「折檻」や「折檻死」という言葉をニュースや新聞で目にすることがあります。しかし「折檻」が、具体的にどんなものであるかは、何となくのイメージでしか理解していない、という方が多いようです。今回は「折檻」の意味や語源、「石棺」など似た言葉、類語との違いや例文などについて解説します。ぜひ参考にしてください。
「折檻」とは?
「折檻」の本来の意味は”言葉を尽くしていさめる”
「折檻」の意味は、“言葉や理を尽くして相手をいさめる”です。読み方は、「せっかん」です。
立場や関係にかかわらず、相手の言動について自分の言葉や理屈を尽くすようにして、懸命に諭してきかせる様子を表す言葉です。
「折檻」とは厳しく叱りいさめること
「折檻」という言葉は、時代と共に若干言葉の意味やニュアンスが変化しています。現代でいう「折檻」は、「相手を厳しく叱り、いさめる」という状態を表します。
主には相手が自分の目下、あるいは親が子に対して、など上の立場の者から下の立場のものに対して「折檻」を行います。
相手がしたことについて厳しい言葉を使って強く叱り、言動をいさめることが「折檻」です。
体罰を加えてこらしめることも「折檻」
現代で「折檻」というと、暴力を振るう様子をイメージする人は多いでしょう。「折檻」という言葉の本来の意味に暴力はありませんでした。
しかし、これも時代と共に意味やイメージが変化し、現代では「折檻」の意味のひとつとして「体罰を加えて懲らしめる」というものも含まれています。
「折檻」の語源と歴史とは?
「折檻」の語源は朱雲が折った”檻”
「折檻」という言葉は中国の故事に由来します。漢の時代の故事に登場する「朱雲(しゅうん)」という人物が、天子の怒りに触れ、死罪を言いつけられます。朱雲は自らに課せられた死罪に激しく反論しました。
このときに朱雲を引き連れようとしていた護衛の力に抵抗するため、朱雲はそばにあった檻を強く掴んでいたといいます。朱雲は檻を強く握ったまま死罪に対する抗議や、このままでは国がだめになってしまう、という主張を繰り返し、結果として天子に許されたそうです。
このときに、朱雲が握っていた檻が、朱雲の強い力によって一部折れたことから、「檻を折るほどの思いで相手をいさめる」ということを「折檻」というようになったと言われています。
「折檻」と間違いやすい言葉とは?
「石棺」とは石で作られた棺
「折檻」と響きが同じで、聞き間違いやすい言葉が「石棺(せっかん)」です。「石棺」とは文字の通り、石で作られた棺(ひつぎ)のことで、古代日本で使われていました。石で作られた棺に亡くなった方を納めて、そのまま土中に埋めていたそうです。
「折檻」と「石棺」は、音の響きは同じですが、意味はまったく別のものですので、理解を誤らないようにしましょう。
「席巻」は勢いよく拡大していく様子
「折檻」と音の響きが似ていて、意味が違う言葉もいくつかあります。そのひとつが「席巻(せっけん)」です。
「席巻」とは、すさまじい勢いと共に、勢力を拡大することを言います。「インフルエンザが日本を席巻している」などと使い、何かがまるでその場を巻き取ってしまうような、勢いのある状態を表す言葉です。
「折半」は等分に分けること
「折檻」とイントネーションも似ていて、聞き間違いやすいのが「折半(せっぱん)」です。
「折半」とは、なにかを半分に分けるという意味の言葉です。会計や物などを、等分に分けることを「折半」と言い、「今日の食事代は折半でお願いします」などと使います。「割り勘」と似た意味の言葉で、「折檻」とは関わりのない言葉です。
「折檻」の類語とその違いとは?
「虐待」は弱い者を暴力でいじめること
現代の「折檻」という言葉と似た意味を持つ言葉のひとつが「虐待」です。ニュースや新聞などでも頻繁に使われている言葉で、「強い者が弱い者を暴力をもっていじめること」を指します。
「折檻」との言葉の違いは「相手を叱る」という心情の有無です。「叱る」とは「相手のためを思って強く言い聞かせること」ですが、「虐待」には叱る要素は含まれていません。
「躾」は礼儀・作法を仕込むこと
「躾(しつけ)」も、現代の「折檻」と似た意味を持っています。「躾」とは、「相手に礼儀や作法を教え仕込むこと」です。
「折檻」との違いは、「躾」という言葉に強くいさめるというニュアンスが含まれていないことです。実際の躾をする中で、状況によって強く相手をいさめることがあるかもしれませんが、「躾」という言葉の意味としては、その要素は含まれていません。
「懲戒」は不正・不当な行為に罰を加えること
「懲戒(ちょうかい)」とは、主にビジネスの場などで使われる言葉で、「折檻」と似た意味を持ちます。「懲戒」とは「不正・不当な行為に罰を加える」という意味の言葉です。
「折檻」が持つ意味に「体罰を加えてこらしめること」がありますが、「懲戒」は「罰」としか定められていません。「懲戒」の罰は減俸や役職の剥奪などが主で、体罰が「懲戒」の罰として考えられることは、ほとんどないでしょう。
「折檻」の使い方とは?
「折檻」を使った例文
「折檻」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 「最近の彼の言動は目に余るものがあったので、先日私が折檻をいたしました」
- 「社員の成長を思えば、時には折檻も必要かもしれません」
- 「部下である私が、上司に折檻するわけにはいきませんが、何とかしなくてはなりません」
- 「子供がとても危険なことをしたため、心を鬼にして折檻をしました」
- 「あなたがしたことは、折檻ではなく完全な虐待だ」
まとめ
「折檻」という言葉には、何とも言えない冷たさや厳しさを感じるという人が多いかもしれません。しかし、元々は熱く強い気持ちで相手に自分の考えを伝え、相手の過ちをいさめる行為だった、と考えてみると「折檻」が持つイメージが少し変わるのではないでしょうか。現代の「折檻」の意味と併せて、ぜひ覚えておいてください。