「邯鄲の夢」の意味と使い方とは?類語と英語もあわせて紹介

「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」という言葉を聞いたことがありますか?人生における「栄華」や「成功」について表現するときに用いることが多いですが、意味を理解している人は少ないかもしれません。

ここでは「邯鄲の夢」の語源と意味をはじめ、使い方と類語、また英語表現について解説しています。早速、語源と意味からみていきましょう。

「邯鄲の夢(邯鄲之夢)」とは?

「邯鄲の夢」の意味は”人の世の栄枯盛衰は儚きもの”

「邯鄲の夢」の意味は、“人の世の栄枯盛衰(えいこせいすい)は儚きもの”です。つまり「万物の繁栄は長いものではなく、むしろ短く儚いものである」ということをたとえた言葉です。

「邯鄲の夢」の由来でもお話した通り、ほんの仮寝の間に見た夢が「50年余り」の人生を映し出すものであったというところこから、「人の世は繁栄や衰退を繰り返すが、実際は束の間で、もろいものである」ということを指す言葉とも言えるでしょう。

「邯鄲の夢」の語源は中国の伝奇物語”枕中記”

「邯鄲の夢」の語源は作家・沈既済(しんきさい)が書いた伝奇物語“枕中記(ちんちゅうき)”に由来します。

「邯鄲の夢」の”邯鄲”とは唐の貧しい若者「盧生(ろせい)」が旅の最中に立ち寄った町の名前です。盧生は道教を信泰し道教の教義に基づいた活動をするある「道士」に”栄華が思う通りになるという枕”を借り、一眠りした時に「紆余曲折をしながらも出世をし、50年余りの富貴を極めた」という不思議な夢を見ました。

しかしそれは、宿の主が炊いていた栗の粥が、まだ出来上がっていない程「ごくわずかな時間に起きた体験」だったのです。

「邯鄲の夢」は”邯鄲の枕・盧生の夢・一炊の夢”などとも言う

「邯鄲の夢」は”邯鄲の枕・盧生の夢・一炊の夢”、また”邯鄲夢の枕・黄粱(こうりょう)の夢・黄粱一炊の夢”などとも呼ばれています。

「邯鄲の夢」の使い方と例文とは?

「邯鄲の夢」は人生で大成功を収めた人や企業に対して使える

「邯鄲の夢」は日常的な会話よりも、むしろビジネスシーンで使うことが多いと言えます。経営に携わっている人や企業なら「栄華や鈍化を繰り返しながらも、最高の財力や権力を獲得し、栄華の絶頂を極めること」もあるでしょう。この時、人生を振り返り「しかしながら、この栄華も邯鄲の夢なのかもしれない」と、「この世における栄枯盛衰の儚さ」に感慨深くなるものです。

たとえ一世風靡をしても、またビジネスで破格の富を手に入れても、時代が進むにつれて、それらは風化し薄れてしまうものなのです。このような状況を表現するときに「邯鄲の夢」は言葉の意味を発揮します。

「邯鄲の夢」を使った例文

「邯鄲の夢」を使った例文をいくつか挙げてみます。

  • 会社で素晴らしい成績を残しても、結局人の世は邯鄲の夢でしかない。
  • 定年までの間、出世を続け管理職まで上り詰めた。しかし、いつかは邯鄲の夢だと気づくのだろう。
  • 邯鄲の夢とは虚しいが、富と名声を得てきたことには十分に満足している。

「邯鄲の夢」の類語とは?

「邯鄲の夢」の類語は”南柯の夢”や”有為転変”など

「邯鄲の夢」の類語にあたるのは“南柯の夢(なんかのゆめ)”“有為転変”です。「南柯の夢」は中国の唐時代、木の下で一寝入りしていたある男性が「王の娘と結婚し、太守となって栄枯盛衰を20年経験する夢をみた」という故事が由来の言葉で、意味は「人の世は儚いものである」または「夢のこと」となります。

また「有為転変」は「万物が時代と共に変化し、止まない様子」を表す言葉で、人の世が移り変わり、同じ状態ではないことを表現するときに用いる言葉です。

「長屋の夢を覚ます」も似たような意味がある

「邯鄲の夢」と似たような意味を持つ言葉に“長屋の夢を覚ます”があります。意味は「衝撃的なことが起こることで、平穏な生活に慣れた人を驚かすこと」となりますが、現在では転じて「幸せで平和な生活や時間は永遠に続くことはない」というニュアンスで使われています。

「邯鄲の夢」の英語表現とは?

「邯鄲の夢」は英語で”Life is nothing but a dream”

「邯鄲の夢」の夢を英語にする時は、まず簡単な英語表現に直してみることが大切です。「邯鄲の夢」を「人生は儚き夢にすぎない」というニュアンスで表現するなら“Life is nothing but a dream”とするのが最もわかりやすいでしょう。

また「良いことは来てもすぐに行ってしまう」という意味で使いたい時は“Pleasure come and go soon”と表現することもできます。

「邯鄲の夢」を使った英語例文

「邯鄲の夢」を使った英語例文を挙げてみます。

  • He has been so popular as an actor for a long time but now retired. Life is nothing but a dream.
    あれだけ一世風靡した俳優が、今や隠居生活。まさに邯鄲の夢か。
  • Just like a pleasure come and go soon, all the achievement I have made has been gone. .
    邯鄲の夢のごとく、努力を重ねて築いた功績も儚く消えてしまった。

まとめ

「邯鄲の夢」は中国の伝奇物語「枕中記」に由来し、意味は「人の世の栄華盛衰は儚きもの」となります。同じ意味で「邯鄲の枕」や「盧生の夢」、また「一炊の夢」などと別の表現を使うこともあり、類語には「南柯の夢」や「有為転変」などがあります。

ビジネスシーンや職場では、長きに渡り、紆余曲折をしながらも大成功を収めた人や企業に対し、「栄華盛衰とは本当に儚い」という意を持って使うこともできるでしょう。この機会に意味を理解し、適切な状況とタイミングで「邯鄲の夢」を会話や文章に添えてみて下さい。