「歯を食いしばる」とは痛みやくやしさに耐えるときに使いますが、どうしてそのような意味が生まれたのでしょうか。
そこで今回は「歯を食いしばる」の意味や由来、そして正しい使い方を解説します。また類語や英語表現、さらには重いものを持つ時に歯を食いしばると本当に力が出るのかも検証します。
「歯を食いしばる」とは?
「歯を食いしばる」の意味は”苦痛や困難をこらえるさま”
「歯を食いしばる」の意味は、“苦痛や困難、または無念や憤りなどを必死にこらえるさま”です。
痛みや苦しい状態に耐えようとするとき、人は歯を強く噛みしめることがあります。この自然現象である「歯を食いしばる」という行為に、苦痛や困難などを耐えるという意味が付けられました。
そのため「歯を食いしばる」と言う時に、必ずしも歯を食いしばっている必要はありません。苦痛や困難に耐えるときのたとえとして、この表現を使えばいいでしょう。
漢字で「歯を食い縛る」と書くことも
「歯を食いしばる」の「しばる」はひらがなで表記されることが一般的ではありますが、漢字を使って「縛る」としても間違いではありません。
どちらが正しいということではありませんが、迷ったら通常よく目にするひらがなでの「しばる」にしておいた方が無難でしょう。
「歯を食いしばる」の由来は日本の軍隊での掛け声
「歯を食いしばる」は戦前から戦時中の日本の軍隊で使われるようになった表現です。
軍隊では、上官が部下を平手などを使って殴るといった暴力が行われていました。そんな時、上官は殴られて口の中を切らないようにと慈悲の心を見せて「歯を食いしばれ!」と言ったそうです。
それ以来、「歯を食いしばる」という日本語表現が日常化しました。
「歯を食いしばる」の使い方とビジネス例文とは?
「歯を食いしばる」とは苦痛や困難などに耐えているときに使う
「歯を食いしばる」は苦痛や困難、無念など本人にとって大変な状態を耐えているときに使われます。
例えば、子供が転んで泣きそうなところを泣かないように我慢するときに、「歯を食いしばって泣くのを我慢した」のように使います。
「歯を食いしばる」を使ったビジネス例文
「歯を食いしばる」を使ったビジネス例文をご紹介しましょう。
- 「資格試験合格のために、歯を食いしばって頑張った」
- 「連日連夜、努力してプレゼンの準備をしたもののうまくいかなかった。泣きたくなったので、私は俯いて歯を食いしばった」
- 「上司からの不当な叱責に、怒りがふつふつと沸いたけれど、歯を食いしばって何も言わなかった」
「歯を食いしばる」の類語とは?
「歯を食いしばる」の類語は”我慢”や”忍耐”など
「歯を食いしばる」という表現の類語には、痛みや苦しみに耐えるという意味の言葉や表現が並びます。それでは「歯を食いしばる」の類語を見ていきましょう。
- 「我慢」(がまん)
「耐え忍ぶこと」の意味。
例文:「ダイエット中だから、お菓子を食べるのを我慢する」
- 「忍耐」(にんたい)
「こらえて、耐え忍ぶこと」の意味。
例文:「忍耐を要する」「忍耐強い人」
- 「耐える」(たえる)
「力一杯にこらえる」または「じっと我慢する」という意味。
例文:「苦痛に耐えた」
- 「涙を呑む」(なみだをのむ)
「悔しいのをこらえる」という意味。
例文:「やむなく涙を呑んで出場を辞退する」
- 「目を瞑る」(めをつぶる)
「見ないようにじっと我慢する」という意味。「気持ちを抑えてあきらめる」という意味もある。
例文:「思い切って目を瞑った」
- 「踏ん張る」(ふんばる)
「頑張って気張る」という意味。
例文:「あと少しでゴールだ!踏ん張れ!もう一息だ」
- 「粘る」(ねばる)
「根気よく持ちこたえる」という意味。
例文:「あきらめずに最後まで粘った結果、どうにか間に合った」
- 「唇を噛む」(くちびるをかむ)
「悔しがるさま」という意味のほかに、「怒りをこらえるさま」という意味もある。
例文:「怒りたい衝動を抑えて唇を噛んだ」
「歯を食いしばる」の英語表現とは?
「歯を食いしばる」は英語で”clench one’s teeth”
「歯を食いしばる」は英語では「clench one’s teeth」と表現します。
「clench」には「(歯を)食いしばる」の意味のほかに、「(こぶしなどを)握りしめる」という意味もあります。また「しっかりと噛む」と言う時にも「clench」が使われます。
英語の「clench one’s teeth」にも「痛みや苦痛に耐える」という意味があり、日本語の「歯を食いしばる」と同じ使い方ができます。
例文:
“The boy clenched his teeth to bear the pain.”
「その少年は痛みに耐えるために歯を食いしばった」
「歯を食いしばって」なら”with the greatest patience”
「歯を食いしばって苦境を乗り越えた」の文中の「歯を食いしばって」の英訳は、「with the greatest patience」(訳:大変な忍耐で)や「with fortitude」(訳:気丈に)のようになります。
例文:
“She bears the pain with greatest patience.”
「彼女は歯を食いしばって痛みに耐える」
“He and his team overcame the difficulties with fortitude.”
「彼と彼のチームは歯を食いしばって苦境を乗り越えた」
歯が食いしばると力が出るのは本当?
重いものを持つときに歯を食いしばるのはいい
重いものを持つために力を出すときに歯を食いしばると、体が緊張して関節を固めることで重いものを持ち上げやすくなります。
その時に大切なのは噛み合わせです。奥歯に虫歯などがあれば噛み合わせずらくなるため、力を発揮することが難しくなる場合もあります。
動きを伴う場合には歯を食いしばっても力は出にくい
ただボールを投げるなどの体を動かしながら力を出すときには、歯を食いしばらないほうが力が発揮されます。なぜなら、歯を食いしばると体が鋼体化するため、関節が動かなくなり体をスムーズに動かせなくなるからです。
体を動かす動作が伴う中で力を発揮したい時は、歯を食いしばるのではなくて、顎を固定することを意識しましょう。
まとめ
「歯を食いしばる」とは苦痛や困難、苦しみや怒りなど大変な状態を耐えるときに使われる表現です。日常的にもよく使われる表現ですから、歯を食いしばるという言葉どおりではないこの意味をしっかりと覚えておきましょう。