ビジネスシーンでは「○○の次第です」という言い回しがよく登場します。「次第です」という言葉は普段の会話ではほとんど使う機会はありませんが、社会人として身に付けておくべき表現の一つでしょう。そこでここでは「次第です」の意味や使い方についてご説明します。
「次第です」の意味・読み方
「次第です」の意味は「~という事情です、~によって決まる」
「次第です」とは、「~という事情です」、「~によって決まる」という意味です。そもそも「次第」という言葉には順序・いきさつ・事情など様々な意味がありますが、「次第です」と言った場合は2つの意味で用いられるので詳しくみてみましょう。
- 「~という事情です」「~という状況です」という背景の説明
- 名詞の後に続けて、「(名詞)によって決まる」という意味
1については、「次第」はそのまま「事情」「状況」と置き換えた場合と同じ意味ですが、「次第」を使うとかしこまった印象をあたえます。2については、「あなた次第です」「会議の進み方次第です」のように、ヒトやモノによって決まるということを示します。
ただし、「議事次第」のように使われる場合には「次第」は「順序」の意味を持つので注意が必要です。
「次第」の読み方は「しだい」
「次第」は「しだい」と読みます。「次第」自体は古典などで「つぎて」と読まれることもありますが、現代では「しだい」と読むのが一般的です。
「次第です」の使い方
「次第です」は丁寧で硬い表現として使う
「次第です」はこれまでの経緯を説明する場合などに使われます。「こういう訳です」を丁寧に、堅い表現に変える言葉だと理解してもらえればいいでしょう。そのため基本的には上司や顧客など目上の立場の相手に対して、かしこまった場面で使う言葉です。同僚や後輩など、同じ立場もしくは下の立場の相手や、普段の会話の中で用いると少々大げさな印象を与えます。
ビジネスシーンでは、例えば以下のような場面で使われます。
「顧客に謝罪する」場合の使い方
問題や不具合が発生した際に、その原因の報告も併せて謝罪する場合などに用います。
例文:「作業手順に不備があり今回のミスが発生した次第です。」
「動機を説明する」場合の使い方
手紙や贈り物など、何も言わずに送ったら相手が戸惑うかもしれない、というケースがありますよね。そういった時は「次第です」を使って動機を説明するといいでしょう。
例文:「この度貴社の担当となったためご挨拶かたがたお手紙差し上げた次第です」
「次第です」は敬語として使える
前述のとおり、「次第です」は「~という訳です」を丁寧かつ堅い表現で言い換えた言葉です。そのため目上の相手に対する敬語として使って問題ない表現となります。
「次第です」を使う際の注意点
過剰表現にならないように注意
「次第です」は敬語として使うことができますが、過剰な表現にならないよう注意する必要があります。「次第です」自体がある堅苦しい表現なので、前後の言葉まで同じように堅い表現にしてしまうと、くどく感じられてしまう場合があります。
例えば、「このように致しました次第でございます」という言い回しは、敬語の連続となっており、慇懃無礼で逆に失礼な印象を与えかねません。「このようにした次第です」の方がスマートですし、十分に丁寧さを伝えることもできます。
普段使いには適さない
「次第です」はかしこまった場や顧客・取引先への挨拶など、改まった場面で用いられるのが通常であり、先輩や上司への日報やちょっとした報告に「次第です」を使うのは、少々大げさな印象を与えます。普段の会話では「~という訳です」でいいでしょう。
「次第」の類語とその違い
「次第」の類語は「状況」、「順序」など
「次第」の類語としては、背景を説明する意味では「状況」「事情」など、また「議事次第」のような順番を示す意味では「順序」「議題」などが言い換えの言葉になります。
「あなた次第です」のように、「~によって決まる」という意味では、熟語として近い意味の言葉がないため、「あなたが意思決定権を持っている」「あなたの考えるとおりに行動してよい」など、意味を添えて言い換えるとよいでしょう。
「次第です」と似た言葉「所存です」
「次第です」とよく混同される言葉に「所存です」があります。「次第です」はこれまでの経緯、つまりこれまでに起こったことについて説明する際に使うのに対し、「所存です」は自分の考えや意見を伝える際に使います。端的にいうと、「次第です=という訳です」、「所存です=思います、つもりです」と言い換えることができます。
履歴書では「所存」が適切
履歴書の志望動機や意気込みの起債で、「次第です」と「所存です」を混同している人もいるので注意が必要です。「次第です」がこれまで実際にあったこと、「所存です」が自分の考えや意見を伝える際に使うことを確認しておきましょう。
「志望動機」や会社を志望するに至った経緯を説明するため「次第です」を、「意気込み」はその会社で自分がやりたいと思っていることを説明するため「所存です」を使うのが適切です。
志望動機
正:「御社の理念に共感し志望した次第です」
誤:「御社の理念に共感し志望した所存です」
意気込み
正:「長期間の海外生活で培った経験を、御社製品の海外展開に役立てる所存です」
誤:「長期間の海外生活で培った経験を、御社製品の海外展開に役立てる次第です」
まとめ
「という訳です」を「次第です」と言い換えるだけで社会人としてワンランク上の印象を与えることができます。ただし使い間違いや不適切な場面で使ってしまわないよう、意味や使い方を理解して正しい言葉づかいを身に付けましょう。