「氷山の一角」は、海に浮かぶ巨大な氷の塊「氷山」を例えとした慣用句。氷山が実際目に見える割合に由来する「見えているものは実はごく一部だけ」の意味を持つ言葉です。今回は「氷山の一角」についての意味と由来、使い方や例文まで詳しく解説します。また、「氷山の一角」の類語と対義語や英語での表現についてもお伝えします。
「氷山の一角」の意味と由来とは?
意味は「表に現れているのは物事の一部にすぎない」
「氷山の一角」の意味は、”表に現れているのは物事の一部にすぎない”です。目に見えているのは物事のごく一部であることを指す言葉です。したがって、表には現れていない私たちから見えないところには、まだまだ大きな物事が潜んでいるということをも示しています。
「氷山の一角」の読み方は”ひょうざんのいっかく”です。「氷山」は、南極や北極など海に浮かんでいる巨大な氷の塊である「氷山」のことを指しています。
「氷山の一角」は”氷山が見える割合”に由来する
「氷山の一角」という言葉の意味は、「氷山」が見える「割合」に由来しています。
「氷山」と聞くと海に巨大な氷の塊が浮かんでいる様子をイメージをする方も多いと思いますが、実は海の表面に現れている部分は実際の氷山のごく一部分で、海の中にはもっと大きな氷の塊が隠れています。ギリシャの数学者であるアルキメデスが発見した「アルキメデス」の原理に基づいて計算すると、海の表面に現れている氷山の割合は、全体の大きさのうち約10%と言うことができます。海の表面に現れている大きさについては、全体の大きさの7分の1という説もあります。
「氷山の一角」は「実際に見えている氷山の一部」を指している言葉ではないことを覚えておきましょう。海に浮かんでいる氷山のように、「目に見えている部分だけではないこと」「見えないところには多くが潜んでいること」を意味する言葉となります。
「氷山の一角」の使い方と例文とは?
「氷山の一角」は良い意味では使われないことが多い
「氷山の一角」という言葉は、悪い意味合いで使われることが一般的と言えます。テレビドラマや映画などで犯罪や事件が発生したときに、「氷山の一角にすぎない」と言うセリフを耳にしたこともあることでしょう。
「他にもっと知識を持っている」「秘めたる能力がある」などの良い意味で「氷山の一角」が使われている場合も見受けらます。したがって誤用とまでは言い切れませんが「好ましくないことの一部が表に現れている」と明確に定義されている辞典もあることから、悪い意味として使うのに留めるのが無難であると言えます。
「氷山の一角」を使った例文
「氷山の一角」を使った例文をご紹介しましょう。
- 待機児童の問題は、少子高齢化が進む現在の日本が抱えている数多くの課題の氷山の一角である。
- 氷山の一角どころではないほど次々と多くの問題が発覚しており、このままでは取り返しのつかないことになる。
「氷山の一角に過ぎない」を使った例文
「氷山の一角」自体が、「ごく一部に過ぎない」の意味を持っていますが、より意味合いを強めるために「氷山の一角に過ぎない」と使われることも多くあります。
- 調査の結果、会社の中で不正行為が常態化していることがわかった。先日発覚した問題はほんの氷山の一角に過ぎない。
- 今回のエラーは氷山の一角に過ぎないと思われる。こうなったらとことん調査を行い、これ以上重大なエラーが発生しないよう至急改修を行う必要がある。
「氷山の一角」の類語と対義語とは?
類語①「千重の一重」は”多くのうちのごく一部”の意味
「千重の一重」(ちえのひとえ)と言う言葉は、日常生活ではあまり見聞きする機会が少ない言葉かもしれませんが、「氷山の一角」と同じ「多くのうちのごく一部」の意味を持つ類語です。「氷山の一角」は悪い意味合いで使われることが一般的であるため、「多くのうちのごく一部」を良い意味合いで表現したい場合には「千重の一重」を使うのがよいでしょう。
類語②「片鱗」は”多くのうちのごく一部”の意味
「片鱗」(へんりん)も「氷山の一角」の類語となります。「片鱗」とは「鱗」(うろこ)の一欠片を指す言葉で、「才能の片鱗をのぞかせる」など、「多くあるうちのごく一部」の意味として使うことができます。
「氷山の一角」の対義語は”一切合切”
「一切合切」(いっさいがっさい)は、「なにもかも全て」の意味を持った「氷山の一角」の対義語となることわざです。「一切」「合切」の言葉はどちらも「残らず全て」の意味を持っています。つまり「一切合切」とは、「氷山の一角」のような「目に見えない部分」を残さず、「見えているものが全てである」ことを意味することとなります。
「氷山の一角」の英語表現とは?
「tip of the iceberg」を使うのが適している
「tip of the iceberg」と言うフレーズは、直訳すると「氷山(iceberg)の一角(tip)」となり、慣用句「氷山の一角」と同じ意味として使うことができます。
「just」を前につけて「just the tip of the iceberg」と使うと、「氷山の一角にすぎない」とごく一部であることをより強める意味となります。
「only a small part of」も「氷山の一角」の英語表現
「only a small part of」と言うフレーズも、「氷山の一角」と同じ「物事のごく一部」を表す言葉で、「only a small part of problem」などと使います。
また「part」の部分を「amount」「picece」など他の単語に言い換えて使う事もできます。
まとめ
「氷山の一角」は「表に現れているのは物事の一部にすぎない」の意味を持つ言葉。巨大な氷山も、実は海の上に見えているのはごく一部であると言うことを例えた慣用句です。ビジネスにおいてリスクや重大な事故を回避するためには、「氷山の一角」を意識しておくことは重要です。損害保険会社に勤めていたハインリッヒが提唱した「ハインリッヒの法則」は1つの重大な事故の後ろには多くの事故未満のミスが隠れているというものであり、まさに「氷山の一角」を表していると言えます。