のみ、とりあえずメールでご連絡いたします。最終的なご報告は追ってご連絡いたします。

また、お中元やお祝いの品物をいただいたときなどに、お礼の手紙やメールを送る際には、感謝の気持ちをとり急ぎお伝えします、という意味で「とりあえず」という言葉を結びの言葉に入れることができます。

  • とりあえず書中をもってお礼申し上げます。
  • まずは略儀ながらとりあえず書中をもってお礼申し上げます。

なお、本来の意味としては、「まずはとり急ぎのお礼をさせていただきましたが、のちほど正式にご挨拶に伺います」という意味となるため、実際には相手の家や会社などに出向いて挨拶をすることを前提とした言葉になります。しかし忙しい現代社会では、実際は出向くことはないという暗黙の了解の上で使われている儀礼的な表現だといえます。

断言することを回避する「とりあえず」の使い方には注意が必要

「とりあえず」は、最終的な結論の終着点には来ていないが、臨時の措置としてそうすることを表します。そのことは同時に、最終的な結果がのちに変りうる「あいまいな状態」にあるといえます。

そのため、あいまいな気持ちや、思考停止の状態にあるときに、「とりあえず」を使ってしまうことがあります。例えば、判断を迫られたがどうするか決めかねるときに「とりあえずそれでいいです」とあいまいな返事をするなどです。

臨時や応急の措置としてそれを行う、という本来の意味として使うのであれば「とりあえずそれでいいです」は言葉が足りないということになります。

特にビジネスシーンにおいては、「とりあえずA案で進め、状況をみて最終決定を行います」というように、あいまいな状態で終わらない説明を付け加える必要があるといえます。

「とりあえず」の意味と使い方とは?

「とりあえず」の意味は”取るべきものも取らずに”そうすること

「とりあえず」の意味は、“取るべきものも取らずに・取るものも取ることができず”です。

最終的にどうするかは別として、臨時の措置としてそれをする、という状況で使います。漢字では「取り敢えず」と書きます。「敢えず」とは、”十分にしおえることができず”という意味です。

「とりあえず」は動詞の連用形をつなげて使う

「とりあえず」は「取るべきものも取らずにそうすること」という意味であるため、「そうすること」にあたる動詞を連用形でつなげて次のように使います。

  • 会議の日程のみ、とりあえず伝える
  • とりあえずメールを入れた
  • 急ぎの報告をとりあえず行った

「とりあえず」の言い換え方とは?

「とりあえず」は、便利で口に出やすい言葉であるために、意思決定を避ける曖昧な表現として使ってしまう傾向があることから、敬語が求められるシーンではふさわしくない言葉だと感じる人もいるようです。前後の状況説明をきちんとしながら使うことで誤解を防ぐことができますが、気になるときは次にのような言い換え方もあります。

「取り急ぎ」は”急いで物事を処理すること”を表す

「取り急ぎ」とは、差し迫った状況の中で、急いで物事を処理することを表します。「取り急ぎの対応を行いました」と言うときは、「とりあえずの対応を行いました」よりも急ぎの緊急度が高いときに使えます。

最終的な報告の前に、現時点でわかっていることを慌ただしくメールで報告するときに「取り急ぎご報告まで」という締め言葉を入れることができます。その場合は、最終報告を入れるという前提に立って「取り急ぎ」を使います。

ちなみに、急ぎの手紙やメールは簡潔に書くことがマナーでもあるため、時候の挨拶などを省略するとともに、最後の締めの言葉も簡潔に書くことは失礼ではありませんが、「取り急ぎご報告まで」という書き方に抵抗がある人もいるようです。そのようなときは「取り急ぎご報告まで申し上げます」とするとよいでしょう。

「至急」は”大急ぎで物事を処理すること”を表す

「至急」とは、大急ぎで、他のことよりも先ずその物事を処理することを表します。「至急対応願います」のように、緊急度が高い状況において使われます。「至急」は他のことを置いてすぐに、という意味ですが、「とりあえず」は現時点でできることをすぐに、という意味となり緊急度が異なります。

「ひとまず」は”次に移る前に何かを行うこと”を表す

「ひとまず」は「一先ず」と書き、次の行動に移る前に一つの経過として先に何かを行うことを表します。「ひとまず開始する」「ひとまず退院する」などと最終段階の手前の状況で行う手続きについて用います。

「とりあえず開始する」「とりあえず退院する」とするときは、最終段階の手前の「臨時」の措置という意味が強いところが「ひとまず」と違うところです。

「まず」は”そのことが優先的であること”を表す

「まず」とは、そのことが他に比べて優先的であること表します。「まずこちらの資料をご覧ください」といった使い方です。

また、「まず」は「通念的に成立する判断はそれである」ということを表す意味もあります。居酒屋などで席についてすぐに「とりあえずビールで」という状況は、この意味での「まず」の誤用であるともいえるかもしれません。このような「とりあえず」の使い方が印象に残るため、「とりあえず」は失礼な言葉なのでビジネスや目上の人には使わない方がよいのでは、という印象が生まれるのかもしれません。

まとめ

「とりあえず」とは、最終的にどうするかは別として、臨時の措置としてそれをする、という状況で使います。つまり「とりあえず」とは、取るべきものも取らずにそうすること、という意味です。次につなげる動詞を敬語表現とすることで、ビジネスでも使える便利な表現です。

しかし便利で口に出やすい言葉であるために、意思決定を避ける曖昧な表現として使ってしまう傾向があります。そのため、「とりあえず」をビジネスシーンで使うときには、前後に説明を補いながら使うのがよいでしょう。